UCIワールドカップ2021-2022 第13戦「フルスト」
シクロクロス3大シリーズ戦の1つ「UCIワールドカップ」の第13戦が、1/2(日)にオランダ・ゼーラント州の街フルストを舞台に開催された。
城塞を利用したアップダウンの激しいコースで、とくに壁のようにそそり立つ坂を登るセクションはあっという間に体力を奪っていく。
その一方で泥セクションなどもなく、全体的な乗車率は非常に高く、1周も3㎞に満たないショートコースのため、平均速度は非常に高いハイスピード展開となった。
女子レース
全部で6周(16.87㎞)。最序盤はマリアンヌ・フォス(ユンボ・ヴィスマ)が先頭を走るが、途中で落車。後続もこれに引っかかって足止めを食らうが、この隙に上手く先頭に抜け出したのがパック・ピーテルス(アルペシン・フェニックス、20歳)。
さらにこの後ろにハンガリーの若手カタ・ヴァス(SDワークス、21歳)にシリン・ファンローイ(バロワーズ・トレック・ライオンズ、20歳)と、非常に若いメンバーが連なる。
このまま、この日は「下剋上」の一日になるのか――と思っていたが。
3周目終了時点で2位ヴァスに15秒差をつけていたピーテルスが、4周目終了時点では8秒差に。
さらに5周目に入るとさらにペースが落ち、逆に後半にかけてペースを上げてきた世界王者ルシンダ・ブラント(バロワーズ・トレック・ライオンズ)についに追い付かれる。
そしてこのあとは、ブラントの独壇場であった。
直近2回のワールドカップでも勝利しているブラントは、これで3連勝目。ワールドカップ以外を含めると6レース連勝と、今年も圧倒的な強さを見せる形となった。
ワールドカップは残り2戦。今日ベッツェマが7位フィニッシュで全くポイントを取れなかったこともあり、ブラントと彼女とのポイント差は60ポイント。1回のレースで最大40ポイントしか獲れないことを考えると、ブラントがこのまま今年も総合優勝する可能性はかなり高くなったと言えるだろう。
同様にU23カテゴリではピーテルスがファンエンペルとのポイント差を広げ、40ポイント差に。
こちらも大勢が決しつつあるようだ。
男子レース
男子レースは全部で9周(25.27㎞)。
今シーズンここまで負けなしの快進撃を続けてきたワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ)だったが、この日は1周目からいきなりチェーンを落とし、大幅なタイムロス。
1周目終了時点で先頭集団とのタイム差が44秒差の29位。前日もラスト2.5周でトラブルに見舞われながらも逆転できていたファンアールトだったが、この日は序盤の大渋滞に巻き込まれてしまったので、本来の彼のペースで進んでいくことが困難な状態。さすがに難しいか!?
先頭はワールドカップ総合首位のエリ・イゼルビット(パウェルス・サウゼン・ビンゴール)とヨーロッパ王者のラース・ファンデルハール(バロワーズ・トレック・ライオンズ)。そこにクエンティン・ヘルマンス(トルマンス・シクロクロスチーム)とトム・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)が食らいつき、3周目の途中には4名が先頭に。
その頃にはファンアールトも37秒差の18位にまで順位を上げてきて、いよいよ周囲に人がいなくなってきたことで、ペースも上がってきた。
これはもしかしたら? と思っていた中で、先頭パックからピドコックとイゼルビットが抜け出す。
さらに4周目に入るとそこからピドコックが独走態勢に入った。
ファンアールトはさらに加速し、4番手集団のトーン・アールツ(バロワーズ・トレック・ライオンズ)、マイケル・ファントーレンハウト(パウェルス・サウゼン・ビンゴール)、ヘルマンスたちとのタイム差を徐々に縮めていき、最終的には単独4番手に上がったアールツを8周目でキャッチ。これも追い抜いて最終週にはファンアールト自身が単独4番手となった。
だが、先を行くピドコックはそれ以上のペースで先頭を突き進み、最終的にはファンアールトから1分以上のリードを保って独走勝利。
今期ここまでファンアールトにも阻まれ中々勝利を掴めなかった彼も、(ファンアールトのいなかった)ルクフェン以来の今期2勝目。
ファンアールトのミスを受けての勝利とはいえ、イゼルビットとの差も見せつける、強い勝利であった。
負傷していたファンデルハールも今日は好調さを見せており、マチュー・ファンデルプールが危機的な状況にある中、世界選手権オランダを背負う存在として、何とか万全の状況を保っていきたいところ。
総合リザルトは以下の通り。
本日もアールツに差をつけたイゼルビット。100ポイント近いポイント差を2位以下につけていることで、この時点でイゼルビットのワールドカップ制覇が確定した。
過去2年のX2Oバドカマー・トロフェーを総合優勝しているイゼルビットだが、ワールドカップを制するのはこれが初めて。
あとは同様に総合首位を保っているスーパープレステージュと、さらには総合2位でギリギリの戦いを演じているX2Oバドカマー・トロフェーとを制覇し、3大シリーズ戦全制覇を成し遂げられるか。
いよいよ今年のシクロクロスも終盤戦へと突入していく。