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アプリのヘルプについて考える

主にモバイルアプリ利用時のヘルプについて、設計上、ヘルプを置くときのルールってどういうものがあるのかを調べていたら、いくつか発見があったのでまとめておきます。

これからアプリを設計するとき、
「どういう観点で、どこにヘルプを置けばいいか?」
悩んでいる人の参考になれば幸いです。

iOSにおけるヘルプの提供について

Apple Developer サイトでは、2023年9月12日に「ヒント作成のガイダンス」として、ヘルプの提供のあり方について説明されています。

https://developer.apple.com/jp/design/human-interface-guidelines/offering-help#Best-practices

対応デバイスは、iPhone、iPad、Macなど、全デバイス向けのガイドラインになっており、具体的な内容とポイントは次のとおり。

ヘルプの種類はタスクに応じて決めること


ここでいうタスクはアプリ利用中の「ユーザーの具体的な行動」のこと。ユーザーは絶えず目的を達成するため、アプリ内で行動しつづけますが、その行動≒タスクによってヘルプの種類を決めるということになります。

手順が少なく簡単なタスクの場合、「ヘルプアイコンをタップ→モーダルやトーストのような形で簡単にテキストで補足する」というヘルプでも十分対応できると思います。

一方、手順が多く複雑なタスクの場合、「ヘルプアイコンやヘルプのテキストリンクをタップ→ヘルプ専用のまとめページやチュートリアルで説明する」という段階を踏んだものになってきます。

ヘルプの定義は、タスクの内容を確認した上で、最適な表現方法を設計すること、これが1つめのポイントです。

使用する用語や画像に一貫性を持たせる

これはUXライティングに通じるものです。ヘルプで使用する説明文やイメージ素材に、ユーザーのおもわくと合致しないものを配置しない、ということ。

モバイルアプリを利用中のユーザーは、タスクを実行するアクションの多くが、ボタンやアイコンの「タップ」となります。仮に、このタスクにヘルプを加えるとき、

「設定内容を確認し、完了ボタンをクリックしてください」

という表現があったらどうでしょう?
ユーザーは、決してクリックという操作はしていないため、行動と矛盾が生じてしまいます。正しくは、

「設定内容を確認し、完了ボタンをタップ(or 選択)してください」

という表現になります。このようなユーザーの正しい行動に配慮したヘルプ全体の一貫性が大切になってくる。これが2つ目のポイントです。

ヘルプコンテンツを肥大化させない

個人的には、これが一番重要なのではないか?と感じています。
ヘルプコンテンツの肥大化問題。

例えば、アプリ内で標準的に提供されているコンポーネントやパターンに対し、対象ユーザーのすべてに配慮しようとして、そのほとんどにヘルプを加えようとする行為。

これが良い設計といえるのか?
「いやいや、そうすべきではないよ」というのが、ここで訴えている内容です。

UIの進化とともに、標準化されてきたコンポーネントはいくつかあります。古くは、ノーマン・コックスによってデザインされた「ハンバーガーメニュー」。画面の制約を受けるモバイルアプリでは、おそらく馴染み深いUIの1つだと思います。

こうしたコンポーネントの使い方について、ヘルプで細かな説明を与えることは、コンテンツを肥大化させることにつながります。

ヘルプで提供するコンテンツは、非標準的な操作が必要なタスクや、アプリ内で独自に定義されているメニューなど、限定的に取り扱うことが肥大化を防ぐ第一歩となります。

Windows11におけるヘルプの提供について

一方、Windows11でも、同様にヘルプの提供に関してガイドラインを公開しています。

具体的なポイントは以下の通り。

直感的なデザイン

ヘルプのコンテンツをどれだけ充実させたとしても、アプリがユーザーに優れたエクスペリエンスを提供するには、ヘルプに依存することはできません。 ユーザーは、アプリの重要な機能がすぐに見つからずに使えない場合には、アプリの使用をやめてしまいます。 ヘルプの質と量がどれだけ優れていても、第一印象を変えることはできません。

Windows Learn ドキュメント:アプリのヘルプのガイドラインより

上記は、解釈を加えずに出典先からそのまま掲載しています。
おそらく、この文章を読んだ方のほとんどが「その通り」と感じざるを得ないのではないか?と思っています。

iOS側にも記述があった「ヘルプコンテンツの肥大化」の話にも通じることで、どれだけヘルプを充実させても、ヘルプに依存したアプリ操作では良い体験とならない、本当にそうだと感じます。

ヘルプの原則

次に、全般的なヘルプ設計の手順として、5つの原則がまとめられています。

  • わかりやすい: 混乱させるヘルプはNG

  • 単純: 直接敵で明確な回答

  • 関連性: 検索せずに辿れる

  • 直接的: ヘルプ以外の枝葉を同一で扱わない

  • 一貫性: 他のUIと同様に扱う(操作性、アクセシビリティ、スタイルなど)

読んでいて意図の通じない or 通じても複雑すぎて操作がイメージできないなど、混乱を招くようなヘルプなら、ないほうがまだましという…設計者は肝に命じて置かないといけません。

ヘルプの種類

最後にヘルプの種類として3つの概念を整理しています。これは、iOSの「ヘルプの種類はタスクに応じて決めること」と同じ考え方だと思います。

1.説明 UI

通常の場合、ユーザーはアプリの主要な機能のすべてを、操作手順を読まなくても使える必要があります。 場合によっては、アプリが特定のジェスチャの使用に依存していたり、すぐには自明ではない別の機能がある場合もあります。 そのような場合には、説明 UI によってユーザーに特定のタスクの使い方を教えることができます。

Windows Learn ドキュメント:アプリのヘルプのガイドラインより

1つ目の説明UIは、タッチジェスチャやユーザーが関心を持つ設定など、その操作が自明でないものをユーザーに示すために設置するヘルプ。ただし、このヘルプが多用されると情報量が多くなり、ユーザーが煩わしさを感じることもあるため、注意が必要。


2.アプリ内ヘルプ

アプリ内ヘルプは、ユーザーにヘルプを表示する既定の方法として使用します。 これはすべてのヘルプで使用し、シンプルで単純にして、ユーザーに未知のコンテンツを表示しないようにします。 使用方法、アドバイス、ヒントやコツなどはすべて、アプリ内ヘルプに適しています。

Windows Learn ドキュメント:アプリのヘルプのガイドラインより

2つ目は、アプリ内ヘルプ。これは、ヘルプ表示の規定方法として定義されていて、主に「ポップアップ」と「ヘルプページヘの遷移」の2つで構成されています。

ポップアップは、ヘルプアイコンをタップ後、同一画面上で手続きの手助けを行うもの。ユーザーが実行中のタスクに対して、アドバイスを行うことで速やかな行動完了を促します。

ヘルプページへの遷移は、アプリ内に「ヘルプカテゴリ」を作成し、そこにお役立ち情報をまとめておくもの。1つの場所にまとまっていることから、他の関連ヘルプへもアクセスしやすい設計は可能です。


3.外部ヘルプ

外部ヘルプページは、一般的な用途やクイックリファレンスとしては利便性が劣ります。 これはアプリ自体に組み込むには大きすぎるヘルプコンテンツに適しています。またチュートリアルや、一般のユーザーにはあまり使われないアプリの高度な機能の説明などにも適しています。ヘルプコンテンツが簡潔な場合、またアプリ内の特定の場合に表示するのが望ましい場合には、アプリ内のヘルプを使います。 必要のない限り、ヘルプのためにユーザーをアプリの外部に誘導しないようにします。

Windows Learn ドキュメント:アプリのヘルプのガイドラインより

3つ目は、外部ヘルプ。これは上記のとおり「利便性が劣る」と書いてありますが、アプリ内ヘルプでまとめておくには、そのコンテンツボリュームが大きすぎたり、複雑な操作を動画で解説する場合などに限定し、このヘルプ設定が許されるものと捉えてよいかと思います。

外部ヘルプは、アプリ操作中のユーザーを、一旦、外のサイトへ誘導してしまうことになるため、極力避けたほうが良いかと思います。

たかがヘルプ、されどヘルプ

個人的には、ヘルプにより補足しなければ操作に戸惑ってしまうようなタスクは、その設計から大きく見直すべきではないか?と感じています。
(ここでいう設計は、ユースケース設計、UX設計、UI設計の3つを含めた話)

仮にヘルプを設定するにしても、上記で書かれているような「明確なルール」を設けた上で、どの画面に、どのようなヘルプを置くか?
設計者には、これらの細部まで考えたのちに、論理的に確かな構成とすることが求められているはずです。

たかがヘルプ、されどヘルプ。
このヘルプの置き方、とても理に適っているというものを調べつつ、代表例などを更新できたら幸いです。

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