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私はモスクワを歩く@VRChat
私はモスクワを歩く
でも私はまだ進むこともできる
塩辛い太平洋にも
ツンドラやタイガにも
ニキータ・ミハルコフ「私はモスクワを歩く」
筆者はロシア語を雰囲気でやっている。そういうわけで、VRChat内のソビエト/ロシア的ワールドへ関心が向いたのも、自然なことであった。この記事は、筆者が「VRChatを歩いた」記録の一つである。
Moscow Trip 1952-River Tram (v 5․1)
個人的「初心者でも行きやすいワールド」第1位。名前の通り、1952年のモスクワを散策できるワールドである。
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始まりはモスクワのアパートの一室から。ベランダからは秋のモスクワを一望できる。
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ラジオでは複数の楽曲を聴くことができる。「私はモスクワを歩く」「我らの祖国は革命」「航空行進曲」「同志よ体操だ!」。
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部屋から画廊へ行くこともできる。トレチャコフ美術館所蔵の名画を見よう。
絵画鑑賞に飽きたら、外の空気を吸いに行こう。中庭に出ることができる。
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中庭には自転車や自動車が置いてあり、乗ることができる。
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日本で一般的なアバターのサイズだと前が見えないかもしれない。身長170cmくらいのアバターを用意しておこう。
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小さなサッカー場や射的も用意してある。疲れたら炭酸水自販機で喉を潤そう。
そしてこのワールドの目玉は、モスクワ川クルーズである。
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船に乗り込み、美しいモスクワの景色を楽しもう。船内にはやはりラジオがあるので、音楽を聞くこともできる。
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アパートメントと飛行船、そして世界最大のビルディング「ソビエト宮殿」。
高さ100mの巨大なレーニン像がそびえる巨大な公会堂は、実在しない。もともとこの場所には、1812年ナポレオン戦争の戦勝記念と戦没者慰霊を兼ねた巨大な教会、救世主ハリストス大聖堂があった。
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ロシアの権力を掌握したソビエト政権は、「宗教はアヘン」とみなして正教会を弾圧。1931年に大聖堂は爆破され、ソビエト政権樹立を記念する記念碑を築くことが予定された。それが上述の「ソビエト宮殿」である。高さ415mの大会堂は、エンパイア・ステート・ビルディングを上回る当時世界最大の建造物で、中には美術館なども入居する予定だった。
1939年には「宮殿」の基礎のかなりの部分が完成していた。が、建設はそれで止まった。1941年には独ソ戦のため建設が停止され、鉄骨などはモスクワ防衛のための資材として供出された。さらに「宮殿」にとって不幸だったのは、1953年にスターリンが死去したことである。後任のニキータ・フルシチョフは計画を完全に中止した。1958年には、残っていた基礎部分が巨大な屋外温水プール「モスクワ」に転用された。
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(Fmaschek、CC 3.0)
ソビエト連邦解体後には教会の再建の機運が高まった。1995年にプールの撤去が始まり、2000年に救世主ハリストス大聖堂は「復活」した。
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(Ketrin.sv、CC 3.0)
ソ連時代から「宮殿」は幻の存在であったし、現在のロシアにおいてもその存在は幻のままだ。
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幻の「宮殿」を見に、モスクワ川へぜひ繰り出して欲しい。