自分で作ると価値が高まる「イケア効果」&「卵理論」
「認知バイアス大全」マガジン
人間の不合理な行動は、認知バイアスが原因であることが多い。認知バイアスとは、人間が進化の過程で獲得した生き抜く工夫のバグ部分。そんな認知バイアスを集めたマガジンが「認知バイアス大全」マガジンです。
自分で組み立てた家具は愛おしい
自分で組み立てた家具にはわたしたちは、妙な愛着を持ってしまいます。だれもが心当たりあるんじゃないでしょうか。これを「イケア効果」と呼びます。このイケア効果は、家具だけではなく、料理やアイデアにも発生します。
イケア効果
イケア効果 (IKEA effect)とは
です。イケア効果の要点は以下の4つ。
なにかに労力をつぎ込むと、そのなにかの価値がわたしたちの中で高くなる。
労力をかければかけるほど、愛着は大きくなる。
自分で作ったものを過大評価し、他の人も自分と同じ見方をしていると思い込む。
多くの労力をつぎ込んでも、完成させられなかったものには、愛着を感じない。
労力と愛情が比例すること、そして完成させないと発生しないのがイケア効果の特徴です。
少しでも自分で作ると料理は自分の料理になる
材料が全部入っているケーキミックスを開発して販売したところ、当初売れ行きがかんばしくありませんでした。なぜか?それは全部材料が入っていると自分で作った料理とは思えないからでした。そこで、心理学者であり、マーケティングの専門家のアーネスト・ディヒター(Ernest Dichter)は、
「ケーキミックスの不完全にすること」
を思いつきます。自分で新鮮な卵や牛乳を買って、バターを加える、という一手間が必要な商品にしました。その結果は、商品はすごく売れるようになりました。これを「タマゴ理論」と呼ぶようになりました。なぜ売れるようになったのかというとイケア効果を使ったからです。人は、卵や牛乳を自分で買って、自分で加えて作ってようやくケーキを自分で作ったものと感じることができるようなったからです。ケーキは、誰かのために作ってあげるもの。「美味しい!」とか「嬉しい!」と言われても、自分で作ったものでなければ、あまりうれしくありません。「インスタントな材料を混ぜて焼いただけよ」と思ってしまいます。しかし牛乳やバター、卵を自分で加えて作ることで、自分が作ったものになるので、喜ばれると素直に喜べる。こうして自分のものになったという意識を所有意識と言います。イケア効果は、自分で完成に関わることによって所有意識が生まれ、作ったものに対して感じる価値が高くなるもの。また所有していることでその価値が高まることを所有効果と言います。
対策
自分で作ったモノやアイデアに対する不均衡な評価には弊害もあります。例えばはNIH症候群。NIHとは「Not Invented Here」の頭文字で、自社で開発されたもの以外を採用したがらない傾向です。そのため、する必要もない開発をしようとします。MP3規格が誕生して以降のウォークマンがその好例。デザイナーが自分のデザインを評価するときなど、イケア効果が生まれています。頑張って考え出したアイデアにもイケア効果は発生しています。
応用
イケア効果を上手に応用しているのは、名前の通り「イケア」。組み立てを顧客に委ねて価格を下げ、にもかかわらず愛着を抱いてもらっています。自動車などのオプションやカスタマイズにも、イケア効果が生まれます。自分だけのデザインにすることによって高い価値がオーナーのなかに生まれます。
人間は自分で考え出したものに愛着を持ちます。まだ心理的リアクタンスというものがあり、これは、他人から勧められたものに抵抗したいという力です。なので、誰かに何かを行動を促したいときは、アイデアを自分で考え出したように思わせると動かしやすくなります。「あなたのおかげでこうなりました」と思われたいところですが、目的が他者の行動変容であるなら、その選択を自分で考え出したように思わせるべきです。
まとめ
1. なにかに労力をつぎ込むと、そのなにかの価値がわたしたちの中で高くなる。
2. 労力をかければかけるほど、愛着は大きくなる。
3. 自分で作ったものを過大評価し、他の人も自分と同じ見方をしていると思い込む。
4. 多くの労力をつぎ込んでも、完成させられなかったものには、愛着を感じない。
オススメ本
イケア効果は、行動経済学の研究者、ダン・アリエリーの著書『不合理だからうまくいく』のP120からP152でかなり詳しく紹介されています。Kindle版は現時点でありません。
「イケア効果』を含む認知バイアスをつかった人の動かし方を解説している本です。
関連した認知バイアス
保有効果(Endowment effect)
一度何かを所有すると、それを手に入れる以前に支払ってもいいと思っていた以上の犠牲を払ってでも、それを手放したがらない傾向。
NIH症候群 (Not invented here)
ある組織が、アイデアの発祥が別の組織であることを理由に採用したがらない傾向
心理的リアクタンス(psychological reactance)
他人から選択を強制されたりすると、例えそれが良い提案であって反発する傾向。
参照
※2:利用可能性ヒューリスティックavailability heuristic
※4:The availability heuristic in the classroom: How soliciting more criticism can boost your course ratings
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