手話通訳者全国統一試験「聴覚障害者の生活」2021過去問③解説〜聴覚障害者の暮らしと日常生活用具〜
2021年度手話通訳者全国統一試験の過去問について、参考文献をもとに独自に解説をまとめたものです。
問3.聴覚障害者の生活
問題解説
(4)が正しい。聴覚障害者の暮らしや生活、給付対象となる日常生活用具について理解しておきたい。
聴覚障害者の暮らし
テレビの地上デジタル化で字幕放送が受信できるようになり、字幕放送も増えた。「視聴覚障害者向け放送普及行政の指針」に基づき各放送事業所においては字幕放送の普及率は年々上がっている。まだまだすべての番組に字幕がついているわけではないが、災害時の緊急放送やリアルタイム放送といった、特定非営利活動法人CS障害者放送統一機構が放映している字幕・手話付き放送も少しずつ前進している。
日常生活の中で「音」で伝えているものは、電子レンジの終了音、冷蔵庫の閉め忘れを知らせる音、お風呂が湧いたこと知らせる音など様々ある。また、聞こえない人の集まりでは拍手の代わりに両手をあげてひらひらさせる、注意喚起のために照明を点滅させて知らせるなどの工夫をしている。聞こえない人の目覚まし時計は音を光や振動に変換し伝える機器を使っており、日常生活用具として給付される。その他、赤ちゃんの泣き声や玄関のチャイムなどの音を光や振動に変え伝えてくれる機器、光で知らせてくれる火災警報器は日常生活用具として給付される。
バスや電車などの公共交通機関では、「見て分かる情報」として、電車の運行状況や次の停車駅などが電光掲示板で示される視覚情報が増えてきた。これは聴覚障害者だけではなく一般の聞こえる人にも便利なものである。一方、非常時の情報はほとんどが放送によるアナウンスで、聞こえない人たちには正確な情報が伝わりにくい、この点を改善していくことが強く求められている。
聴覚障害の福祉制度
音をいろいろな機器を使って増幅し伝える方法と、音が役に立たないときには音に頼らず、光、振動、文字、手話による方法の二つが必要である。
身体障害者福祉法等により聴覚障害者が使える福祉制度には主なものとして、次のものがある。
装身具とは
装身具とは、障害者等の身体機能を補完し、または代替し、かつ長期間にわたり継続して使用されるものをいう。障害者総合支援法に規定されており、具体的には肢体障害者では、車椅子、義足・義手、装具等であり、視覚障害者では、盲人安全杖、眼鏡等である。
聴覚障害者には装身具として補聴器が交付される。身体障害者手帳3級異常の聴覚障害者には、高度難聴用補聴器が交付される。
日常生活用具とは
重度の障害者がより円滑に日常生活が送れるように給付または貸与される、障害特性に応じた用具を日常生活用具という。障害者総合支援法の地域生活支援事業に規定され、市町村の必須事業である。
聴覚障害者等には、自立支援用具として、聴覚障害者用屋内信号装置、自動消化器、火災警報器、また情報・意思疎通支援用具として、聴覚障害者用通信装置と聴覚障害者情報受信装置の給付が受けられる。この他に必要性が認められば、福祉電話とFAXの貸与が受けられる。なお、盲ろう者で点字が読める人は、点字ディスプレイの給付を受けることができる(手話の筆記試験対策テキスト,全国手話研修センター,p165)。
(参考)
手話の筆記試験対策テキスト,全国手話研修センター
手話奉仕員養成テキスト,手話を学ぼう手話で話そう,全国手話研修センター