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なぜ、わたしたちはあとで後悔する決断を自信まんまんで下せるのか? 「歴史の終わり錯覚」
認知バイアス大全マガジン
大きなタトゥー、家の購入、喫煙やドラッグ……
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人は若かろうが、若くなかろうが、あとで「なんであんな決断をしたのだろう?」ということをしがちです。タトゥーを入れては消し、なんでこんなローンを組んだのか?と後悔するような大きな買い物をしたりします。これは、未来の自分と今の自分が同じだと考えだと勘違いしているためにしてしまうものです。この勘違いを「歴史の終わり錯覚」と言います。
歴史の終わり錯覚
歴史の終わり錯覚(End-of-history illusion)とは
年齢を問わず、自分は現在までに大きな変化をしてきたが、今後は大きく成長したり成熟したりすることはないと考える心理的錯覚
です。一般的に、人は後から見ると大きな変化を感じますが、その変化が継続することを予測できない傾向があります。例えば、20歳の人が10年後にどれだけ大きな変化があるかを予測しても、30歳の人が20歳から30歳の間に受けた変化を思い出すほど極端にはなりません。この現象は、どの年代の人にも当てはまります。
アメリカの心理学者のダニエル・ギルバート(Daniel Gilbert)は、この錯覚についてTEDで講演しています。ギルバートは、この現象は、自分がどのように変化するかを予測することが難しいこと、自分の現在の状態に満足していることから起こるのではないかと推測しています。 また、ギルバートは、この現象を人間の時間の捉え方全般に関連づけています。
「歴史の終わりの錯覚」という言葉は、ダニエル・ギルバートの他、心理学者のJordi Quoidbach、Timothy Wilsonが、2013年に発表した論文(※3)のなかで世に出ました。論文では、18歳から68歳までの19,000人以上の被験者を対象とした6つの研究をまとめています。これらの研究では、人は、性格、中核的な価値観、嗜好の将来の変化を過小評価することが明らかになりました。
人は何歳でも「これから先、自分はあまり変わらないだろう」と間違った予測をする
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この研究では、参加者の年齢が高いほど、予測された性格の変化が少ないことが明らかになりました。しかし「歴史の終わり錯覚」の大きさは、年齢が上がっても変わりませんでした。
嗜好品も予想以上に変わっている
ある実験で、対象者に、好きな食べ物、好きな音楽、親友などのさまざまな質問に対して、現在の好みを答えてもらいました。そして10年前と比べて変わったか、また今後10年間に好みが変わると思うかどうかを尋ねました。結果、好みの変化の予測に、歴史の終わりの錯覚が存在していていました。参加者は一貫して、今後10年間、自分の好みは比較的変わらないと予想していましたが、10年前の参加者は、より高いレベルで好みの変化を反映していました。これは、予測の過小評価が一因であり、記憶エラーによるものではありませんでした。たとえば、いま好きなアーティストの10年後のコンサートにいくら払うか?という質問に、人は平均して129ドルと回答しました。しかし10年前好きだったアーティストの今日開催されるコンサートにいくら払うかと問われると平均して80ドルと回答しました。これが未来予測の具体的なギャップです。
なぜ「歴史の終わり錯覚」が起こるのか
原因はよく分かっていませんが、ギルバート博士は、
思い出す容易さと未来を想像する難しさの非対称性
が原因ではないかと推測しています。わたしたちは10年前を思い出すことはできるのですが、10年後の自分なんて全然わからないんです。
対策
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対策:未来のことなんてわからないことを念頭に置く。
ギルバート博士らは、わたしたちの歴史の終わり錯覚は、 将来における自分たちの変化を過小評価するのみならず、最適な意思決定を歪める危険をはらんでいると指摘しています。例えば、「今後、この地で生涯暮らしていくことに満足するだろう」と見積もり、土地や家を購入しても、予想以上の変化が起こり、他の土地へ移住したくなるなど。わたしたちは、なんなら5分後の自分のことだってわかっていません。お腹が空いているときにはレストランでオーダーしすぎます。これはお腹がいっぱいになったときの自分をうまく想像できないためです。
なので、自分たちにこんな弱点があることを知っておきましょう。
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参照
※2:When Do We Become The Final Version of Ourselves?
※3:The End of History Illusion