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世界は悪化していると考えてしまう「凋落主義」
凋落主義
凋落主義(ちょうらくしゅぎ)(Declinism)とは
社会や組織が凋落しつつあると考え、過去を美化し、将来を悲観する傾向
です。過去を現在より好ましく思い、未来を悲観します。「バラ色の回顧」とほぼ同じ。バラ色の回顧(Rosy retrospection)とは「過去の出来事を、その時よりあとになってからのほうが良い評価を与えて、思い出す傾向」です。
なぜ起こるのか?
認知バイアスのひとつ、ポジティブ効果(Positivity effect)というものがあります。これは「高齢者が記憶の中でネガティブな情報よりもポジティブな情報を好むようになる傾向」です。これにより記憶はネガティブなものよりポジティブなものが多くなっていきます。すると記憶にはポジティブなものが相対的に増え、その結果、現在や未来は相対的にネガティブに感じるようになります。これが凋落主義やバラ色の回顧が発生する原因と考えられています。
凋落主義の機能と障害
アラン・W・ダウト(Alan W. Dowd)は、サミュエル・P・ハンティントン(Samuel P. Huntington)の言葉を引用して、衰退主義は「起こっている衰退を食い止め、逆転させるために、警告と行動への煽りを提供する」という意味で、「有用な歴史的機能を果たしている」と述べています。
それに対して、ジョセフ・ヨッフェ(Josef Joffe)は、「自分の衰退の可能性について強迫的に悩むことは、結局衰退を生み出すことになる」という主張しています(※3)。同様に、ロバート・ケイガン(Robert Kagan)は、アメリカ人が「自らの力の衰退に対する誤った恐怖から、先制的超大国の自殺を行う危険がある」と懸念を表明しています(※4)。
実際に世界は悪化しているのか?
何を軸にするかによって評価は変わります。悪化しているとも言えるし、良くなってきているとも言えます。例えば、『ファクトフルネス』という著書では、思い込みと事実の差を明示して、「世界はみんなが思っているよりぜんぜん悪くない」ということを示しています。
わたしからもひとつ「世界は悪化してない」という事実をお見せしたいと思います。それがこちら。
世界の自殺者数の推移です。ずーっと減ってきています。日本もおおむねこの傾向に沿っています。
一方で、ユヴァル・ノア・ハラリ氏の『ホモデウス』は、来たるべき未来への懸念でいっぱいの未来予想書ですし、ジャレド・ダイアモンド氏の『文明崩壊』もちゃんとした知識人による未来への警告書だったりします。
何をどう扱うかによって未来予想は変わってきますが、楽観と悲観をハイブリッドで持つのが良い気がします。ちなみにニュースがいつもネガティブなのは、ネガティブな情報しか伝播しないためです。わたしたちは、安全な情報は共有しようとしません。不穏な情報は共有しないとリスクが高まるからです。
対策・応用
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確かめてみる
自分で確かめるのが一番です。日本語より英語で検索するのが良いでしょう。そして異なる主張の合わせてみて鑑みるのがより良いでしょう。
関連した認知バイアス
•バラ色の回顧(Rosy retrospection)(#201)
イメージしやすい特殊な数字には敏感に反応する一方で、統計的な一般的な数字は無視する傾向。
認知バイアス
認知バイアスとは進化の過程で得た武器のバグの部分。紹介した認知バイアスは、「認知バイアス大全」と一覧の記事にまとめています。
参照
※1:
※2:
※3
※4