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陰謀論を生む認知バイアス 「比例バイアス」
「認知バイアス大全」マガジン
認知バイアスとは、人間が進化の過程で獲得してきた生き延びるための工夫……のバグ部分。これが、現代ではさまざまな場面で不合理な行動の原因となります。そんな認知バイアスを集めたマガジンが「認知バイアス大全」マガジンです。
偉業の陰には多大なる努力がある……「はず」
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source: Harvard Business Review “How to Inoculate Your Team Against Conspiracy Theories”
わたしたちは、成功したひとたちの言葉の中に成功の方法を求めますが、そのさい、良く耳(あるいは目)にするのが、「類まれなる努力をしてきた」というエピソードです。わたしたちは、このたぐいのエピソードに重ね重ね触れるにつれ、やはり偉業にはそれ相応の努力や犠牲が必要だ、と考えるようになります。
人は、このようにして、
大きな物事には、大きな原因があるはずだ!
と考えるようになります。そうかもしれないのですが、そうじゃないときもある。ざっくり正解に近い答えを出すことを「ヒューリスティック(heuristics)」というのですが、人間は進化の過程で、「だいたい正解に近い」ということを見つける癖をゲットしてきました。しかし検証などできなかった歴史のなかで有効だったもの。ときどきエラーも起こします。エラーを系統的に起こすものを心理学では「バイアス」と呼びます。歪みという意味です。この「大きな結果には大きな原因があるはず」という思い込みは「比例バイアス」と呼ばれています。
比例バイアス
比例バイアス(Proportionality Bias)とは
大きな出来事には大きな原因があると思い込む傾向
です。認知バイアスのひとつ。ロンドン大学のクリストファー・フレンチ博士は、陰謀論は、この比例バイアスや確証バイアス、投影などにより形成されるとのこと(※ 2)。
陰謀説が生まれるのは、この比例バイアスから
巷では、つねに何らかの陰謀説が流布されていますが、これは「比例バイアス」から生まれています。大きな出来事が起こるなら、それは偶然や小さなミスが原因ではなく、大きな陰謀が背後にあるはず、と考えるからです。
「努力は報われる」という信仰も、この「比例バイアス」によって形成される
努力は、本当のところ、報われる保証はありません。有効な投資は、リターンの可能性を高めますが、闇雲な努力が報われる可能性は低い。多くの漫画やフィクションで描かれる、多大なる努力が最後に報われる描写も手伝って、わたしたちは、「努力は報われるはず」信仰を無意識に信奉してしまい、努力の種類は方向については、あまり注意を払いません。これも「比例バイアス」が生み出す落とし穴です。
対策
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報われない努力の存在を知っておく
この「比例バイアス」に似たバイアスに「公正世界仮説」というものがあります。これは、「善い行いをする人には良い結果が、悪い行いをする人には悪い結果が訪れるはず」という思い込みです。こういった信仰を捨てて、報われない努力や良き行いがあることを念頭においておくと、無駄な努力に時間や労力を注ぎ込まないですみます。
応用
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多大なる結果を得るためには、多大なる犠牲が必要だという説得
これを使うと人間は信じやすいので、得難い結果の保証に大いなる犠牲(金額など)を支払わせることが可能かもしれません。
関連した認知バイアス
公正世界仮説(Just-world hypothesis)
この世界は人間の行いに対して公正な結果が返ってくると考える傾向。
確証バイアス(Confirmation bias)
仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向。
関連書籍
原因と結果の重さは等しくならないことがある
たとえば、ビリオネア(1000億円以上の資産があるひとたち)は、だれよりも努力しているひとたちばかりではありません。たまたま金持ちに生まれたり、なっちゃったひとたちも多く居ます。その謎解きに良いのは、トマ・ピケティのこちらの本。
参照
※2:Account for Proportionality Bias: Big Events Must Have Big Causes