見出し画像

牛と暮らした日々-そこにあった句#12 トラクター

トラクターに乗りたる火蛾の死しても跳ね  鈴木牛後
(とらくたーにのりたるひがのししてもはね)

さて。
トラクター女子の現実をお話ししよう。

牧草畑は遠目では平らに見えるが、そうとうデコボコしている。そして道路も乗用車で走ると平らなようだが、トラクターで走るとけっこうデコボコしている。そしてそして、うちの古いトラクターはエアークッションの空気が漏れていて、半端ないくらいバウンドするのだ!
その結果、あちこち揺れて、とっても痛い!

女子の皆さん。思春期の頃に学校体育でランニングしていた時に、バストが痛かった事を思い出して欲しい。あんな感じなのである。

トラクターに乗りたる女子(私)は、右手で押さえながら道路や畑のバウンドに耐える。農作業着メーカーで、きっついサラシ型ブラを開発、販売してくれないかとマジで思ったりする。

そして、バストが命の乳牛の世界では、乳房が垂れ下がる原因は乳房をつり下げている靱帯が伸びるからだと聞いたことがある。
夕方の搾乳に牛を集める時、急傾斜の放牧地を牛が乳房を揺らしながら駆け下りて来ると、「あーー!やめてーー!靭帯が伸びる!垂れ乳になるーー!」と心の中で叫ぶが、人間の世界も同じなのではないかと思う。

このトラクターのバウンドは絶対、乳房の靭帯に良くない良くない。(大事な事なので2回書いた)
でも、良くないけど仕事だからやるしかない。

古いトラクターで、若い奥様に牧草作業を手伝ってもらっている男子の皆さん、トラクター女子が将来、垂れ乳になっても、どうかどうか温かく見守ってほしいものだ。
 
よくはたらく我も毒餌を曳く蟻も 牛後
(よくはたらくわれもどくじをひくありも)

抱くやうに廻すハンドル濃紫陽花 牛後
(だくようにまわすはんどるこあじさい)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?