『キングオブコント2019』感想
◆ファーストステージ◆
うるとらブギーズ【催眠術】…462点(ファーストステージ2位)
催眠術師タクヤ(佐々木)のショーに客として来ていたカシモトさん(八木)。しかし、カシモトさんの“喋っている人と同時に喋ってしまう”癖によって現場はかき乱されていく…。
まず、喋っている人と同時に喋ってしまうという奇妙な設定を催眠術ショーというシチュエーションに当てはめたのが凄い。この設定を一番活かせるシチュエーションだったと思う。仕掛けが分かってからは、笑いが途切れることなく持続するように作られているのも凄い。この設定を思い付いたとして、5分間失速せずに持続させるのは中々難しいのでは、と思った。はじめに催眠術師とカシモトさんの二人だけの会話を十分に見せておき、次にマキキョウコさんという別の客を介した空間づくりが始まる。「神奈川県から参りました、一緒だ」みたいなさりげない台詞にカシモトさんの妙な憎めなさみたいなものを憶える。その後結局カシモトさんに催眠術をかける事となるが失敗。催眠術師の感情まで再現して喋ってしまうカシモトさんの滑稽さよ。そして途轍もなく笑ったのが、他の観客の声まで全て拾ってしまうカシモトさんの姿。「カシモト泣くなー!」という声援や、「あ、あ!」というカシモトさんを遊び者にするヤジも全てないまぜに再現してしまうあの姿。多くの第三者をいるように見せるスタイルについてはかが屋の名前が挙がることが多いが、中々どうしてうるブギも負けていないなと思った。そして催眠術師はカシモトさんに「喋った人と同時に喋らなくなる」という催眠をかける事に成功するが、少し前にかけた左手が開かなくなる催眠も時間差で今かかってしまうというオチ。このコント、オチをつけるのが相当難しいタイプのコントだと思ったけど、あまりにもすんなり受け入れられるオチで気持ちが良かった。結果、トップバッターにして2位通過という快挙を成し遂げたうるブギのこのコント。5位以上通過の頃のルールならまだしも、3位以上通過の厳しいルール下でトップバッターがここまでの評価を受けたというのは快挙と言える。
ネルソンズ【野球部】…446点(ファーストステージ6位)
同じ野球部の同級生(岸)からマネージャーの良からぬ噂を聞いてしまった野球部員(和田)は、その噂を「絶対に言うな」と言われながらも野球部の先輩(青山)に話してしまう。しかし、そのマネージャーは先輩の彼女で…。
クセの強いキャラの和田さんが青山さんに振り回される展開は、ネルソンズの名コント「正義感」に近い。このコントでは口が軽い和田さんが身から出た錆で追い込まれていく姿を滑稽に書き出しており、和田さんが岸さんに言い放った「俺なんか言っちゃってぇ」という言葉に「和田まんじゅう」の全てが集約されていると言っても過言ではない(過言かも)。ただ、和田さんのキャラクターが浸透し切っていないためか、青山さんに「俺の彼女なんだよ」と言われた後の表情がウケ切らなかったのが少し残念。チャップリンならあそこもっとウケてた。とはいえその後の口の軽さっぷりに拍車がかかっていく姿は秀逸で、親友から「絶対に隠れ場所を言うな」と言われたそばから流れるように同級生を売る姿は見ていて清々しいくらい。その後の「間違えた…」という台詞は前述の「正義感」にも存在する台詞だが、自分が進むべき立場の二択をことごとく外す感じが最高だ。そしてそのまま二択を間違え続け、逆ギレの道を選んでしまう。口の軽さを先輩から追及され、何故か身体を前後に揺らしながら鳥の如く威嚇するシーンはめちゃくちゃ笑ったし会場もある程度はウケていたのだけど、その後の岸さんを突き飛ばすシーンでお客さんが和田さんに対する感情を一瞬プツっと切ってしまったような感じがして物凄く残念だった。個人的にはネルソンズは今年の優勝候補に据えていたトリオで、もっと無双すると思っていたので正直6位は意外な結末だった。今後間違いなく優勝争いに加わっていくトリオだと思うので期待。この決勝の一週間前、「青山フォール勝ち骨折」という衝撃的なニュースが飛び込んできたが、支障なくコントをやっていたので気にならなかった。良かった。むしろ負傷によりコントに支障をきたしていたのは別の組だったという…。
空気階段【タクシー】…438点(ファーストステージ9位)
変なタクシー運転手(もぐら)に「前も乗せたことありますよね」と不可解な事を言われる乗客(かたまり)。しかしその後、その乗客と全く同じ顔の乗客が乗り込んでくる事で物語は急展開を迎え…。
序盤でのもぐらさんは聞き間違えや操作ミスを多発、挙句の果てには初めて乗せる乗客を「乗せるのは3回目」と勘違いする奇妙なタクシー運転手として描かれていく。乗客を降ろし一人笑っていると、再び先程の乗客が乗り込んでくる。しかし、どうも話が食い違う。この瞬間、会場全体に流れる妙な空気が凄く好きだった。そしてついに運転手はこの乗客が先程の乗客とは違う「トランペット」の人だと気付く。トランペットの乗客を目的地まで送り、軽く話をする。そこで親戚の話が出たので前述のGENERATIONSの話をすると、ピンとこない顔をして帰っていく乗客。ここで運転手は悟る。変なタクシー運転手が、「顔が全く同じの3人の乗客を乗せていた」というもっと変な世界に迷い込んでしまうのだ。そして再び先程の乗客が。もしや3人目と思う運転手だったが乗客は2人目のトランペットの乗客で、「全く顔が一緒の人間が赤い車に乗っていたから追ってくれ」と頼む。運転手は「GENERATIONS…!」と口走り車を走らせるのだった。コントの前半部分では「鈴木もぐら」という強烈なキャラクターを持った人物にフォーカスを当てていくが、中盤でそれを一気にひっくり返す展開にはかなりニヤッとさせられた。序盤は言わば小ボケの連発で、「へちまが詰まったトランペットを返却」や「親戚80人でGENERATIONSのライブ」といった発言もその場だけのボケにしか思わない。しかしそういう細かいボケがしっかりその後の展開に繋がっていく綺麗な構成が素晴らしい。なんだろう、あのかたまりさんの素知らぬ顔というかすました顔というか…奇妙な出来事に巻き込まれるもぐらさんとの対比が素晴らしかった。スタンプカードのくだりの「激アツデー」みたいなワードもかたまりさんの魅力が詰まっていた。「電車」や「クローゼット」という名コントを去年準決勝で披露し、大ウケするも決勝へ行くことが出来なかった空気階段。そこから一年、無事決勝へ来る事が出来たが結果は最下位に終わった。自分は全体的な構成がかなり素晴らしいコントだと思ったが、初見の審査員には高く評価しづらいコントだったのかもしれない。そういう意味では、去年落とされた事が悔やまれる。
ビスケットブラザーズ【知らない街】…446点(ファーストステージ6位)
いつの間に知らない街に辿り着いたユウタ(原田)は同じくいつの間に知らない街に辿り着いたキョウコ(きん)に出会う。記憶の無い二人は、ある事をきっかけに「二人は恋人同士だった」という事を思い出す…。
今年の決勝の中ではきわめて奇ッ怪なネタだろう。始まった時に、一番「どう展開していくのか?」とワクワクさせられるネタだった。まず、「知らない街」というタイトルが100点だ。このタイトルがネット上で噂されている中で一番どんなネタか気になるタイトルだった。序盤はぶっきらぼうな関西弁を使う二人の奇妙な出会いが描かれていく。キョウコの「アホか!当たり前や!」って台詞で一気に引き込まれた。そしてお互いの腕に入ったタトゥー、共通の指輪をきっかけに記憶を取り戻し、お互いは親に結婚を反対された恋人同士であったと思い出す。このシーンで関西弁から標準語に切り替えるのがニクい。二人の独白パートでは曜日や干支を交互に言い合うクサい演出が織り込まれる。「知らない街で出会った二人」という昨今のアニメ映画のようなシチュエーションを関西のデブ二人が演じるという独特なファンタジー空間がそこにあった。好き嫌いは分かれそうだけど、刺さった人にはとことん刺さった作品なのでは。
ジャルジャル【野球部】…457点(ファーストステージ3位)
野球部の新入部員(後藤)は、補欠で教育係の先輩(福徳)と投球練習を行う。しかし、さっきまで日本語を喋っていた先輩の声は遠ざかると何故か英語のように聞こえ…。
まず、「遠ざかると英語に聞こえる周波数の声」ってなんだ?どう生きて、何を食べていたらそんな事を思い付くんだろう?そしてその設定を投球練習という遠ざからなければ出来ないシチュエーションに上手く当て込んでしまったのだから素晴らしい。そもそも、そんな稀有な特徴を生まれながらに持っていたとしたら、会った段階で何よりも先に話すべきだと思うのだが、先輩はそれを一切しない。なんなら、後輩から指摘されても暫く「英語?」とすっとぼけている。普通ならこんなおかしな事は無いのだが、ジャルジャルが作り出す世界には常識では説明できないような“奴”が大量に住んでいて、それは受け手にとっても周知の事実である。“遠くからだと声が英語に聞こえること、最初に言わん奴”がいてもなんら不思議に思う事ではない。そして“遠くからだと声が英語に聞こえる奴をめっちゃイジる奴”がいるのも自然な事だろう。英語に聞こえるのをいいことに、メジャーリーガーごっこをやってさっきまで優しく接してくれた先輩に「ふざけてるやんお前」と説教される様はもはや異常なのはどっちなのか分からなくて最高だった。新入部員はその後、先輩に「英語で喋れば日本語に翻訳されるのでは」とアドバイス。その読み通り周波数は日本語に合うのだが、「天井が、穴だらけで、錆だらけの一輪車が」といったワードサラダのような文章で、それに対する「日本語が気持ち悪いですね」は大爆笑した。「周波数の問題やから」という言葉も意味不明で笑う。そして新入部員は「次は中国語」と促すのだが…ここまで書いて、「遠くからだと違う言語に聞こえる周波数の声」という設定が改めて意味が分からなさ過ぎてこんな文章を書いている事が馬鹿らしくなってきた。というわけで早急にまとめると、とにかくジャルジャルが楽しそうにコントをしていて良かった!…そういえば、ジャルジャルが準決勝で披露した2ネタは「撮影」と「美容室」で、KOCには準決勝2本をそのまま決勝で披露しなければいけないルールがある。何故コントを変更できたのか?その理由は後に判明。
どぶろっく【農夫と神様】…480点(ファーストステージ1位)
病気の母を持つ農夫(江口)は、薬を探しに森へやって来た。するとそこに神様(森)が現れ、母の想う心に胸を打たれ願いを叶える事を約束。しかし農夫が所望したのは母の健康ではなく…。
これこそ真面目に文章を書く事が馬鹿らしいのでは?ということで簡潔に。もう、このコントを決勝でやった時点で勝ちだったんだと思う。順番にも恵まれた。コントの説明部分で「母の健康ではなく…。」で止めてるけど、言ってしまえば農夫が所望したのは大きなイチモツです。「大きなイチモツをください」と高らかに歌っていました。とにかく、ファーストインパクトがデカかった。最初のサビで半端ない大爆発が。その勢いのままに5分駆け抜けた感じ。「ついでに」とかそりゃ笑うしなぁ。その後の神様の「男よ、イチモツは大きさではない」パートもしっかりウケて、そこからの「愛さえあれば」は馬鹿馬鹿しすぎて気が狂いそうになった。神様が何故ギターを持っているのかとかの説明は一切ないが、それでも受け入れられるのは受け手がどぶろっくに抱く先入観ありきの物だったと思う。その点ではダークホースとして登場したにゃんこスターとは正反対。さりげなく森さんの挟み込むツッコミも趣がある。とにかく大爆笑を巻き起こしたので1位通過に文句は無いが、審査員5人が全員高評価を下したという事実が少しだけ心にグサッと…。にゃんこスターの時ぐらい割れても良かったのでは。
かが屋【花束】…446点(ファーストステージ6位)
喫茶店で大きな花束を目の前に失意に暮れる表情の客(賀屋)と、それを気まずそうに見る店員(加賀)。閉店時間になり蛍の光が流れる。ここで物語の時間は、彼が来店した時間に戻る…。
今回一番語りたいコント。まず、明転したと同時に、受け手に全てを理解させる凄まじい空間デザイン力。何も喋らなくともその表情と二人の距離感、それだけで色んな想像を掻き立てる始まり方。店員が一度引っ込むと閉店の時間を知らせる蛍の光が流れ始める。気まずい空気が流れ続けるまま、暗転。再び明転すると、喫茶店に大きな花束を抱え意気揚々と来店するシーンが描かれる。これからのプロポーズを察し、「頑張って下さい」と彼の恋を応援する店員。再び暗転を挟み、明転すると先程と同じく大きな花束を前に呆然とした表情の男、それを見て気まずそうに話しかけられないでいる店員が描かれる。そこに何の説明も無いが、現在→過去(回想)→現在という時系列の変化を明転・暗転と音響、そしてセットに日めくりカレンダーを置くことでスッと受け手に認識させる演出力。まぁ、これがあらぬ誤解を生むこととなるのだがそれは後ほど…。再び時間は戻り、腕時計を見て待ち侘びる男の姿。するとそこにサービスのチョコレートケーキが店員から運ばれ、彼なりの小粋なジョークで間を持たせる。二人は笑い合い、場は和んだ…ように思えたが、再び暗転し明転するとやっぱりあの光景。またまたシーンは変わり、とうとう諦めて会計を済ませようとする男の姿。しかし店員は諦めきれずなんとか引き留める。しかし再びシーンが変わるとあの光景が待っていた。今まで何度も見たその光景、しかしコントが始まったその時見た光景と受け手が感じる事は格段に厚くなっているはずである。待ち侘びて待ち侘びてとうとう来る気配もなく失意に暮れる男の姿と同時に、自分が引き留めてしまったばかりにこんな事態を引き起こしてしまったのだと自責の念に駆られる店員の姿。男は竦む足をゆっくりとレジへと進めていく。すると「カランコロン」とドアのベルの音が鳴る。彼が待ち侘びた「みゆき」という女性がやってきたのだ。「引き留めてよかった」と言わんばかりの表情で胸に手をかざし、ゆっくりと屈み込んでいく店員。しかし男は発する。「それは、遅れた事に対してだよね…?」と。その瞬間、受け手は彼女の発した「ごめんなさい」という言葉を察するだろう。例えばこれが「ごめんってどういう事…?」といった台詞ならば、受け手は何のフィルターも通さずその台詞の意味が脳に伝達される事だろう。しかし物語の中において彼らは受け手の存在など意識している訳もなく、舞台上では描かれていない登場人物の言葉を復唱する必要はない。舞台上で誰が描かれていて誰が描かれていないかだって当然知らないし、そもそも描かれている事を知らないのだから。それを踏まえて、この台詞。二人だけで第三者を含むその場の空間を作るデザインっぷりが素晴らしい。そこには店を出ていくみゆきという女性がはっきり映し出されていて、男はそれを反射的に追いかける。しかし会計をまだ済ませていない事に気付き戻ってくるのだが、店員は慌ててみゆきという女性を追いかけるよう促すのだった…。と、ここまで、コントらしいボケなど何一つない。強いて言うなら店員のしょうもないジョークぐらいで、喫茶店の風景を切り取って紡いでいるだけだ。なんなら映画的とも言える演出が為される中で、こうも笑いが生まれてしまうというのは、彼らの見せ方の上手さに尽きる。こんなに抒情的で面白いコントがあるだろうか。ただ、「倒叙法」にも似たこの映画的な表現は弊害も生み出している。現在と回想を交互に見せていくこの演出は、その説明の無さから「複数日の話」といった誤解も稀に生みだしている。ただ、その点はカレンダーの日付によってクリアされている筈だ。しかし、このコントを見て「日付が変わっていないのが残念だった」という意見が散見された。つまり、カレンダーの存在に気付いていながら演出の意図を汲めない受け手が存在したのだ。作り手が作品の意図を100%受け手に伝える事は出来ない。だから、このコントを「一日の出来事」だと解釈するのも、「複数日の出来事」と解釈するのも正直自由ではある。だが、後者と解釈した上で「作り手のミス」と指摘するなら話は別である。決めつけというのは怖い。大体、あれだけ凹んでて後日意気揚々と花束を持って来店する訳もないので、その時点で前者と気付けるとは思うのだけど…。まぁ、これに関しては「気付かない事」ではなく「気付かず相手の過失と決めつける事」が怖いという話なので、別に気付かなかったから自分は駄目だ、とか思わないで欲しい。コントを見慣れていない人、流し見で見ている視聴者などはすんなり理解できなくても仕方ない。だが、この演出技術は極めて高等的で、コントが醸し出す雰囲気が他と逸脱しているのは確か。しかしあくまでこの大会は「面白いコント」を競う大会であり、そういった技術は評価の上で加点対象になり辛い傾向にある。実際、自分も腹を抱えて大笑いしたというよりは、うっとりしたという感覚に近く、コントを評価する視点というよりは演劇や映画を評価する視点で観ていた気がする。それに、かが屋のコントの中でもこういった明転・暗転を繰り返す演出や音響を挟み込む演出が珍しく、本人たちの中でも特殊な位置付けの作品であるのも事実。なので6位という評価は甘んじて受け入れるが、それでも多くの審査員がどぶろっくから10点近く点数を下げた事実は未だに悔しい。しかし唯一の救いは設楽さんの94点という評価であり、これはどぶろっくを1点上回る単独1位評価となる。「設楽さんの評価が絶対!それ以外は悪!」とは言わないが、こういった視点を持つ審査員がもう一、二多くてもいいのでは。
GAG【女芸人】……457点(ファーストステージ4位)
市役所で働く真面目な男(福井)の彼女(宮戸)は、養成所で出会った男芸人(坂本)と男女コンビを結成。彼氏は二人のネタを見せてもらうのだが、「ブスを笑い者にする」という内容で…。
このコントが披露されているのを見て、「やっとGAGが報われた」と安心した。きっとこれでも、準決勝と比べればウケは半分にも満たないのだろう。だけど、間違いなく今までの2年とは違うウケを獲得していた。いつもはあまりウケないフリ部分での「医学的視点から見る人が笑う構造」というボケもしっかりハマった。彼女と結成した相方が良識ある人物と安心し、早速ネタを見たがる彼氏。しかし、彼女の相方は「どうもー、ブサイクミサイルでーす!」と自己紹介するや否や、彼女が何か発言する度に彼女をブスと称し笑い者にする。挙句の果てには「嘘つけー!こんなブスと付き合いたい男いるかー!」と、彼氏の目の前で彼氏にとっては聞き捨てならん事を発する相方。彼氏がわなわなしているのも束の間、お次はショートコントを披露する二人だったが、再び彼女をブスだと馬鹿にする内容で「うちの彼女ブス扱いするなよ」と憤慨する彼氏。そっくりそのままその言葉を返す相方に、「いかついオウム返しやな」と福井さんの“低音ネットリボイス”による華麗なツッコミが炸裂。愛しの彼女のブス扱いを受け入れられない彼氏だったが、「私はブスで行くの」と芸人で生きていく事の覚悟を語りそのまま泣き崩れる彼女。そんな光景を見て、「お笑いって、異常な世界なんやな」と崩れ落ちる彼氏。他人の容姿を大勢の前で笑い者にするというやや浮世離れしたこの業界に対する問題提起とも言うべきツッコミだ。お笑い界と市役所の対比も素晴らしい。その後、とうとう耐え切れず彼氏と相方は取っ組み合いになるが、その軟弱な体から想像もつかない体幹の強さを見せる相方。そこで「実は昔関取だった」という衝撃的な事実が伝えられ、「150kgが49kgになったんです、面白くないでしょ」という歪んだお笑い観に思わずジタバタと暴れ回る彼氏の姿は実にペーソス漂う滑稽さを持っていて、思わず手を叩いて笑ってしまった。そんな彼氏の姿を見て、「トリオを組まないか」と提案する二人。しかしそんな提案を飲むわけもなく、「市役所の安定舐めんなよ!」と吐き捨て物語は終わる。彼女がビジネスパートナーにブス扱いされるのをただただ見つめる彼氏の悲壮感漂う表情、容姿を武器にしなくてはいけない女芸人の現状への皮肉、そしてそれらを包み込むGAG特有の馬鹿馬鹿しいドタバタっぷり。コントが終わると同時に思わず手を叩き「行った!」と叫んだのだが、結果はジャルジャルと同率3位。決選投票の結果、3対2で敗れる事となる。点数はジャルジャルに高得点を付けた松本・日村、GAGに高得点を付けたさまぁ~ずに割れ、結果は同点を付けた設楽さんに委ねられた。苦渋の決断だったと思う。ここまで来たら2本目を見たかったが、やっとGAGが認められたんだという安心からかなんとか心の平静を保つ事ができた。最下位→8位→4位と、結果は確実に右肩上がりになってきている。来年に期待!
ゾフィー【謝罪会見】…452点(ファーストステージ5位)
腹話術師のコマネモリオ(上田)の不倫謝罪会見に参加する記者(サイトウ)。しかし、コマネは商売道具でパートナーの人形ふくちゃんを会見に同席させており…。
準々決勝ぐらいから巷で噂になっていたコント。正直かなりハードルを上げていたのだが、軽々しく超えられてしまった。「腹話術師の謝罪会見」という発想がまず100点だ。人形のふくちゃんを引き連れて謝罪会見を始めるコマネ、目をパチクリさせてキョロキョロと会場を見回しては記者をジッと見るふくちゃん。記者からの鋭い質問にたじろぐコマネを遮り、「問題ないんじゃない?」と諭すふくちゃん。それに「確かに」と納得するコマネを制す記者を「何?」と言わんばかりの表情でじっと見つめるコマネとふくちゃんの姿。この一連の流れで、「腹話術とは何たるか」という概念を考えてしまった。腹話術とは、当然腹話術師の意思で人形を動かす芸であり、その技術で本当に生きているかのように錯覚させる演芸である。しかし、会見という緊迫した現場においてこの人形の存在は極めて異質である。反省の意を見せなければいけない場で腹話術を行うという行為は視覚とは裏腹に途轍もなく狂気的で、本来とは違う意味で「本当に生きている」と自らの脳を騙してしまう。しかし当然ふくちゃんはコマネの意思で動く人形だ。なのに、その場ではまるで謝罪する当人とそれを擁護する第三者のような構図が出来上がってしまっている。上田さんの持つ幼気でしかしどこか反抗的な態度を孕むようなあの表情が余計にそうさせる。だから無表情な人形との表情のリンクも諧謔的に感じる。上田さんの技術もあって、その後のふくちゃんがうつらうつらと睡魔に襲われるもビクッと起きる所謂ジャーキング現象からの辺りを見回す光景はとても面白かった。ふくちゃんは厳しい目を向ける記者に段々と怒りの感情を抱き始め、謝罪しようとするコマネを遮る。そして、ゆっくりと記者の方へと首を向けるのだ。無表情で滑稽な人形の顔が一気に物恐ろしく感じる、と同時に笑うしかない自分がいる。足を組み汚い言葉を記者に浴びせるふくちゃん、思わず記者も立ち上がるが軽々しく制されてしまう。小さな人形に妙な畏怖の念を抱いてしまい、思わずたじろがされてしまうその不条理で滑稽な状況を見れば、あれだけの爆笑が起きて当然だ。そして全てが馬鹿らしくなり引退を申し出るふくちゃんは、コマネに「ありがとう」と言い残しゆっくりと目を閉じる。大声でふくちゃんの名前を叫ぶコマネ、しかしぐうぐうと寝息を立てるふくちゃんに「って寝てんのかよ!」と笑顔でツッコむ。呆れて帰ってしまう記者、コマネとふくちゃんは一体誰に対してか「ばいば~い」と締め括るのだった。改めて書くがふくちゃんは人形だ。腹話術師のコマネモリオが、自分の意思で動かしている人形だ。無意識のうちに動かしてるわけもなく、全ての会話は自作自演でコマネの意識下で行われている。謝罪する腹話術師と、それを宥め記者を窘める人形…もしこんな会見があれば言語道断だろう。しかし、謝罪会見を行う人間の心理の中には、記者の目の前で頭を下げる自分を俯瞰で見て「そんなに謝らなくていいよ」と語り掛ける誰かが居るのではないだろうか?家庭問題であり他人に謝る必要はないとも言える不倫行為の発覚で本当に心の底から謝罪しているだろうか?このコントでの人形のように具現化されていないだけで、どんな人間の心にも自分を宥める存在があるのだと思う。そういう意味では、ふくちゃんの発言は全てコマネの無意識下で表れたものだったのかも…いや、きっと違うな。とにかく、腹話術師が人形を同席させて会見を行う姿は視覚的にもコミカルで、且つ考えれば考えるほどに奥が深いものだった。個人的には今大会の発想力ダントツトップ。会場のウケも十分だったので、もう少し点数が伸びても良かったように感じた…。
わらふぢなるお【バンジー】…438点(ファーストステージ9位)
恋人にフラれた失意から、バンジージャンプに挑戦する斉藤志郎という男(なるお)。しかしバンジージャンプのインストラクター(ふぢわら)は彼の心をかき乱し、彼の目の前でとんでもない行動に出る…。
このコントも準々決勝の頃から噂されていたネタで、準決勝が終わると「後半途轍もなく爆発するネタ」とゾフィー以上に注目されたネタだ。しかし残念ながら結果は空気階段と同率9位の最下位に沈む。10番目という順番のせいだろうか、明らかに観客の集中力も審査員の集中力も途切れていた。「そんなんで飛んだら死んじゃいますよ」というふぢわらさんらしい狂いに狂った鋭いボケはある程度ウケていたように感じたが、その後の単発の小ボケでどんどん会場の空気が冷えて行っている感じが怖かった。名前のくだりとか凄く魅力的なんだけど。「下の名前無いんすか?」は、去年の空質問にも通ずるような「そんな訳ないだろ」と苛立たされる良いボケだ。本人の悪気のなさそうな出で立ちも良い。そして、噂通り後半バチバチに面白くなっていく。何度も挑むが怖くて飛べない男の前で、「こんなの簡単だ」と紐を手で持ってそのまま平然と飛び降りていくインストラクター。あまりにも狂気的な姿に腰を抜かす男だったが、何食わぬ顔でびよーんと平然と戻ってくるインストラクター。これだけでも十分狂っているのだが、次はなんと紐を先に投げて後から飛び降りていく。「無理そうだなこれ」と言いながら飛び降りていくその姿は、「死」という大いなるイメージを多分に窺わせる。これでもまだ終わらない。今度は「投げて投げて」と言い残し紐を投げる事なく身一つで先に飛び降りてしまう。自分の生死を今さっき会ったばかりの客に委ねるというその行為、「走馬灯が見たい」という彼の言い分は異常なまでに倒錯的でドロドロとした禍々しいオーラに包まれている。オーソドックスなコントの展開に突然織り込まれる狂気的な笑いには感服した。準決勝で爆発したのも頷けるコントだったが、とにかく順番に恵まれなかったとしか言いようがない。ただ、観客は百歩譲って審査員の集中力が切れるというのは笑い事では済まされない事態である。
◆ファイナルステージ◆
ジャルジャル【空き巣】…448点(ファイナルステージ3位)・合計得点…905点(全体3位)
留守の筈の家への侵入を企てる空き巣(後藤)。しかし住人(福徳)と鉢合わせしてしまい、空き巣は“テルシマの友達”という架空の存在を装う。しかしテルシマは実在し、空き巣は中学時代の旧友ショウハラと勘違いされ…。
ここまで5分の中で二転三転するコントがあるだろうか。前半は“友達で押し通す空き巣の奴”。中盤は“空き巣を友達と勘違いする奴”。そしてラストは…。まず、前半はこの時間は留守にしている筈と侵入した家で不運にも住人と鉢合わせてしまった空き巣が、焦りをグッとこらえ平静を装い一気に距離を詰め友達を装う。テルシマという適当な名前を見繕い、あたかも本当に友達かのように平然とくつろぎ始める。しかし偶然にもテルシマという人物は存在し、適当に話を合わせているうちに空き巣は中学時代の旧友ショウハラという人物という事になっていく。中学時代の先生の名前、あだ名の話を誤魔化し誤魔化しで切り抜け、話題は中学時代の頃よくやっていたギャグの話に。腹を括りギャグを披露すると、天文学的な可能性を手繰り寄せ奇跡的にショウハラのギャグと一致し切り抜ける。あまりにも偶然が続き、卒業アルバムに自分とそっくりなショウハラという男の姿があるのを知るとその不気味さに段々怖くなってくる空き巣の心情表現がとても素敵だ。とうとうテルシマへの電話まで奇跡的に切り抜けてしまい、このまま後戻りできなくなるのを恐れ真実を白状しようとする空き巣だが、住人は「実は今日ショウハラの誕生日でサプライズパーティーを企てていた」と言い放ち部屋の電気を消す。ここで物語はそれまでのスリリングながらポップに描かれていた様相を一変させる。暗闇の中とうとう自分が泥棒である事を打ち明ける空き巣であったが、住人の「ハッピーバースデー」の声は徐々に闇に吸い込まれていくかのように低くなっていき、明確な妖気を放ち始める。ぱっ、と明転する。そこには先程まであった家財道具や観葉植物と言ったインテリアは無く、住人の姿も無い。薄暗い中に、空き巣の姿だけが一つ。「空き家…?」という声が空しく響く。「…アカン、これは理解でけへんわ」と言い残しうなだれてしまう空き巣の姿を残し、コントは終わりを告げる。突然の誕生日オチ・幻覚オチのようなものは賛否両論あると思う。かくいう自分も、初見時は一瞬「え、こういうオチ?」と思った。しかし、観た後にずっと脳内にこのコントのオチの印象が残り続ける。それまでのジャルジャルらしい狂気的ながらポップな空間が、狂気その物を帯びた空間に姿を変えた。ジャルジャルがこういう展開をやるイメージは無かったが、ジャルジャルは“やりたいネタをやる”人達だから、きっと彼らなりの新天地だったんだろうなと納得。さて、準決勝の2ネタと全く異なる2ネタを披露したジャルジャルだったが、敗退後に福徳さんの口から足の小指の骨折(実家で椅子に足をぶつけた)が告げられる。準決勝でのネタの一つが走るネタだったのは知っていたので納得。
うるとらブギーズ【サッカー実況】…463点(ファイナステージ1位)・合計得点…925点(全体2位)
サッカー日本vsサウジアラビア戦の試合を実況するアナウンサー(八木)と解説の元サッカー選手(佐々木)。二人が楽しそうに会話をしているうちに、プレイは進んでしまい…。
まず、一本目との変わり様が凄い。二人とも地味な見た目なのが功を奏し、一本目での少し胡散臭い雰囲気の催眠術師と挙動不審で奇妙な人物とは打って変わって実況・解説に溶け込む二人。他のコントでもそうだけど、どんなシチュエーションにも溶け込む百面相ぶりよ。序盤は実況・解説をそつなくこなしていく二人だが、ジャコッペ監督の解説で話題は徐々に逸れていき、意識の矛先がズレていく。そうして二人で笑い合っているうちに試合は幕を開けており、慌てつつも冷静な態度を取り戻し「キックオフしてました、見逃しました」とフォローを入れるアナウンサー。現実にも起こりうる滑稽さがたまらない。話は解説・佐々木の現役時代のサウジ戦の話題に。しかしここでも話は脱線し、二人でじゃれ合うかのようにくだらない話をしているうちに日本が先制点を獲得し、慌てて「ゴール!」とけたたましく叫ぶのだった。自国のゴールを見逃すという痛恨の大失態を犯す二人だったが、反省はしているが学習能力は無いのかサウジのスターティングメンバー確認中に「頭文字を縦読みするとオハヨウになる」というしょうもない話題に夢中になる二人。そうこうしているうちに二点目を決める日本。「喜び方横一線ですか」という実況が馬鹿馬鹿しすぎて最高だ。リプレイを見返してみると、なんとGKのカンバヤシが得点を入れていたことが判明。しょうもないトークをしているうちに歴史的瞬間を生で見逃す二人。しかしそれでも懲りないのか、点が入っていないのに「ゴール!」と叫んでアナウンサーをビックリさせて楽しむ解説だったが、サウジの攻撃が目に入る。そしてそのままサウジに一点を許してしまう日本。にもかかわらずゴールが生で見れた事に喜ぶ本末転倒な実況・解説。しかし結局オフサイド判定で凹む二人だった。さて、うるブギの特徴として「持続する笑い」というのがある。彼らの名コントに「迷子センター」というのがある。思い出し笑いを題材にしたコントで、笑いが途切れることなく持続し続ける強ネタだ。その特徴は一本目もそうだったし、このネタもそうだったと思う。ただ、一本目よりは笑いは落ち着いたように感じた。とはいえ、現ルールでトップバッターが準優勝という快挙は称賛に値する。素晴らしかった。
どぶろっく【樵夫と神様】…455点(ファイナルステージ2位)・合計得点…935点(全体1位)
木を切っていた樵夫(森)は、手を滑らせ斧を水辺に落としてしまう。するとそこに神様(江口)が現れ、金の斧と銀の斧のどちらかを授けようとする。正直に落とした鉄の斧を所望する樵夫だったが、神様の答えは…。
一本目と配役をチェンジしての天丼という、にゃんこスターとは違った新たなスタイル。「大きなイチモツをください」と高らかに歌った一本目とは対照的に、「大きなイチモツを授けよう」と高らかに歌うこのネタ。ただ、所詮ファーストインパクト重視の天丼には過ぎず、最初のサビ以降はやや平坦なウケ。結局「大きなイチモツをください」と頼み込む樵夫のくだりで少し盛り返したような感じはしたが、圧倒的1位だったファーストステージとは異なりファイナルステージ2位という結果を見ても文句なくウケ切ったとは言い難い結果となった。とはいえ堅実に点数を獲得し、一本目の貯金でそのまま逃げ切り優勝。正直、優勝した時は2017年ににゃんこスターが優勝してしまった世界線のような「面白いんだけど、ちょっと違うな…」という感情を抱いてしまった。ただ、「見積もりを出してください」という大サビのワードには中々唸らされたのも事実。大体、あのメロディが未だに耳にこびり付いて離れない時点で大成功。まさにスーパー3助の「頭から離れない!」状態だ。全体的なウケ量を考えても優勝には何の文句も無いが、少しだけ審査の方針を考えさせられるキッカケにはなった。
◆総評◆
お笑い第七世代の進出など、お笑い界にも新風が吹き荒れる令和の時代。去年はR-1の濱田祐太郎、KOCのハナコ、M-1の霜降り明星と、若きスターが生まれる年となった。そして霜降り明星優勝の流れを受け継ぐようにR-1を粗品が獲り、今年もその波が続くように思えていた。しかし結果的に、今年のKOCはファイナルステージ3組を全て30代半ば~40代前半の中堅芸人が占める事となり、第七世代と呼ばれる芸人達は苦渋を味わう結果となった。
ただ、今年のファーストステージは例年以上にレベルの高いものとなり、正直「全員優勝!」と言ってしまいたくなるぐらいの面白さだった。トップバッターの準優勝、過去最高点480点、初の決選投票など中々波乱の多い展開となった。
ここで、コント以外で幾つか好きだったシーンを書いてみる。
・空気階段・水川かたまりの敗者コメント
ビスブラの点数が出る前に「敗者コメントを考えた」と宣言するかたまりさん。敗退するや否やいつも以上に瞬きの量も多くなり挙動不審気味になるかたまりさんを他所に、もぐらさんが敗者コメントを答えるのだが、先程の発言を拾われコメントを問われるかたまりさん。そこでかたまりさんはあまりにも純粋に「お笑いのある世界に生まれてきてよかったです」と答えるので、思わず笑ってしまった。そしてそれまでの瞬きもすっかり病み、まるで「何がおかしいのか」と問いかけるような眼差しでカメラをじっと見つめるかたまりさんの姿。空気階段を知ってる人なら、もぐらさん以上にヤバいのはかたまりさんというのは常識に等しいと思うのだけど、その片鱗がこの舞台で少しでも顔をのぞかせたのはとても良かった。
・敗退後のわらふぢなるおの居様
けたたましく響くなるおさんの「やっちゃった!」が最高だった。惜しくも10組目で最下位となったわらふぢなるおだったけど、そんな二人を他所に3位タイという状況を打破するための決選投票ルールが行われる。何故か二人にハケる指示は出ず、「せっかくいるんで僕らも」とボケるふぢわらさん。そしてジャルジャル進出の結果が発表され(このシーンでGAGの脱落に顔を塞ぐお客さんがいたりしてちょっと来るものがある)、ファイナルステージの説明に。しかし何故かまだいる二人。思わず「いつまで居るんすか僕ら!?何これ!?」と戸惑いながら叫ぶなるおさんにとても笑った。わらふぢなるおの平場が好きだ。
・設楽さんのかが屋コント評
前述の通り、どぶろっく→かが屋の流れで多くの審査員は10点近くの減点を行っている中、設楽さんのみが93点→94点と1点の加点を行っており、単独1位評価を受ける。見返してみると、点数が出た際に「あ~設楽は好きやろな」とつぶやく松本さんの姿が見て取れた。「決まった時間で蛍の光をかけて時間軸を分からせるのを説明してないってのは相当高等な技術なんですけど」という論評はコントの審査員としては非常に簡潔且つ分かりやすいもので、改めて設楽さんを信頼してしまった。それでいて、だからこその爆発力の無さを指摘しかが屋の今後に繋げる良いコメントだった。本当に救われた。
・ファイナリストまさかの2人も骨折
ネルソンズ青山さんのTBS番組収録中の骨折はニュースにもなったので知っている人は少なくはなく、浜田さんが腕を引っ張ろうとするイジりや設楽さんのコメントでサラッと触れた。しかし、ジャルジャル福徳さんの骨折に関してはプライベートでの事のため報道は無く、準決勝と違うコントを披露したと発覚した際には違反だと囃し立てられることとなる(かくいう自分も疑問を感じた)。しかし、「足を悪そうにして歩いていた」というTwitter上の情報や、浜田さんが足を踏もうとするくだりなどがあり、なんとなく察する事が出来た。見返すと、一本目終了後に福徳さんがよろけて「お前足骨折して…」と小声で浜田さんに言われているのが分かる。青山さんは右肩だったのに対し、福徳さんは足の小指とあって、準決勝のネタを変更せざるを得なかった。ただ、こういう例外を作ってしまった以上やはりこのルールはダメだなと思ったので早急に改善を求める。「折れてなかったら(二本目のラスト)おったの?」と問いかける松本さんに同調し、「ホンマじゃ!」と返す福徳さんは良かったな。
その他、ビスブラ原田さんの「点数的に人生変わらなさそう」「元ひくっ!」といったコメント、どぶろっく江口さんの「喉スプレー」は笑った。あと、GAG宮戸さんが身に着けたブラジャーを披露するシーンで引かれずにちゃんと笑いが起きていてなんか感動した。その後の坂本さんの「キングオブ昆布」は最高にバカ滑っていたのでそれはそれで安心した。
個人的なファーストステージのトップ3はかが屋・GAG・ゾフィー。純粋に笑った量では若干前後したりするんだけど、この3組が個人的にはとびぬけているように感じた。空気階段とジャルジャルも良かった。
その中で言うとジャルジャルは2本目を見れたので満足だが、その他は惜しくも3組に残れなかったので残念。特に決選投票までこぎつけたGAG、大爆発を起こしたゾフィーは2017年までのルールなら2本目を披露することができたのを考えると惜しい。因みに去年もさらば青春の光とロビンフットがルール改訂により2本目を披露する事が出来ず、自分としては中々惜しい思いをした。全組5分見れるのは嬉しいけども。
前述の通り、どぶろっくの優勝には何の文句も無い。二本目は少し失速気味な傾向にあったが、一本目の勢いを見れば非の打ち所がない優勝だろう。今後は、かが屋や空気階段といった若い発想のユニット達が今回の評価を受けてどのような進化を遂げていくのかが楽しみであり少し不安でもある。絶対に、自分達のスタイルを曲げるのだけはやめてほしいと思っている。決勝での評価を受け、スタイルを変えてしまった結果路頭に迷ってしまった芸人達を何組か知っているので…是非とも、自分達のスタイルを貫きながらコントを磨いていってほしい。極論、賞レースの評価だけが全てではないので、そのまま突き進んでいってほしい。
とにかく、今年は全組面白かった!いやそれは毎年そうなんだけど、今年は例年のようにスベった組もおらず、且つ最下位も10位ではなく9位タイというある意味平和な結末となった。去年から継続され今年も大不評だったシークレットルール、準決勝2本固定ルール等は早急に改善を求める。もう少し多種多様な視点の審査員の増員も出来れば…。