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【エッセイ】七夕まつりと、かまぼこ売り

今日、8月6日に「仙台七夕まつり」が始まった。実に2年ぶりだ。

写真を撮りながら、仙台駅前の商店街のアーケードの七夕飾りを見る。
今年は例年とは少し違った光景だ。

縮小開催なので、人通りは(いつもに比べると)多くはない。
また、感染症対策で、吹き流しの裾が顔にかからない高さに上げられている。
例年だと、歩いていると顔にかかるくらい、裾が長い。

けれども仙台に暮らしている私は、馴染みの七夕の風景が戻ったようで、嬉しかった。

七夕飾りを見ていると、色々な思い出がよみがえってくる。

中でも「いい経験させてもらったな~」と思うのが、「七夕バイト」だ。

感染症の流行前、七夕まつりの期間中には、まつり期間限定のお店がたくさん出ていた。

かき氷やフランクフルトなど、いかにも「まつり」といった店はもちろんのこと、観光客向けに仙台土産を売る店もあった。

大学生の頃、仙台名物「笹かまぼこ(笹かま)」を扱う出店で、アルバイトをした。

(笹かまぼこは、笹の形をした白い蒲鉾。宮城県では原料の魚「スケトウダラ」が多くとれるので、盛んに作られている。
お土産として、お中元お歳暮として安定した人気がある)

場所は、地元百貨店の向かい側。ショーケース2個ほどのスペースを3人で担当した。
アーケードの中でも人通りが多い場所だ。

そこで、3つに切り分けた「笹かまぼこ」の試食をすすめながらの、販売だった。

面白かったのが、お客さんの反応だ。
「試食いかがですか~?」と、楊枝に刺さった蒲鉾を差し出すと、たいていの人は喜んでくれて、話のきっかけになった。

中には、関西弁の人もいた。
東北で関西弁を耳にすることは滅多にないので、嬉しかったのを思い出す。
遠くからわざわざ来てくれている人たちがいることを知った。

青森の「ねぶた」、秋田の「竿燈(かんとう)まつり」といった近県のまつりをハシゴしてきたとう人も!なんとうらやましい。
私も定年退職したらやってみたい…がずっと先の話である(涙)

また、たいていの人は試食を喜んで食べてくれるが、子供(小学校低学年あたり?)は違った。

試食を「いらない」と言われ、そばにいたお母さんが慌てて「すみません」と私に謝った。

でも、私も内心は、この子どもの気持ちがわかるような気がした。

なぜなら隣にあるのは、かき氷や、フランクフルトの屋台。目に入ってくるのだ。
子どもだったらそっちの方に惹かれるよね…

けど、大人になったら、きっと「笹かま」のシンプルな美味しさがわかる日がくるさ(多分)
胃もたれしなくて良いよ。
そう語りかけたくなる…今の私であれば。


たった3日間のアルバイトだったが、蒲鉾を売りながら、色々な人と話した。
ただ家族や友人と七夕飾りの中を歩くだけでは得られない体験。
出店がない今、とても思い出深い。