「それっぽさ」が判断を歪めてしまう 「代表性ヒューリスティック」
認知バイアス大全マガジン
人間の不合理な行動には、認知バイアスが大きく関わっていることがあります。そんな認知バイアスを紹介しているのが、認知バイアス大全マガジンです。
メガネをかけているだけでガリ勉にみえる
度の強い眼鏡をかけていたらガリ勉と自動的に推測してしまう。これはわたしたちに「度の強いメガネの学生」=ガリ勉というステレオタイプなイメージがあるためです。漫画の描写から学習したのかもしれませんが、このような「それっぽい」というイメージをわたしたちは、さまざまなものに対して持っています。竹刀を持った体育教師、腹黒い太った政治家、派手な柄のシャツを着たヤクザなど。こういった「それっぽさ」からそのものを推測するこの傾向を“代表性ヒューリスティック”といいます。
代表性ヒューリスティック
代表性ヒューリスティック(Representativeness heuristic)とは
です。不確実なことを判断するときに用いられます。「ヒューリスティック」は、必ずしも正しいわけではないが、まあまあ合っていると感じる「大雑把な推測」という意味です。アルキメデスの「ユリイカ(わかった!)」という言葉からきている言葉で、「近道の発見」というニュアンスがあります。それっぽさ(代表性)に頼って判断すると、もちろん誤った判断をしてしまうことがあります。
バイアスが生み出すのは“判断の速さ”
代表性ヒューリスティックは認知バイアスのひとつです。認知バイアスとは、「有害な結果をもたらし得る偏った認知」です。このような認知バイアスがなぜなぜわたしたちにあるのか。人間のみならず動物にもあります。この認知バイアスを持っている理由は、「素早い判断」をするためです。認知バイアスが生み出すベネフィットは素早い判断なんです。自然界のなかで生き抜くためには素早い判断が必要です。向かってくるように見える何かがトラやライオンなのか、それとも丸まった枯れ枝の塊かをよく確かめるより先に、「トラかも!?」と判断して逃げようとすることのほうが大事なわけです。こうして人間にも動物にもヒューリスティックが形成されていきました。AIにバイアスを組み込むと学習や判断がすごく早くなります。また、わたしたちに右利きとか左利き(10%くらいしかいないけど)があるのも同じ理由です。素早い判断や行動を生むためです。
この「大雑把さ」が言語や記号を作る
認知バイアスのひとつである、代表性ヒューリスティックとは、「それっぽいという理由でそれと判断すること」なわけですが、この認知バイアスの弊害は「ときどき間違えること」です。ちゃんとした身なりの詐欺に騙されるとか。では弊害ではなくベネフィットは何か。素早い判断のほかには、言語や記号などのコミュニケーションを円滑にする機能がここにあります。
たとえば木には、高木も低木、広葉樹も針葉樹もあり、種類によってみためが大きく異なります。なのにシンボリックに木をイメージすると上記の絵のようになります。これをみてわたしたちは「木」と認識できます(こんな形の木なんてないのに!)。しかしこれをみて、わたしたちは「木っぽさ」を認知します。不正確になんとなく「それっぽさ」を認知するのは、能力でもあり、これによって「記号」が機能します。記号は文字の本質であり、また音に変換するとこれは言語となります。ある人の「こんにちは」と、別のひとの「こんにちは」は、厳密には音が異なります。しかし「近い」と判断できるので、わたしたちは、誰が口にしようとそれを「こんにちは」と認知することができます。こうした「いい加減に捉える能力」がわたしたちのコミュニケーション能力を形成しています。
代表性ヒューリスティックが起こす問題
その一方で、バイアスにはもちろん問題があるわけですが、不正確な判断以上に“代表性ヒューリスティック”が生みかねない弊害や問題にはどんなものがあるのでしょうか。それは、間違った判断と思い込みです。はわたしたちは、体重が増えて「ダイエットしよう!」と決意するとき、とりあえずジョギングを始めるイメージを想起するのではないでしょうか。しかも早朝の。これはおそらく漫画や映画などのフィクションで形成された「頑張って痩せる、またはトレーニングするイメージ」から来ているはずです。しかし実際にはジョギングは、ダイエットには効果が少ないどころか長時間の有酸素運動はむしろ太る効果(さらに老化もします)があります(※2)。このようにして、それっぽいからという理由を判断にしているとときどき間違いを起こしてしまう、これが代表性ヒューリスティックが生みかねない弊害です。
対策・応用
こういった代表性ヒューリスティックの弊害への対策は、シンプルで自分で調べることです。できるだけエビデンスベースなものを求めていくと良いでしょう。そしてできるなら英語で調べたほうが広く深く調べられます。どうしてもリテラシーが必要になってくるのですが、慣れが精度をある程度あげてくれるので、調べ癖をつけていくと良いでしょう。
オススメの本
『Factfulness』
「それっぽさ」と真実の差を紹介しています。
『ファスト&スロー』
代表性ヒューリスティックの例を多数紹介しています。
参照
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