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「だから、そう言ったのに!」は「後知恵バイアス」

「だから、そう言ったのに!」

「だから、そう言ったのに!」こんな言葉を口にしたことありませんか?起こったあとになると物事は予測可能だったはず、と思い込んでしまいます。これを後知恵バイアス(Hindsight Bias)と言います。

ニュースでよくみる「防ぎようがなかったのか?」議論

ニュースでは、凄惨な事件や事故が起こったあとにコメンテーターたちにより「防ぎようがなかったのか」がよく議論されます。もちろん失敗から学習して再発を防止することは可能です。道路標識や信号などの設置は、事故後に行われる場合が多いのは、失敗からの学習です。(余談ですが、多くの失敗を集めた本があり、とてもおもしろいです。後ほど紹介します。)しかしテレビなどで議論される「原因は何か?(誰が悪いのか)?」というテーマには、この後知恵バイアスに関わるものコメントが散見します。このように起こったあとなら「予測が可能だった」と思いやすい。


後知恵バイアス とは

後知恵バイアス (Hindsight bias)とは

物事が起きてからそれが予測可能だったと考える傾向

後知恵バイアスは、政治、ゲーム、医療などで発生する認知バイアス。「最初から分かっていた現象(the knew-it-all-along phenomenon)」、「忍び寄る決定論(creeping determinism)」とも呼ばれます。

後知恵バイアスは、 出来事が起こる前に何を知っていたか、何を信じていたかと言う記憶の歪みを引き起こし、未来の出来事の結果を予測する個人の能力に対する過信の重大な原因となっています。 戦いの結果を記述する歴史家の文章の中や事故の責任を追求するときに事故を起こした人の責任を判決する裁判に、この後知恵バイアスが見られます。

後知恵バイアスの研究

1973年、 アメリカの臨床心理学者、ポール・E・ミール( Paul E. Meehl)は「臨床医は、ある症例の結果を最初から知っていたと主張して、その予見能力を過大評価することが多い」という観察を述べています(※1)。

エイモス・トヴェルスキーとダニエル・カーネマンが発見した2つのヒューリスティクス、「利用可能性ヒューリスティクス(the availability heuristic)」「代表性ヒューリスティクス(the representativeness heuristic)」は、後知恵バイアスに直接的な重要性があるものでした。これらのヒューリスティクスを発展させて、ベイスとフィッシュホフは、後知恵バイアスを直接検証する最初の実験を考案しています(※2)。

対処法

認知バイアスは、その存在を知るだけで機能します。たとえばこの後知恵バイアスも、その存在を知ってしまうと「だから言ったのに」という言葉とともに思い出し、「これは後知恵バイアスじゃないのか」と疑ってかかれるようになります。これは組織が共有しているほうがより有効に使えるでしょう。

「どうしてそんな失敗を予測できなかったのか!」という叱責の背後に後知恵バイアスがないかどうか、上司と部下で検証できる機会があると不毛ではなく合理的で有効な学習が可能になるかもしれません。その際は、「起こり得た別の可能性」について考えるのが良いでしょう。

合わせて有効な認知バイアスの知識は、「サンクコスト効果」。起こってしまったことを悔やんでも合理で考えると不毛だと気づきます。ではどうすればよいのかと言うと「今からできるベストを考え実行する」こと。「ああすればよかったのに」という後知恵バイアスを乗り越え、前に進む力をこれらの認知バイアスの知識は生み出します。


認知バイアスとは

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認知バイアスとは、人間や動物が進化の過程で獲得した生き残るために有利な行動や思考の様式が、不利に働いてまうもの。無自覚にしてしまう不合理な行動の元。頭が良くても陥るもので、熟知すると落とし穴に落ちないで済むし、利用もできるようになります。認知バイアスの知識は、いうなれば人間という乗り物をうまく操作するためのドライビングテクニックです。

紹介した認知バイアスは、スズキアキラの「認知バイアス大全」にまとめていきます。



おすすめの本

失敗の41の原因を紹介。失敗の原因から未来の失敗を予測する。


参照

※1:Fischhoff, B (2007). "An early history of hindsight research”

※2:Fischhoff, Baruch; Beyth, Ruth (1975). "I knew it would happen: Remembered probabilities of once—future things".





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