「自分の説を正しい」と思い込むための検証を繰り返す“適合バイアス”
自分が正しいことを証明するためのテスト
研究者に限らず、わたしたちは自分たちの説や自分たち自身が正しいということを証明するために、検証しようとしがちです。たとえば「Aさんは、意地悪いで心が狭い」という仮説。Aさんが意地悪である根拠を示し、そして探します。見つけたり、こじつけたあとに「ほら、やっぱりAさんは意地が悪い!」という結論を出します。自分自身に対しても、自分の味方だと考える誰かに対しても、これを証明し、同意を得ようとします。これが(卑近なバージョンの)「適合バイアス」です。
適合バイアス
適合バイアス(Congruence bias)とは
人は自分の最初の信念を否定できるような実験はほとんど行わず、最初の結果を繰り返そうとします。これは確証バイアスの特殊なケースです。ある仮説を検証する際に、その仮説が真であれば得られるであろう結果だけを考えて検証するというものです。多くの人が使っていると思われる適合ヒューリスティック(Congruence heuristic)は、われわれに注目している仮説以外の存在を無視させます。
確証バイアスとは
確証バイアス(Confirmation bias)とは、
です。検証とは、名ばかりで、自分の仮説を支持しそうなデータばかり集めて、反証の可能性を遠退けることです。バイアスなので、無意識に行っています。先程の「Aさんは、意地悪いで心が狭い」という仮説の例で言えば、Aさんのことが嫌いそうな人たちから証言を集め、Aさんを嫌いではない人の話は聞かないのが、この確証バイアスです。
適合バイアスの例
例えば、ある実験において、被験者に2つのボタンが提示され、
と言われたとします。被験者は、左側のボタンを押せばドアが開くという仮説を立てました。この仮説の直接的な検証は左のボタンを押すことであり、間接的な検証は右のボタンを押すことです。後者は、ドアが閉じたままであるという結果が出れば、左のボタンが目的のボタンであることが証明されるので、やはり有効なテストとなります。
この直接法と間接法の考え方を、より複雑な実験に応用することで、人の一致性バイアスの存在を説明することが可能となります。実験では、被験者は自分の通常素朴な仮説を反証しようとせず、何度も何度も検証することになります。
適合バイアスの古典的な例は、ピーター・ウェーソン(Peter Wason)(1960, 1968)によって発見されました。ここでは、
多くの被験者は、この課題に対し、「2の数だけ昇順になる」という基本的な規則をすぐに判断し、「3、5、7」、あるいは「π+2、+4、+6」など、この規則と一致する数列のみをテストとして提供しました。これらの列は、実験者が考えている基本的な法則に沿ったものです。しかし、被験者は同じ原理を繰り返し検証することに成功しているため、自分の選んだ仮説が正しいと素朴に信じてしまいます。そのため、「数列の最初の2つの数字はランダムで、3番目の数字は2番目の数字に2を足した数」という特異な規則が生まれる可能性については思いつきません。
対策・応用
仮説を検証する際に、自分の仮説を否定するケースについて考える癖をつけましょう。ある仮説を考えるとき、代替仮説も考えます。そして、それぞれを検証するテストを実行します。
これは人間なら誰しもが持っている盲点です。その盲点に気づくことができれば、その分のアドバンテージをゲットできます。
関連した認知バイアス
•確証バイアス(Confirmation bias)
仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向。
認知バイアス一覧
こちらが認知バイアスの一覧記事です。
参照
※1:Gizmodo “The congruence bias is why we all jump to conclusions and stay there”
※2:Congruence bias