「わたしは人より客観的だ」という思い込み “バイアスの盲点”
「認知バイアス大全」マガジン
人間が不合理な行動をする理由の多くは、認知バイアスによるもの。認知バイアスとは、生き物が進化の過程で獲得する生きるための工夫のバグ部分です。そんな認知バイアスを236個紹介しているのが、「認知バイアス大全」マガジンです。
「人の悪口を言う人って嫌よね」
こう言ったり、言うのを聞くことってときどきありますよね。
「人の悪口を言う人って嫌よね」
ここには、じつは矛盾が含まれています。これを言っている人は、人の悪口を言う人の悪口を言っているからです。これに近いのが「バイアスの盲点」です。バイアスに詳しいわたしやこれを読んでいるあなたたちが陥りやすいバイアスです。
バイアスの盲点
バイアスの盲点(Bias blind spot)とは
です。バイアスとは、「偏り」という意味で、合理性を欠いた受け止め方や考え方です。このバイアスというものに詳しくなると「わたしは詳しいからバイアスの影響をあまり受けていない」と考えるようになります。それもバイアスです。
「バイアスの盲点」という言葉は、プリンストン大学心理学部の社会心理学者であるエミリー・プロニン(Emily Pronin)氏が、同僚のダニエル・リン(Daniel Lin)とリー・ロス(Lee Ross)とともに作成したものです(※2)。彼女らの研究は、600人以上のアメリカ人を対象とした調査で、85%の参加者たちが自分のことを「偏見が少ない」と評価しました(※3)
頭の中に張り紙をしておきたい「ブルータス、お前もだ」と
認知バイアスの研究家たちや人間の意思決定の構造の研究者たちは、おうおうにして自分たちが騙されやすいことから研究を始めたりします。たとえば『影響力の武器』のロバート・チャルディーニ氏とか。またはわかっていても、わたしたちは認知バイアスから逃れられないということも学びます。『かくて行動経済学は生まれり』の冒頭で、アンカリングという認知バイアスを知ってなお被験者たちはその影響力から逃れられないでいる様子が描写されています。
メンタリストDaiGoが大きな影響を受けたとも公言している有名な著書。
『マネーボール』の著者が行動経済学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーにフォーカスした著書。
というわけで、バイアスを研究する人、バイアスというものを知る人はみな頭の中に、なんなら実際に壁に「わたしも認知バイアスをばっちり持っている」と書いた紙を貼っておくのが望ましいようです。忘れちゃうから。知れば知るほど。
対策
生物学者の福岡伸一氏は、「自分(の直感)を信じない」と公言しています。
応用
まとめ
これは、バイアスに限らないんですが、自分が熟知していると思っているフィールドについてよく使えます。あなたがデザイナーだとしてデザイナーではない人のデザインについてのアイデアや意見を「素人のそれ」と受け入れるか「そんな視点もあるのか」「それはありかも」と考慮のなかに取り入れるかで、世界も実力も大きくことなってきます。
こんなふうに「自信」や「プライド」ってあんまり役に立たないどころか人生の邪魔になることが多いかもなんです。
関連した認知バイアス
ダニング=クルーガー効果(Dunning–Kruger effect)
知識のない人ほど自分は能力があると思い込む傾向。逆に、知識や能力の高い人は、自分はまだまだだと感じる。
参照
※1:blind bias spot
※2:The Bias Blind Spot: Psychological Dynamics and Social Consequences
※3:Bias Blind Spot: Structure, Measurement, and Consequences