美人だと優秀に見えちゃう「ハロー効果」
認知バイアス
認知バイアスは人間が進化の過程で獲得した工夫のバグ部分。わたしたちは認知バイアスによって、たとえわかっていても不合理な行動をしてしまいます。そんな認知バイアスを集めたマガジンがこちらです。
「次の二人のどちらが好きですか?」
これは、アメリカの心理学者、ソロモン・アッシュ(Solomon Asch)による有名な実験で使われた質問です。みなさん、どちらでしたか。
あなたがちょっと変わっているタイプではない場合、タロウのほうが好きだと答えているはずです。その理由は、最初に挙げられた特徴が、そのあとに挙げられる特徴へ影響を及ぼすためです。頭がよくて→頑固なら、しっかりした持論を持ち続けるからと解釈し、頭が良いから批判的なのかも、と考えます。しかし逆に嫉妬深くて頑固は人が頭がいいのはとても厄介そう。全部同じ特徴なのに聞く順番が違うだけで印象がこんなに変わります。最初に与えられた刺激が、そのあとの刺激に対する反応に影響を及ぼすことを「ハロー効果」と言います。
ハロー効果
ハロー効果(Halo effect)とは
です。ハローとは「Halo」で、「後光」という意味です。なので後光効果とか、光背効果とも呼ばれています。ハロー効果は、関連誤謬(Association fallacy)の一種です。ハロー効果には、ポジティブなものとネガティブなものがあります。英語が堪能な人は仕事ができそうに思えたりしますが、英語が堪能なことと仕事ができることは関連がありません。
美人でビシッとしたスーツ着た女性もまた有能そうに思えますが、美人と能力もまた関係がないのにそう思い込んでしまいます。これらはポジティブなハロー効果です。逆に校則を破るような生徒は成績が悪いだろうと考えるのは、ネガティブなハロー効果です。安そうな服を着ている人を能力が低そうだと感じたりするならそれもネガティブなハロー効果。実際には安そうな服を着ている有能な人、金持ちなのに頭が悪い人、有名なのに性格が悪い人、有名なイノベーターなのに人格が徹底して悪い人は普通に存在しています。
対策
このハロー効果から逃れることはとても難しいので、不可能だと考えて良いでしょう。頭の良し悪しは関係ありません。アンカリングに似て、分かっていても影響を受けます。美人やイケメンは「他にもなにか優れた特徴がある」ように思えてきます。実際にある特徴が他の特徴の存在を示唆するということはあるので、それを学習してきた遺伝子が、定型文にしているために起こる現象です。
このハロー効果に抗うすべは「設計」です。何かを採点する際は、同一人物のものであるなら続けて採点しない。何かを評価するときは、縦断的ではなく横断的に行うこと(それでも発生するけど)。そういう行動の設計がハロー効果の発生を抑えます。
あとは認知バイアスあるあるですが、「知ること」。認知バイアスのほとんどが無自覚です。なのでその存在を知ると、そこではじめて気づくことが可能になります。
応用
ハロー効果は至るところで応用されており、もっともわかりやすいものは広告です。タレントで「この人なら信頼できそう」というイメージの方々います。例えばタモリさんや北野武さん。彼らが「美味しい!」というなら美味しいであろうとわたしたちはなんとなく思います。でも広告だしと思う気持ちはじきにきえて「きっと美味しいのだろうな」という印象だけ残りますので、コンビニに入ってビールを買おうとするときにどれか迷う人は、その商品を手に取りやすくなります。選挙でも一緒ですが、マーケターが狙うのは浮遊票です。このようにハロー効果はテレビをつけたり、街をあるけば使われているケースはやまのようにあります。お気をつけあそばせ。
服装や車がビジネスパーソンに大事だと説かれることがありますが、これもハロー効果によるものです。ロレックスのデイトナをしているのを見て「このひと仕事できそう!」と感じてしまうのが、ハロー効果。
服装でも家の内装でも良いですが、1点から数点、豪華なものを使うと他のものも豪華なものに見えてきます。このとき、安価に購入できるものでも、あからさまに低質に見えないものであるバランスは必要ですが、コーディネートやインテリアで手軽に使える工夫です。
ハロー効果の本
IMD、国際経営開発研究所での戦略と国際マネジメントの教授であるPhilip M. Rosenzweigの著書に、ハロー効果について書かれたものがあります。 ハロー効果以外に8つのビジネス関連の妄想についても具体例を交えて解説していますので、ビジネスパーソンはなかなか役に立つ著書ではないでしょうか。
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ピグマリオン効果
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ゴーレム効果
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アンカリング
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