クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2022 第3ステージ
サン=ポーリアンからオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏の西の端、ピュイ=ド=ドーム県に位置するシャストレの村へと続く169㎞。最後はその奥にあるスキー場へと至る、今大会最初の登りフィニッシュである。
最初の逃げは3名。
ヨナス・グレゴー(Uno-Xプロサイクリング・チーム)
トーマス・シャンピオン(コフィディス)
セバスティアン・ショーンベルガー(B&Bホテルス・KTM)
のちにピエール・ロラン、アレクシー・グジャール、ミゲル・ハイデマンの3名のB&Bホテルス・KTMの選手が追いついてきて、先頭は6名に。そのうち4名がB&Bということで、ロランの山岳賞を守るための(あるいはステージ優勝を支えるための)全力の体制を作っていた。
とはいえ、最初の3級山岳(残り126㎞地点)には間に合わず、ロランは残り34㎞地点の4級山岳の先頭通過による1ポイントしか稼げず。
この登りでチームメートもほとんど失い、最後はショーンベルガーとグレゴーの3名だけで終盤まで逃げ続けた。
ヨナス・グレゴーが最後まで粘り続けていたが、これも残り3.9㎞で吸収。そしてヨナス・ヴィンゲゴーを先頭にしたメイン集団が、一気に人数を減らしながら8%を超えるラスト3㎞からの最難関ポイントを突き進んでいく。ヴィンゲゴーの後ろにはテイオ・ゲイガンハート、ベン・オコーナー、アンドレア・バジョーリ、プリモシュ・ログリッチ、ワウト・ファンアールトといった形で精鋭集団が連なっている。
残り1.4㎞で昨年ツール総合4位オコーナーが加速。ファンアールトが集団の最後尾に落ち、代わりにログリッチが先頭でオコーナーを抑え込む。その背後にはエンリク・マスも。
ただ、直後にラスト1㎞からの平坦区間が訪れたことで、発火しそうだった総合勢による勝負は一旦お預け。ファンアールトもヴィンゲゴーに率いられて集団先頭復帰を果たす。
こうなれば、最後はファンアールトの圧倒的有利。最大のライバルのイーサン・ヘイターも今日はいないということで、圧倒的に余裕だろう——と思っていたが。
まさかの、最後の最後。先頭であまりの余裕と判断したのかラインを越えるまえに両手を挙げたファンアールト。
その脇から、しっかりとハンドルを投げたダヴィド・ゴデュの姿が。
笑顔がすぐさま絶望に移り変わったファンアールト。一世一代の、やっちまったガッツポーズの瞬間であった。
もちろん褒められるべきはゴデュの執念とスプリント力である。フィニッシュ前かなり番手を落としていたはずの彼がするすると選手の間を縫って前に出てきたことは凄い。これもよく生き残っていたケヴィン・ゲニッツが、長い手を振り上げながらチームメートの勝利を祝っていた姿も印象的であった。
2日続けての悔しさを、ファンアールトは第4ステージの「長距離平坦TT」で晴らすことはできるか。もちろん、最大の敵は世界王者フィリッポ・ガンナ。総合争いにも大きな影響を及ぼすステージとなるだろう。