【週刊ユース分析】地方プリンスリーグの不都合な真実。
始めに述べておきます。今回の検証は、少々エッジが効いているかもしれません。
ただ、どちらが良いとか悪いとか、そういったことを伝えたくて筆を執っているものではありません。
特に北信越、中国地方に見られる地方プリンスリーグの傾向を、クラブユース側から見て思うこと。それを淡々と。
北信越プリンスと中国プリンスの2019。
まず、昨年のプリンスリーグの結果をおさらいしてみたいと思います。
北信越のプリンスリーグを制したのは帝京長岡。参入戦でマリノスユースに敗れてしまいましたが、冬の選手権での強さはご存じのとおりで、同チームからJリーガーを3人も輩出しています。とても魅力的なチームでした。
中国地方のプリンスリーグを制したのは岡山学芸館。参入戦で横浜FCユースに敗れましたが、こちらも中国地方では近年おなじみの強豪校。
私がこの2つのリーグに注目した理由。それはずばり、毎年 高体連チーム(高校の部活)がクラブユース勢より強い。という実態です。
中国地方にはサンフレッチェ広島という絶対王者がいるのですが、それを除けば、中国プリンスには錚々たる強豪校がひしめいています。
富山のサッカー少年はどこを目指すのか。
ここからはクラブユース目線で。
富山県に産まれ、サッカーに興味を持ち、メッシやロナウドに憧れた少年。まずは近所のクラブチームに所属するだろう。そして目下の目標は、「富山第一高校で活躍したい!!」そう言うのではないだろうか。
Jリーグは地域密着を掲げてきた。産まれた時からそこにクラブはあり、そこにあるから応援する。サッカー少年たちはいつかあのユニフォームを着てあのスタジアムで活躍したい。そう願ってボールを追う。今日も明日も。それがJリーグとクラブの理想だ。
富山にはカターレ富山という歴史あるクラブチームがある。でもそれは、果たして地元のサッカー少年たちのファーストチョイスなのだろうか。少なくとも近年のプリンスリーグの結果を見ているとそんな疑問が湧く。
新潟の帝京長岡とアルビレックス。岡山の作陽、学芸館とファジアーノ。鳥取の米子北、立正大淞南とガイナーレ。
北信越や中国のプリンスリーグにはそんな傾向がある。地域密着を掲げるクラブには、不都合な真実だ。
ユースの強さこそ、クラブの光。
僕がプレミアリーグを検証し続ける理由には、この概念がある。
クラブの安定を確保するためにはユースの強化が不可欠だ。ここでいう”安定”の対象は、サッカーの強さと経営の強さだ。
スポンサーの支援、サポーターの支援を半永久的に享受するために、ユース出身、すなわち生え抜きスターの存在は不可欠だろう。決して大袈裟ではなく、クラブの安定的な経営を目指したいならユースの強化は必須ではないか。
そんなロジックが、分析を進めるうえで見えてきた。
ここで一つ、手前みそながらジュビロ磐田に内定した法政大学・森岡選手の記事を紹介したい。
森岡選手は、磐田ユースで主力として活躍するもトップ昇格ならず法政大学に進学します。そこでアントラーズの上田綺世選手らと出会いさらに成長し、天皇杯でのJ1クラブ撃破に貢献してこのたび、4年ぶりの片思いを成就させました。
「他のクラブも話を頂いていたんですけど、ジュビロからオファーが来たときはすぐに決めちゃいました。地元愛、ジュビロ愛ですね。」
泣いた。
こういうチームがある。こういう選手がいる。数年前、ジュビロはユースの強化に本格的に取り組み、ここにきてようやく、そして続々と、成果が見え始めています。
静岡学園もいい、藤枝東もいい。それと同じくらい、子供のころ親に買ってもらったユニフォームに自分の名前が入るのが良い。これですよ。
流出ドキュメント① 地元の強豪高へ
ユース世代を調べていくうちに、いろんな記事を目にしました。
そんな中でも私がこのnoteを書こうと思ったきっかけになったのが、逸材FW中田樹音選手のこの記事。
ファジアーノ岡山U-18の10番を背負ってプリンスリーグ中国に出場し、得点王。昨年の2冠王者・名古屋U-18からもゴールを奪っている。「もっと前に進みたい」の思いを持って、岡山学芸館高のサッカー部へ転籍。
中田選手の選択に対する批判ではありません。「成長するために転籍する」というコメント。ファジアーノはどう読み解くか。
ファジアーノはJ2においても強豪チーム。岩政選手など元代表選手も在籍していた。しかし、サッカー少年から見た場合、何かが足りないようだ。
流出ドキュメント② となりのユースへ
以前のnoteで、京都のスカラーアスリートプロジェクトに触れました。こちらもその調査中にたどり着いた記事。中国、北信越とは関係ないがこれもまた同じ傾向。
ヴァンフォーレ甲府のジュニアユースで育った逸材が、ユース昇格せずに京都へ転籍しました。
『僕はプロになるために京都を選んだんだよ』
川崎選手は中学卒業とともに、プロになるため単身修行を決意。一人、京都の寮に住んで文武両道の道を行くこと決意します。決して楽な道ではなかったでしょう。そしてついに、京都でトップ昇格を果たしました。
■注目の川崎選手。京都ユースでキャプテン、そしてトップへ。
ただ、ヴァンフォーレから見ればやはり、将来のクラブのバンディエラ候補をみすみす失った。それも国内の隣のグラブに。そう言わざるを得ないような気がします。
個人を疑うな。仕組みを疑え。
ブランディングという言葉があります。マーケティングではなく、ブランディング。
クラブは、創立するとチーム名を作りエンブレムを作り、マスコットを作り、アカデミーを作り、監督と選手を集め、試合をし、グッズを売る。
これら予定調和式に行うクラブと、すべてが一本串で統一され、メッセージ化され、差別化され、つまりブランディングされたクラブとに分かれる。
難しいことは抜きにして、我々一般人は、実はこの差に大きく影響を受ける。つまり後者には、シンプルに心揺さぶられるのだ。
地元のサッカー少年が、将来どんな道をたどり、どこでプロフットボーラーになりたいか。それは、どのブランドに心揺さぶられたかに依存するのではないか。
移籍を決断した選手、決断させたクラブ、これら個人に全く問題は無い。うまくいかないとすればそれは、仕組みの問題だ。
トップとユースと、地域密着の関係。それを良好にする仕組みとは何か。地方のプリンスリーグを見ているとそれが見えてくるのではないだろうか。