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「ひとり芝居」(昭和51年 1976)石川セリ

 石川セリの曲は、20代前半からよく聴いてきました。気が付くと口ずさんでいるアーティストで3本指に入るだろうと思います。
 “女性一人で、一人の女のことを歌っている” この当たり前なことを、ひたひたと実感させるアーティストだと思っています。

 好きな曲はたくさんありますが、今回はこの曲を取り上げてみました。
 作詞が松本隆、作曲が荒井由実ですが、曲のテイストが(荒井由実と犬猿の仲と言われた)中島みゆきっぽいのでなんだか可笑しいのです。それは、もちろん、松本隆の歌詞が大きなウエイトを占めていると思います。別れてしまった男の声を真似て自分の名前を読んだり、もういない男のために淹れた紅茶に好みの数の角砂糖を入れたり、男がいつも選んだようにレコードをかけたりします。そして、最後に、

♪話しかけてもあなたはいない ただ悲しみがこみあげるだけ

と歌って締めます。

 なのに、聴いていても、唄ってみても、ちっとも中島みゆきの曲のように悲しくなりません。

 二番の歌詞の、

♪借りっぱなしの本もみんな 返せないまま棚の隅に
 引き取り手のない心は どこに置けばいいでしょう

は、秀逸な詞だと思います。

 と同時に、同じテイストの別の曲をどこかで聴いたことがあるような…と長年、悶々としてきましたが、やがて、わかりました。

♪借りていたDictionary 明日返すわ
 “Love”という言葉だけ切り抜いた後 それがGood bye

 そう。竹内まりやの「September」です。作詞は、やはり、松本隆。
 お別れの曲なのに、この曲も、ちっとも悲しくならない名曲です。

♪「ひとり芝居」(昭和51年 1976)石川セリ
 作詞:松本隆 作曲:荒井由実
https://www.youtube.com/watch?v=XhRHnQ_P0AQ