一時保護対応の実際 | 虐待を疑われて子供を一時保護された夫婦の話
はじめに
こどもたちが保護されるまで、児童相談所や一時保護というものは私たちの人生に無縁のものだと思っていました。当時は制度や機能についての知識もなかったのですが、調べれば調べるほど「一時保護」の対応について明確な規定がなく、主観的・独断的な判断で決行されてしまう印象を受けました。
なお、この執筆時点でまだ子どもたちは一時保護中です。
記事の概要
今回の記事では、子どもたちの一時保護後、私たち夫婦の場合は実際どのような対応をされたのかをご紹介します。
※私たちが経験したことを共有する趣旨で執筆していますので、児相に対する批判をするものではありません。
この記事を読んでほしい方
私たちと同じような経験をしている方の焦りや不安等を少しでも緩和できればという想いで記事を書いています。
まこととすずの場合
前回の記事で、一時保護の制度についてまとめました。
この中でも言及しましたが、「本当に、資料に書いてあることを守ってくれるの?2ヶ月で進めてくれるの?」という不安がありました。
同時に、調べれば調べるほど、児童相談所(長)に与えられている力の強さを実感しました。
・一時保護の延長はあった?
結論からお話しすると、延長はありました。
私たちの目標は、とにかく早く子どもたちを取り戻すこと。
そのためにできることは辛いことでもなんでもする覚悟で、かなりのスピード感をもって、初回の面接から戦略的に対応しました。
事前に調べた情報で、感情的な姿を見せてしまうと子どもが帰ってくるのがどんどん遅くなるということだったので、とにかく冷静に話すことを心がけていました。そして児相担当者から指示されるよりも先に改善策の提案書を作成し、弁護士にも確認をとりながら進めていました。
それでも、延長は避けられませんでした。
・面会はどれくらいできた?
次男が怪我で入院し、それだけでも心配で辛くて毎日涙が止まりませんでしたが、追い討ちをかけるように長男と次男が同時に一時保護されてしまいました。
私たち夫婦にとって、次男が入院中に精神面を支えてくれていたのは、他でもない長男の存在でした。そのため、一時保護された直後から、とにかく2人と面会したいということを児童相談所にはお伝えしていました。
しかし、長男に関しては「危険だから」、次男に関しては「一時保護場所を両親には伏せなければいけないから」という理由で断られ続けます。どちらも衝撃的で、言われた直後は固まってしまいました。
まず、長男に関しては何が危険なのか理解できませんでした。「虐待の疑いがあるから?でも面会の時は児童相談所の人も同席するだろうし、さすがにそんな人がいる目の前で虐待行為をする人なんていないのでは?」と。
これは後から調べたことですが、面会後そのまま連れ去ろうとしてしまう親がいるそうです。そういった意味で、ある程度私たちの人となりがわかるまでは面会をさせない方針だったようです。
また次男に関しては、一時保護された時点でまだ入院を継続していました。通常は一時保護所に子どもを連れてきて面会できるようなのですが、入院中は移動できず、場所を教えることもできないため面会はできないと言われてしまいました。
一時保護を言い渡された日は、次男が集中治療室から一般病棟に移れるという嬉しい知らせを受け取った日でもありました。
集中治療室では子どもを抱っこすることができないのですが、一般病棟では可能になるのでそれを楽しみにしていた矢先のことでした。
なお、次男に関しては退院した後も「乳児院から移動するのに体に負担がかかる」など、何かと理由をつけて面会制限をされていました。
結果、長男は保護後1.5ヶ月で初めての面会。次男は最初の2ヶ月の間で面談を組んでいたくことはできませんでした。
またネットで調べていても、面会頻度の平均値などはあまり示されていないように感じました。そこで、X(旧Twitter)で、フォロワーの皆様のご協力を得て、一時保護経験者の方にどれくらいの頻度だったか伺いました。
結果は次のとおりです。
親の希望としては、最低でも1週間に1回は会わせて欲しいところですが、1ヶ月に1回以下というのが現実のようです。2週間に1回会えている方は、頻度高めと捉えてよさそうですね。
児童相談所と関わるようになって感じたこと
・とにかく動きが遅い
一時保護が延長になった要因の一つだと思います。
児童相談所と関わるようになって、まず思ったのは「何をするにも動きが遅い」ということでした。
こちらとしてはとにかく子どもを返して欲しいので、必要な面接は毎週でも組んでいただきたいですし、調査もなんでも協力するつもりで動いていました。
保護直後の1回目の面接以降、2回目が組まれたのは保護から1ヶ月後。
また先ほども書いた通り、長男との面会は1.5ヶ月後で、さらに次男との面会は2ヶ月以内には組んでいただけませんでした。
ちなみに、先ほどの面会頻度と同様に児相との面接頻度もアンケートをとっています。
保護後2週間経った頃に経緯報告書及び改善提案書を提出していますが、その内容について正式にフィードバックをいただけたのは提出から1ヶ月後でした。
また、児相側から「◯◯を調べるためにこの資料をください。」と依頼されたことに対し、私たちはすぐに資料を用意してお渡ししました。
しかし、児相が実際にその資料を使って調査をしたのは、お渡ししてから10日も経った後でした。民間企業では考えられない遅さですね。
・驚くほどのアナログ文化
これはまこともすずも、IT系企業を経験しているせいもあるかもしれませんが、DXが進んでいないことに驚きました。
メールでのやり取りができず全て電話か手紙。
当然、作成した資料のデータを送ることもできないので、印刷した紙の資料をお渡ししました。
児相側でその資料を保管する方法は、二穴パンチでファイルで管理。
どうしても動画資料の提出が必要な場合はCD-R(USBどころか、DVD-Rですらない)で、と言われ、家電量販店を探し回りました。
文句を言っても仕方ないので、とにかく児相担当者が扱いやすいように、こちらが合わせて動くことを意識しましたが、ストレスは大きかったです。
・児相の人手が足りないというのは本当らしい
子どもを返してもらうために、できる限り早く進めたい。
そのために、事前準備が必要なものがあれば揃えておきたい。
そんな思いから、保護された直後は「今後どんなスケジュールで進むのか」を繰り返し確認しましたが、「予定が立ちません」「緊急対応があって…」という回答しか得られませんでした。
コミュニケーションを続けていると、どうやら児相担当の方は外出されていることが多いようです。また虐待の通告があった場合など、緊急対応で慌ただしくなることが多く、なかなか先の予定が立てられないとも言われました。
・とはいえ、その中で担当の方は頑張ってくれている
そんな忙しい中で、冷静な対応を続けていたら「私たちときちんと向き合ってくれている」と感じるようにもなりました。
保護された当初は、私たちの視点からすると、ありもしない虐待を疑われ、有無を言わさず次男を連れ去られてしまった。加えて、全く無関係の長男まで仮定に仮定を重ねて、根拠のないまま連れて行かれてしまったので、気持ちとしては誘拐に遭ったようなものでした。
「お宅の子どもは預かった。生きているが場所は教えない。返して欲しければ虐待を認めろ。」と、こんな感じです。
当然、対等に話を聞いてくれるわけではないので、私たちの今までの育児や人格を全否定されたように感じることもありました。面接する中で、実際に酷い言葉もたくさん浴びせられました。(この詳細はまた後日改めて書けたらと思います。)
ただ、振り返るとそれは、担当者に悪意あってのものというよりは、児相内で定められているフローのような気もします。(あくまで個人的な印象ですが。)親を感情的にさせて、人柄を見るよう定められているのではないかと感じました。
もしそうだとしたら、児童相談所の担当者の方のお仕事は辛いものだと思いますし、場合によっては恐怖を感じることも多いのではないでしょうか。そんな中で、私たちと向き合っている姿を見ると、立場がある中で頑張ってくれているんだな、というのはわかります。
・子どもたちと離れている時間は返ってこない
とはいえ、まだ生まれたばかりの赤ちゃんと、言葉を覚え始めた2歳の子どもが、親と離れて過ごすデメリットは大きいと思います。
「原則2ヶ月」という期間であっても、それは親にとっても子どもにとっても長すぎる時間です。まして一時保護の期間を延長するというのは、やむをえない場合を除いて避けられるべきだと思います。
子どもへの負担を減らして、最速で解決する流れを作るためにも、「先のことはわからない」「スケジュールが決められない」とお役所らしくゆっくり進めていくのではなく、2ヶ月に収まるようなスケジュールを逆算し、そのスケジュールの中で何をする必要があるのか、それにはどれくらいの時間が必要なのか事前に説明できるような制度になってくれるといいなと思います。
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