UAEツアー2022 第5ステージ
第4ステージはこちらから。
今年最初のワールドツアー、UAEツアーがいよいよ開幕。タデイ・ポガチャル、アダム・イェーツ、アレクサンドル・ウラソフ、マーク・カヴェンディッシュ、サム・ベネット、ディラン・フルーネウェーヘンなど、世界トップライダーたちが集まる豪華な7日間。
第5ステージはUAE最北東端に位置するラアス・アル・ハイマ首長国の首都を巡る都市型平坦スプリントステージ。最後は珊瑚の形をした人工群島にフィニッシュし、2018年にはマーク・カヴェンディッシュ、昨年はサム・ベネットが勝利している。
全長182㎞。今大会3回目の集団スプリントを制する最強スプリンターは誰だ。
最初に形成された逃げは4名。今大会最もアグレッシブなプロチームであるガスプロム・ルスヴェロが、第2ステージと同じ面子の3名を今日も逃げに乗せた。
パヴェル・コヒェトコフ(ガスプロム・ルスヴェロ)
ミヒャエル・クークルレ(ガスプロム・ルスヴェロ)
ディミトリ・ストラーコフ(ガスプロム・ルスヴェロ)
アレッサンドロ・トネッリ(バルディアーニCSF・ファイザネ)
ただし、プロトンでも横風によるエシェロンが形成されるなど活性化し、ペースが上がったことにより一旦集団に吸収。
残り131㎞地点に用意された最初の中間スプリントポイントでは、プロトンの中からジャスパー・フィリプセンが飛び出して先頭通過。そして総合リーダーのタデイ・ポガチャルが2番手、総合3位のアレクサンドル・ウラソフが3番手で通過し、それぞれボーナスタイム2秒、1秒を獲得する。
そして新たに4名の逃げが形成される。最初の逃げのうち、コヒェトコフとストラーコフ、トネッリの3名はそのまま2回目の逃げにも同乗するが、クークルレの代わりにトネッリのチームメートのカニャベラルが乗ることに。
パヴェル・コヒェトコフ(ガスプロム・ルスヴェロ)
ディミトリ・ストラーコフ(ガスプロム・ルスヴェロ)
ジョナタン・カニャベラル(バルディアーニCSF・ファイザネ)
アレッサンドロ・トネッリ(バルディアーニCSF・ファイザネ)
この逃げはそのまま最大で4分近いタイム差にまで広げるが、しかしこれもまた、残り60㎞という早めの地点で吸収されることになる。
しばらく集団は一つのまま砂漠の中を駆け抜ける。
集団の先頭はアルペシン・フェニックスがたびたび牽引し、集団を縦に引き伸ばす。
集団は分裂しそうになるが・・・決定的なものは作られないまま、残り31㎞でミヒャエル・クークルレ(ガスプロム・ルスヴェロ)が再び、今度は単独で逃げに乗る。
集団は残り20㎞で2分半、残り10㎞で1分半と結構なギャップを許しながら追いかけるが、最終的にはスピードアップしたプロトンによって残り3㎞でクークルレは吸収される。
そして、今大会3度目の集団スプリント。
残り1㎞を切って、ルディ・バルビエのためのイスラエル・プレミアテックのトレインが先行して加速したため、各チーム、アシストを失いながらこれに何とか食らいついていく形に。
唯一と言っていいほどアシストを残していたのはボーラ・ハンスグローエ。今大会ここまで常に最高のアシストぶりを見せているダニー・ファンポッペルが、残り450mで先頭に躍り出て、そのまま残り200mに至るまで強烈な加速を見せる。
バルビエをリードアウトしていたリック・ツァベルもいとも簡単に追い抜かれ、バルビエはなんとかボーラ・トレインの後方に乗り換える。ファンポッペルの後ろにはサム・ベネット。その後ろにはジャスパー・フィリプセン。その後ろにバルビエ。フィリプセンと並んでオラフ・クーイ。その背後にガスプロム・ルスヴェロのマッテオ・マルチェッリ。
どのチームもアシストは残っていない。エリア・ヴィヴィアーニの前に一人いたが、彼はボーラ・トレインに並ぶ位置にまでヴィヴィアーニを引き上げることはできず、ただ単に彼がこの先頭の精鋭集団にかろうじて置いていかれないようにすることで精いっぱいであった。
それくらい、ファンポッペルのリードアウトは強烈であった。
だが、そんなファンポッペルも、さすがに先頭に出るのが早すぎた。残り200mで力尽き、ベネットがそこからスプリントを開始。進路を右にとってその背後にいたクーイの行く先を阻むが、代わりにフィリプセンの目の前には誰もいなくなる。
その距離からのスプリントでは、ベネットよりもずっとフィリプセンの方が有利であった。ベネットはもがくが、フィリプセンの速度とは雲泥の差。
やや遠回りしてフィリプセンの左手に出たクーイが追い上げを見せてベネットも追い抜いていくが、結局届くことはなかった。
ジャスパー・フィリプセン。ファンポッペルのリードアウトによる強烈な加速にも引き離されることなく落ち着いてベネットの後輪を捉え続け、そして残り200mからのややロングスプリントを力強く制した、昨年の最強スプリンター。
今年も彼は、絶好調なのか。そして今年こそツール・ド・フランスの勝利を手に入れることはできるか。
しかし本当に今大会、ダニー・ファンポッペルが強い。常に最強のアシストぶりを発揮してくれている。
実際、昨年の実績だけでいえば、ファンポッペルの方がサム・ベネットよりも上位に来ている。
ベネットのコンディションは正直ベストなものとは言えなさそうだし(ここまで力負けが多い)、一回ファンポッペルにエースを任せてみてもいいんじゃないかとすら思える。
ただ今回に関して言えば、あと1枚、アシストが残っていて、もう少しファンポッペルの前を牽くことができていれば、勝利にまで手が届いていたように思える。
ファンポッペルが今年完璧なアシストを演じられることがわかったので、あと1枚をどう手配していくか。ボーラ・ハンスグローエにとってはそれが今年の成功の鍵となるだろう。
一方、もう一人素晴らしい走りをしてみせたのがクーイ。ファンポッペルの強烈なリードアウトに落ち着いて食らいついていったフィリプセンの横に並びかけ、そのままベストなタイミングでスプリントを開始。
最後はベネットに前を遮られたことで一度足を止め遠回りせざるを得なかったが、それでもベネットを追い抜いて2位。あのまま遮るものなくスプリントを開始できていれば、もしかしたら先着で着ていたかもしれない。
実績だけで言えばトップスプリンターのヴィヴィアーニやデマール、アッカーマンもなかなか勝ち星を重ねられない中、意外な面子が上位に来ることも多い今年のUAEツアーのスプリントステージ。
明日はいよいよその最終決戦。意外な勝利はあるか?
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