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【週刊ユース分析】今改めて、県立大津高校を調査するぞ!!

ほぼ週一のペースで高校サッカーのチームを取り上げては、コツコツとまとめてきたこのnote。基本的には高体連チームより、クラブユースの方が多くのビュー数を示します。

しかし、

かつて私が書いたnoteの中で、高体連チームにも関わらず圧倒的なビュー数を示したチームがありました。記事をupした翌日にダッシュボードを見て2度見、いや3度見したほど。

それが他でもない。今回改めて取り上げる大津高校、2020年の記事でした。

このnoteは、約2年間書き溜めてきたおよそ140本の記事の中で堂々の第2位のビュー数を誇ります。
数あるクラブユース勢を押さえて高体連の中では圧倒的に多い!! (ちなみに1位は鳥栖U18)

なぜ大津は ”特別” なのか。

これについて、今回改めてまとめてみようと思います。
ぜひ彼らのチャレンジを、日本サッカーを愛する多くの人に知ってもらいたい。そんな思いで筆を執ります。



■特徴① 県立であること

U-18最高峰リーグである高円宮杯プレミアリーグには現在 東西12ずつ、計24のチームが所属している。名だたる強豪チームの中にあってEAST、WESTそれぞれに1チームずつ公立校が存在している。

EASTの市立船橋 そしてWESTの県立大津。

最近では高体連チームでさえ私学を中心に大金を投じて施設や遠征を充実させ、更にはクラブユースで言うところのジュニアユースに準ずる下部組織を持つことが当たり前となっている。
そんな中、公立という制約の中で同等の強度を保っているという事は実はものすごいことだと思う。

しかもその制約は、範囲の広い「県立」の方が圧倒的に厳しいことは言うまでもないだろう。
市船の場合は船橋市民(約62万人/12校)が対象なのに対し、大津は熊本県民(約175万人/50校)を納得させる存在でなくてはいけないからだ。
市立より県立の方が圧倒的に自由度が低いことは想像に難くない。

ザ・県立高の佇まい(笑)

かくいう私も(静岡の)県立高校の出身。

公立校の見た目ってマニュアルでもあるんですかね?正門を見ただけであぁ県立高だなとわかってしまうこの感じ。遥か遠い熊本にも関わらず既視感を覚えてしまった。

ちなみに私の母校には開けたら二度と閉まらなくなるから決して開けてはいけない窓が存在していた(笑)。おそらく創立100年前後の学校にはこの手のエピソードは必ずあるはず。

それぐらい公立校にはお金が無いのだ!!

にもかかわらず全国の強豪に引けを取らない強度を保ち、更には新入生にとって魅力あるチームであり続けている大津高校。

やはり凄いのである。



■特徴② 粘り、不死身

ここでいつものように大津高校のプレミア10年間の戦歴を振り返ってみたい。

ポイント59の18位。

3年でチームメンバーが総入れ替えしてしまうU-18の宿命において、長期にわたって強度を維持することは、実はプロチームより難しいと感じている。
そんな環境において10年間の累計成績でトップ20入りしていることは素晴らしい。

しかも、この10年で3度の昇格を誇る不死身っぷり。驚異の粘り。

そりゃ降格しないことが1番なのですが、前に書いた通り県立高の環境維持はとてもハードルが高い。歯車が狂えば一気に降格してしまう難しいリーグにおいて圧倒的ビハインドを持っていれば厳しいシーズンもある。

しかし大津は何度でも這い上がる。

これこそが、近年多くのJリーグチームが欲する「強さ」だったりする。大津の場合はそれがDNA的に刷り込まれているのだろう。

僕は前回のnoteで、

戦うプロチームにとって、大津出身の選手は1チームに一人(一家に一台みたいな(笑))必須なんじゃないかとすら思います。

と書いたのだが、今でもその想いは変わらない。

川崎にいる谷口彰吾選手、車屋紳太郎選手。京都の豊川雄太選手。元鹿島の上田直通選手あたりを見ていればその感覚(一家に一台)は通じるのではなかろうか。
彼らは猛者の集うJリーグにおいて尚、いかにも大津らしい。


もう一つ。
大津高校にとって喜ばしい傾向がある。

下記は2種年代(U-18)の10年間の戦歴を数値化し、順位付けしたモノ(2021年時点)である。

トップ20の中に高体連チームは5つしかない。
青森山田(2位)、東福岡(8位)、流経大柏(10位)、市立船橋(13位)そして、大津(18位)である。

実は2020年まで高体連の5番目は富山第一高であった。つまり2021年を以って大津はその立ち位置を逆転したことになる。


私は「高校サッカーの強豪校はどこですか?」と問われたら上記の5校を答えることにしている。
インターハイを制した前橋育英や、同じくプレミアに属する静岡学園などももちろん強い。帝京神村学園昌平などの人気高校を挙げる人もいるだろう。
しかし、歴史を紐解き数値化すれば5本の指の5本目は大津高校であるという事実を、この場を借りてはっきりさせておきたい。



■特徴③ 凡事徹底

もう何度も取り上げているので既にお腹いっぱいですが・・・やっぱり大津の魂、すなわち平岡先生の教えは外せない。

僕は社会人になって成功体験も失敗体験もたくさんしてきたけれど、その度に色々考えて自分の中に落とし込んでいくと、結局はこの考えに集約されていく。

凡事徹底(ぼんじてってい)

一言で言えば「当たり前のことをちゃんとやりなさい」という事。何だそんな事か、と思う勿れ。
社会人になるとこれが出来ない人が本当に多い!!

大事な会議の前に資料を一読しておくとか、ひとつの業務が終わった後にそれを整理してまとめておくとか。締め切りを守るとか。「ありがとう」を一言添えるとか。

本当に些細な事(凡事)なのに、後で振り返るとこの”小さなこと”をやるかやらないかで、結果やその人の評価が全く異なる。

平岡先生はこれをサッカーにおいても同じ、と説いている。全く以って同意だ。
しかも凡事徹底の素晴らしいメッセージはもう一つあって、結果や評価を分けるものは決して環境や才能ではないという事。
そう。凡事を徹底することなんて誰でも出来ることなのだ。そして、やれば誰だって成功に近づける。

環境や才能を言い訳にするな。まずは然るべきことをしっかりやれ、と。

ここに、県立でありながら強度を保ち驚異的な粘りを見せる大津の神髄を見るのです。

僕が30を超えてようやく気付いたことを、大津の選手は10代で徹底的に叩き込まれているんですね。これが僕が「大津出身の選手は1チームに1人必要。」と言いたくなる理由だったりします。

下の記事は、全サラリーマンが正座して一読すべきですよ(笑)。大津の選手は本当に幸せだな、と思います。いやマジで。



■注目選手!!

冬の選手権に向けて現役生の注目選手と、OB選手を取り上げたいと思います。

小林 俊瑛(コバヤシ シュンエイ)(FW/3年)

準優勝した2021年度の選手権でも大活躍した選手。間違いなく今年の大注目銘柄。191cmの長身を生かしたヘディングの強さはわかっていても止められないレベルでしたね。

特筆すべきは彼が、神奈川県の藤沢市立鵠沼中出身であるということ。鵠沼中も募金を募って全国行きを決めるなど公立ならではの苦労をしながら私学と戦っています。つまり、

小林選手とは、ザ・公立男 なんですね。

こうなったら(もし大学進学するなら)絶対に筑波大に行ってもらいたい(笑)。将来は、日本代表史上最も親孝行な男として名を馳せてもらいましょう!



碇 明日麻(イカリ アスマ)(MF・DF/2年)

世代別代表常連。大津の次世代。そして、名前が超カッコいい。

187cmの長身を活かして大津の最終ラインを統率しますが元々はボランチの選手。サイズのあるボランチはそれだけでもワクワクしてしまうのですがそこにCBとしての経験値が加わっているんですよね。

大津のCBと言えば谷口彰吾、植田直通と重ねずにはいられない。絶対に覚えておくべき選手です!!



森田 大智(モリタ ダイチ)(MF/早稲田大学1年)

大津ファンの皆さんにはもちろん言わずと知れた存在なのですが、やはり取り上げない訳にはいきません!

決勝まで進んだ昨年の選手権。超上手かったですね。
森田選手が中盤でどれだけボールに触れるかでチームが変化するほどでした。
そんな激ウマ森田選手が上のnoteで語っているように、最も大切にしていることが「気持ち」だというから脱帽です。これも平岡イズム。
早稲田ではこれまでなかなか上手くいっていないようですが、まだ1年目。

「練習では一番下手だと思い、試合では一番上手いと思いなさい」

という平岡先生の金言を受けて必ずや復帰を遂げるでしょう。
期待しています。




佐藤 瑠星(サトウ リュウセイ)(GK/筑波大学1年)

森田選手と同じく選手権準優勝メンバー。

平岡さんと同じ筑波大に進学してU-19の日本代表にも選ばれていますね。将来を嘱望されるGKの一人です。
191cmの身長もさることながら、昨年の選手権の前橋育英戦のセービングが印象的。大学と代表で研鑽して必ず4年後プロになるでしょう。

U-19のフランス遠征(旧トゥーロン大会)が初の海外遠征だったそうで、この辺は当たり前のように海外遠征するクラブユースと違って公立校の辛いところですね。。。とはいえ代表で川口能活コーチの薫陶を受けたようで絶賛成長中。
佐藤選手の吸収力を考えればその辺の経験値は問題なさそうですね。



■最後に

およそ2年ぶりに大津高校を調査してみたわけですけど・・相変わらず魅力的な選手が多いですね。

2022年度のプレミアリーグでは森田選手の抜けた穴が大きいのか現時点(17試合終了)で残留ギリギリの9位と厳しい戦いが続いています。
しかし、大津にとってこれぐらいは想定内なのかもしれません。決して一喜一憂せずに、強い「気持ち」を持って凡事徹底を成しているのだと思います。

限られた環境で結果を残すために研ぎ澄まされた指導方針とその実践。
県立高校と強さの両立は決してフロックでは無く確固たる伝統の中で育まれたものである、というのを強く感じます。


日本サッカーを愛し、2種年代のサッカーを愛するのであればサポートする立場であるか否かは抜きにして、公立校の戦い方は敬意と興味を持つべきものではないかと思っています。

県立の雄・大津高校の未来に期待しています。




本日も、最後までお読みいただきありがとうございました!

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