手話通訳者全国統一試験「手話通訳の理念と仕事」2020過去問⑯解説〜手話通訳士倫理綱領〜
2020年度手話通訳者全国統一試験の過去問について、参考文献をもとに独自に解説をまとめたものです。
問16.手話通訳の理念と仕事
問題解説
(2)が正しい。手話通訳業務に従事する人々、手話通訳を学ぶ人々が自らの手話通訳実践は仕事を行っていくための指針、行動規範として職業倫理を身につけていく必要がある。手話通訳士倫理綱領にあげられている7条についてはしっかり理解し、実践に役立てていきたい。
手話通訳者の職業(専門職)倫理
全国手話通訳問題研究会の初代運営委員長伊藤雋祐は、「手話通訳」の中で、「手話が読みとれない、わかりにくいからこそ共に歩き、共に学び、その人の生活や人生から学びつつ、通訳行為を通してことばの論理、現代の生活の論理につなげていくことが必要」と述べている。
安藤豊喜・高田英一「日本における手話通訳の歴史と理念」
・ろう者の権利を守る手話通訳は、(中略)社会的行動の自由の獲得のための協力者であり援助者であるとすることが正しい。
・行動の自由の範囲の拡大こそ、ろう者要求の本質をなすものであり、ろう者の社会的自立のための人間関係の発達、社会制度整備の一里塚をなすものである。
・手話通訳はすぐれた手話通訳技術者であることに先立って、すぐれた社会活動家であるべきである。
手話通訳の価値・倫理(手話通訳士育成指導者養成委員会「手話通訳の理論と実践」)
・個人の人権の尊重
・聴覚障害者の人格、人権の尊重
・聴覚障害者の主体性の尊重
・個人の秘密を守る
・聴覚障害者の社会参加の平等の実現に努める
・聴覚障害者の要求を把握し自治体政策に反映されるよう努める
・自発的に職務に関する研修に励み資質向上に努める技術、品性、人格の向上
手話通訳士倫理綱領
私たち手話通訳士は、聴覚障害者の社会参加を拒む障壁が解消され、聴覚障害者の社会への完全参加と平等が実現されることを願っている。このことは私たちを含めたすべての人々の自己実現につながるものである。
私たち手話通訳士は、以上の認識にたって、社会的に正当に評価されるべき専門職として、互いに共同し、広く社会の人々と協同する立場から、ここに倫理綱領を定める。
よって(2)が正しい。(1) は5の「手話通訳士は、その技術と知識の向上に努める。」に該当する。(2)は2の「手話通訳士は、専門的な技術と知識を駆使して、聴覚障害者が社会のあらゆる場面で主体的に参加できるように努める」に該当する。(3)は守秘義務に反する行為であるため4「手話通訳士は、職務上知りえた聴覚障害者及び関係者についての情報を、その意に反して第三者に提供しない。」に反する。
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