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【エッセイ】もう一度食べたい新潟の「イタリアン」

金曜の夜にNHKで放送中の「ドキュメント72時間」は、「飲食店」「団地」など1箇所を72時間にわたり定点取材する30分の番組である。スタッフがその場で出会った人たちに話を聞いていく。

何気ない会話から、それぞれの生活や人生経験、価値観などに深くふれられる瞬間がある。そこに思わず共感したり、時には涙ぐんでしまったりと毎回心を動かされている。

昨夜は、新潟県長岡市の飲食店が舞台だった。「イタリアン」というソウルフードを看板メニューとしているお店だ。

イタリアンは、ソース焼きそばの上にミートソースがかかっている。10年以上前になるが、地元仙台での新潟物産展で本場の味を食べたことがある。テレビ番組で知り、焼きそばのソース味とミートソースのトマト味が合わさるとどんな味になるのか、気になっていたのだ。

いざ食べてみると、しっとりとしたもちもち食感のソース焼きそばと、ほどよい甘さのミートソースが溶け合って一体感を感じた。どちらかの味が際立つのではなく、共存している感じ。これは定期的に食べたくなる味だと思った。

そんな記憶があったので、今回の「ドキュメント72時間」を楽しみにしていた。

取材されていたお店には、ドライブスルーがある。飲食店で初のドライブスルーと知って驚いたが、寒くて雪が多い冬に、客が車を降りずに買い物できるようにとの心づかいは、雪国のローカル店ならではだろう。

ファミリー、年配の仲間同士、仕事休憩中のサラリーマンなど、あらゆる世代の人たちが食べに来ている。

番組では、お昼時に一人暮らしの80代の母親に買って行き一緒に食卓を囲む母娘や、農作業の昼休憩に食べる夫婦の家を訪ねていた。その様子から、イタリアンが地域の人たちの日常に溶け込んでいるのが感じられた。手軽にテイクアウトできるというのも大きいのかもしれない。

イタリアンがどれだけ地域の人たちに愛されているのかを実感した30分だった。
ぜひもう一度食べてみたくなった。