埼玉ぐらし#03 ケージ飼いのブロイラーになる
前回に引き続き、家の話です。
離農する時、次の住み家は、持ち家か賃貸か、集合住宅か一軒家か、どの選択肢も選べました。
持ち家か賃貸か。
死んだあと子供に迷惑をかけたくないので、もう不動産は買わないということで、賃貸一択でした。
集合住宅か一軒家か。
昔、結婚して日が浅く子供が小さい頃は、札幌や旭川の賃貸アパートに住んでいました。当時は、それが嫌でした。だから私は集合住宅が嫌いなんだと思い込んでいました。
酪農経営を始めて、40haの真ん中にポツンと一軒家という前の家は理想の住み家になるはずでした。
私の怠け者ぶりが想像を遥かに超える事を発見するまでは。
だから、怠け者大前提で考える事にしました。
除雪しなくていい(関東はもともと除雪しなくていいけど)、草刈りしなくていい、なるべく掃除をしなくていい、階段掃除なんてもっての他。
一軒家は無いな。もれなく庭の手入れが付いてくるものな。
じゃあ、マンションかアパートで。
でも、これからは高齢無職になるので、住宅情報を調べていても民間アパートやマンションは貸してくれなさそうです。
そして、もう一つ、やっぱり子供たちの住んでいる関東にしようと決めた時に、第一に頭に浮かんだのは、地震でした。地震や津波や水害に強い場所に住みたい。
高齢無職になるので保証人や契約更新のいらない、鉄筋鉄骨コンクリートで耐震性はバッチリ。考えれば考えるほどURの団地しかないじゃないですか。
問題は、集合住宅が嫌い(だと思い込んでいた)なので、耐えられるかどうかです。
夫に話したら、「狭い所に押し込められているニワトリになるようで、嫌だ」と言います。
でもでも。他に無い。もう、引っ越しちゃえ。っと、引っ越しちゃいました。
すると、あんなに集合住宅が嫌だと思い込んでいたのに、嫌じゃない。そして、気が付きました。子供が小さい時は、自分たちが騒音を出す側で隣近所に迷惑をかけていたので、それがいたたまれなかったんだと。(木造の壁の薄いアパートだったし)
今は2人で静かに暮らしていて、近所に迷惑をかけていません。というか、防音性が優れているのか、お隣や上の階の声や音がほとんど聞こえません。
初めて一軒家に住んだ時は、他人の生活の気配がまったくしない事に感動しましたが、今だって他人の生活の気配はまったくしません。
住めば都と言いますが、ずっと生活していると、それが単なる日常の風景になって、良くも悪くも何も感じなくなります。
田舎に住んで窓の外が自然あふれる風景でも、団地に住んで窓の外が隣の棟でも、居る場所はリビングで、見ているものはスマホやパソコンの画面です。
夫はもともと書斎に籠って、パソコンの画面か本かノートかしか見ないので、関係ないのです。一瞬わがまま言ってましたけど。
というか、自らケージ飼いのブロイラーを楽しんでいる風にも見受けられます。カーテンの隙間から隣の棟を見て、「こんな天気なのに、あそこは洗濯物を干している」とか「まだ取り込んでない」とか、楽しそうに言っているのですよ。
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