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【エッセイ】幸せ気分になれる路線バス

1年前にバス停の近くに引っ越してから路線バスを利用するようになった。引越し前は仙台市内中心部には車で行っていたが、今はほとんどバスに切り替えた。

車はそのまま持ち続けているので「なぜバスに?」と周りの人たちには不思議そう。理由を聞かれると「気持ちよく利用できるから」と答えている。
どの運転士さんのバスに乗っても、乗客への対応が親切なのだ。

今日もバスを利用した。
朝、小雪まじりの冷たい強風が吹き付けるバス停で待つこと5分、バスが来た。停車とほぼ同時に乗車ドアが開き、「お待たせいたしました。仙台駅ゆきです」という運転士さんのアナウンスに迎えられ、待ってましたとばかりにステップを上がる。座席は埋まっていたので、手すりにつかまり立っていた。

それからバスは国道を仙台駅方面に向かって走っていく。その間も所々で運転士さんのきめ細やかなアナウンスが入る。

バス停で止まる直前には「次、止まります」、川べりの急カーブが続く道では「カーブが続きますので手すりにおつかまり下さい」、市街地の混み合う道路では「やむを得ず急ブレーキをかける場合がございますので、お気をつけ下さい」。立ちながらの乗車は不安定だが、バスの動きへの心の準備ができたので、心強かった。

乗客の中には、バス停に止まる前に、早めに降りようと立ち上がる人もいる。そんな時、運転士さんは「バスが止まってからご移動お願いします」とすかさず呼びかける。乗客の安全を守るための言葉だ。機械音声にはない重みを感じたのだろう。立ち上がった人は座り直していた。

親切かつ的確な接客だけではなく運転も心地よい。
ほどよく緩いスピードで、つい寝落ちしそうなくらいに安心して乗っていられる。さらに今日は晴れていて、バスの大きな窓に温かな日差しが降り注いでいた。ゆったりとした気持ちになり、半分眠りかけていたほど。

バスは目的地の近くのバス停に到着した。降車時には、「足もとにお気をつけ下さい」とバスを降りる人への運転士さんのアナウンスが入る。そして最後に運転席の横の機械で料金を払う時には、乗客ひとりひとりに「ありがとうございました」と声をかけてくれる。こちらも「ありがとうございました」とお礼を伝え、バスを降りた。少しの名残惜しさを感じながら。

路線バスに乗るたびに、この街で暮らしバスに乗れることの幸せをかみしめている。これからも利用者であり続けたい。