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UAEツアー2022 第4ステージ
第3ステージはこちらから。
今年最初のワールドツアー、UAEツアーがいよいよ開幕。タデイ・ポガチャル、アダム・イェーツ、アレクサンドル・ウラソフ、マーク・カヴェンディッシュ、サム・ベネット、ディラン・フルーネウェーヘンなど、世界トップライダーたちが集まる豪華な7日間。
第4ステージはいよいよ今大会最初の山頂フィニッシュ、ジュベル・ジャイス。昨年はツール・ド・フランス総合2位のヨナス・ヴィンゲゴーが最後飛び出して独走勝利を果たした登坂距離21.1㎞・平均勾配5.4%のひたすら長い登り。
今年最初のワールドツアーレースにおける最初の山頂フィニッシュ。グランツールの行方を占う重要な一戦だ。
逃げは2名。
ルカ・ラステリ(バルディアーニCSF・ファイザネ)
ヤコブ・イーホルム(トレック・セガフレード)
ラステリは第1ステージでも逃げていた選手。最大で7分近いタイム差をつけた2名は、最初の中間スプリントポイント(残り137㎞地点)ではイーホルムが、2つ目の中間スプリントポイント(残り40㎞地点)ではラステリが先頭通過を果たす。
そして3位通過(3ポイント)を狙った集団の先頭はそれぞれジャスパー・フィリプセン(UAEチーム・エミレーツ)が獲得し、ポイント賞でのリードを広げることに成功した(43ポイント。2位のストラーコフは33ポイント)。
そして残り22㎞。いよいよ登りが始まる。しばらくは平坦区間同様、現在総合リーダージャージを着用するシュテファン・ビッセガー率いるEFエデュケーション・イージーポストが集団牽引を担い、残り16.5㎞で逃げ2人を吸収する。
そして残り15㎞。いよいよUAEチーム・エミレーツが牽引を開始する。まずは前日の個人TTでも強さを見せていたTTスペシャリストのミッケル・ビョーグ。そして残り12.1㎞からはジョージ・ベネットが先頭交代し、いよいよ本格的なペースアップを開始する。
ミハウ・クフィアトコフスキなどを含む重要な選手も次々と脱落していき、残り9.2㎞時点で集団の数は35~40名程度に。
そして残り8.5㎞。いよいよベネットが仕事を終えると、集団から同じUAEチーム・エミレーツのラファウ・マイカがアタック。
さらにこれをボーラ・ハンスグローエのジェイ・ヒンドリーが引き戻すと、残り7.8㎞で今度はエースのタデイ・ポガチャルがアタックしてアレクサンドル・ウラソフとアダム・イェーツが反応するなど、最前線ではいよいよ動きが活発化し始める。
そしてこの一連の動きの中で、集団の後方からはトム・デュムランが脱落。
今年、ジロ・デ・イタリアにて久々の総合エースを担うことも計画に入っていたはずだが・・・この失速はその目論見の失敗を意味するのか、それともまだたまたまこの日は足がなかっただけなのか。
残り7.1㎞。集団からアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオの選手が一人アタックする。
レイン・ターラマエ。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで5年ぶりのワールドツアー勝利を挙げ、マイヨ・ロホも着用したエストニア人。
そこにユンボ・ヴィズマのクリス・ハーパー、EFエデュケーション・イージーポストのルーベン・ゲレイロ、チームDSMのアンドレアス・レクネスンド、バーレーン・ヴィクトリアスのジーノ・マーダー、そしてラファウ・マイカがついていき、先頭は6名。
25名程度にまで絞り込まれたメイン集団では、先頭に選手を送り込めなかったイネオス・グレナディアーズのルーク・プラップが牽引。
昨年のツアー・ダウンアンダー代替レースでウィランガ・ヒルにて活躍したオーストラリアの次世代の最高の才能。本格的な山岳における実力は未知数ではあったが、この日はしっかりと、アダム・イェーツを守護する最高峰の山岳アシストとしてしっかりと機能しているようだ。
残り4.3㎞。プラップの牽引によって抜け出した6名は引き戻される。
残り3.9㎞でクリス・ハーパーが再びアタックするが、これもマイカとプラップが反応しすぐに引き戻される。
そして残り3.2㎞。
先ほどアタックしたターラマエが、今度はチームのエースであり先日のツアー・オブ・オマーンでも総合優勝した絶好調のヤン・ヒルトのために先頭牽引。
残り2.9㎞でターラマエが脱落し、同時にアタックしたヒルトにポガチャルらが食らいつき、ヒルト、ポガチャル、アダム・イェーツ、ウラソフ、ロマン・バルデ、ペリョ・ビルバオ、そしてプラップの7名が抜け出す。
ここにプラップがいることが本当に凄い・・・。
アスタナ・カザフスタンチームでジロ・デ・イタリアのエース候補でもあるダビ・デラクルスが脱落していく中、残り1.7㎞でまたヒルト、次いでウラソフなどが加速していくが、ポガチャルはしっかりとこれらを抑え込み、逃がさない。後続集団の先頭もジョアン・アルメイダが牽引し、UAEチーム・エミレーツが全体のコントロールに務める。
そして残り1.3㎞。結局抜け出した7名もすべて引き戻され、先頭集団は1つに。
フラム・ルージュを越えて、アルメイダ、マイカ、ポガチャルとトレインを組んだUAEチーム・エミレーツ。このまま、完封勝利で終わるか。
だが、このUAE支配に反旗を翻す若者がいた。
残り600m。後方から飛び出してアタックを仕掛けるルーク・プラップ。この男、本当何者なんだ!
下手したら突き抜けかねないプラップを、アルメイダが集団先頭を牽いて全力で追いかける。結局プラップは捕まえられるが、この動きによってアルメイダは脱落。ポガチャルとダブルエースを組みかねないアルメイダに秒を失わせるという、アダム・イェーツのための十分な働きを、プラップはしてみせた。
何しろ昨日、自身も優勝候補であるはずの個人タイムトライアルをノーマルバイクで挑み、今日のアシストのために完全な体力温存をしてみせていた男。
ルーク・プラップ。最強のアシストとしての物語が、今始まったのかもしれない。
とはいえ、最後はやはりこの男が強かった。
団子のままフィニッシュを迎えたメイン集団。その先頭で、さすがのスプリント力を見せてアダム・イェーツ、アレクサンドル・ウラソフを振り切ったのはタデイ・ポガチャル。
新型コロナウィルス罹患の影響が危ぶまれていた男は、前日の個人TTに続き、全く問題がないことを証明するかのような、鮮烈な勝利を飾って見せた。
Report: @TamauPogi soars to victory on Jebel Jais. #UAETour 🇦🇪
— @UAE-TeamEmirates (@TeamEmiratesUAE) February 23, 2022
💬 Pogačar: “I always like to win, having succeeded makes this day beautiful for me and for the team.”
📝 https://t.co/MTAKyDclFu#UAETeamEmirates #WeAreUAE pic.twitter.com/irW7SfTqiQ
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なお、この日を終えた時点での総合順位は以下の通り。
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集団の中でまさかの生き残りを果たしていたガンナが2秒差で総合2位にギリギリ貼りついているのが驚き。とはいえさすがに最終ステージの登りでは、さらにタイムを失うことにはなるだろう。
ポガチャルも強かったとはいえ、昨日のTTも本来の実力であれば勝ってもおかしくはなかったし、今日も途中でアタック→独走でいけるはずのところがそうではなかったという点で万全ではないのは確か。
最終日のジャベルハフィート頂上決戦で、この結果がどうなっているのか、まだまだ予断は許さない。
明日から2日間は再び集団スプリントステージ。
ここまでジャスパー・フィリプセンとマーク・カヴェンディッシュが1勝1敗。最強スプリンター決戦の行方も、非常に気になるところである。