あらかじめ設定されているものをそのまま受け入れてしまう 「デフォルト効果」
メールの署名設定をしないままにしている…
わたしたちは、デフォルト設定をそのままにしがちです。
上のグラフは、各国の「臓器提供の同意率」を示しています。左4カ国(デンマーク、オランダ、イギリス、ドイツ)と右の7カ国(オーストリア、ベルギー、フランス、ハンガリー、ポーランド、ポルトガル、スウェーデン)には大きな隔たりがあります。国民性の違いでしょうか。じつはこれ「臓器提供の質問の仕方」が違うために生まれている差です。
同意率が低い左4カ国では、臓器提供をしてもよいという人が意思表明をすることになっている(オプトイン方式といいます)のに対して、同意率が高い国では、臓器提供をしたくない人が意思表明をすることになっています(これをオプトアウト方式という)。行動を起こさないといけない選択は、選ばれにくい傾向です。これをデフォルト効果と呼びます。
デフォルト効果
デフォルト効果(Default effect)とは、
です。ある選択肢がデフォルトに設定されている場合、その選択肢がデフォルトに設定されていない状況と比較して、その選択肢を選択する確率が高くなります。デフォルト効果には、内生的なものと外生的なものがあり、上記の臓器提供は、内生的なデフォルト効果です。
内生的デフォルト効果
内生的デフォルト効果(Endogenous default effects)とは、選択者が積極的な選択をしなかった場合に、最終的に選択することになる選択肢のこと。ある選択肢がデフォルトとして設定されているとき、その選択肢がデフォルトとして設定されていないときより、選択される確率が高くなります。上記の臓器提供もその一例。
外生的デフォルト効果
外生的デフォルト効果(Exogenous default effects)とは、他者の多くが選択しているという情報があるとき、多数がしている選択がデフォルトとなり、その選択を選ぶ確率が高くなることです。初めて入るレストランで、他の客が食べているものを参考にするのは、この外生的デフォルト効果です。外生的デフォルト効果は、バンドワゴン効果(後述)に通じます。
なぜ起こるのか?
(1)認知的努力
何かを選択するのにはコストがかかるため
(2)スイッチングコスト
現状から選択を変更するときに、比較することや比較するための情報収集というコストがかかるため。
(3)現状維持バイアス(損失回避)
現状が基準点となり、変化により損失があると感じるため。
対策・応用
現状維持バイアスへの対策と一緒で、何もしないコストを明確にすることが、このデフォルト効果による無自覚な損出を回避する方法です。逆に、選ばせたい選択をデフォルトにすることで選ばれやすくするというのが応用です。
オススメの本
デフォルト効果は、プロスペクト理論で説明できますので、プロスペクト理論をわかりやすく説明した、ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』をおすすめします。
リチャード・セイラー(著)『実践 行動経済学』では、このデフォルト効果を使った「ナッジ」なる政策が紹介されています。
関連した認知バイアス
•現状維持バイアス (Status quo bias)
何か問題が出ない限り、現状維持を望む傾向。
•バンドワゴン効果 (Bandwagon effect)
ある選択が多数に受け入れられているとき、その選択への支持が一層強くなる効果
•損失嫌悪(Loss aversion)
利益を得る事よりも、損失を回避する事に集中する傾向。
•プロスペクト理論(Prospect theory)
不確実な状況における意思決定モデルであり、(1)得することより損をしないことを選ぶ傾向 (2)損も得も量が増えるとインパクトが弱まっていく傾向
などを説明するもの
認知バイアス
認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。知れば、普通は落ちてしまう落とし穴を避けることができるかもしれません。こちらに一覧があります。
参照
※2:デフォルト効果
※3:デフォルト効果