本を出すことが長年の夢だった(ことを思い出した)ハナシ
最近製作した本(ZINE)の話をまた少し。
先日、「なぜ"エッセイ本"を作ったのか」という記事を書いて、そこでは具体的な本の中身のお話をしたのですが…
今回は、そもそもなぜ自分の文章を「本」という形にしようと思ったか、というお話。
ちょっと昔話からスタートですが、私は小さい頃から本を読むこと、文章を書くことが大好きで、小学生の頃には「小説家になりたい!」なんて思って、特に中学高校時代は放課後家に帰ったらひたすらノートに小説を書いては、それを翌日学校で親しい友人に読んでもらう、みたいなことをやっていました。
でもやっぱり歳を重ねるに連れて、小説家になって本を出すなんて、本当に狭き門だということがわかって(才能や気力においても、デビューへの経路においても)、ときどき自分で書き物は続けながらも職業としての小説家なんて早々に諦めていました(その頃はエッセイを書くという視点はなかった)。
それでもやっぱり本が好きだから、なんとか本に関わる仕事がしたくて、最終的には出版取次という業種に就職。
出版取次に入ってよかったのは、一冊の本がどのように出版社で出版され全国の本屋さんに流通していくのか、出版業界全体の流れを広い視点で見て知ることができたこと。でもその全体の流れを見たからこそ、一冊の本が出版され、それが本屋さんに並ぶということがどんなにすごくて、大変なことなのかという現実も思い知らされて。
ただの凡人の私が本を世に出すなんてそれこそ非現実的すぎて、その頃には自分が本を出す出さないなんて一切意識に上がることもなく、目の前にある本を精一杯読者さんたちに届けようと仕事に専念したのでした。
その後数年勤めてから、出産や家庭の事情が重なって、私は退職をして専業主婦に。それからの数年間は子育て一筋の毎日、しばらくは本に触れる時間も気力もなく、本とも本屋とも遠ざかったのだけど、実はその間、書くことだけは続けていて。
妊娠、出産、育児と生活が移り変わる中で、どんなときも日記だけはずっと書き続けていた(なんなら切迫早産で入院した2ヶ月も絶対安静のベッドの中で横たわりながら小さなノートに記録を書き続けたり 笑)。
最初ノートに手書きだったものから途中ネットのブログに切り替わっていきながら、本当にずっと書いていました。
そして突如昨年あたりに、ZINEやリトルプレスという自主製作本の文化に出会い、有名作家みたいな特別な人ではなく、まったくの無名の個人でも気軽に本(冊子)を製作できる方法がある、ということを知った。
私が取次会社にいた頃、それこそ10年以上前は、まだ日本でのZINEやリトルプレスの文化はそこまでメジャーではなかったと思うのだけど、今や個人が自分の文章を気楽に発表できるSNSやネット環境があり、個人が利用しやすい印刷所も増えて、個人が製作したZINEやリトルプレスを扱う独立系書店さんも増えているし、個人がオンラインショップを構えることも簡単にできる。
それこそが私が取次にいた時代に、色んな意味で閉塞感や限界を感じる場面も多かった出版界に自主製作本の文化という新しい風が吹いていることを知り、すごく心が躍った。
そう、心が躍ったのです…!
本を好きな人、読むことや書くことが好きな人が、出版社という限られた経路を通さなくても、自由に自分の好きなように本を作れるなんて、最高じゃない!?と。出版社から出る本ももちろん魅力的な本はたくさんあるけれど、個人が製作した本にもまた違う味わいがあって、どちらもいい。
最初はその新しく触れた文化がただただ楽しくて嬉しくて、いろんなZINEやリトルプレスを買っては読んでを繰り返していたのだけど、その流れで自然と、だったら私にもできるはず、私も作ってみようかな、となったのでした。
自主製作本は、内容も形もページ数も装丁も印刷する紙も冊数も価格も、全部自分で決めていい。自分のためにたったの1冊だけ作ったり、知り合いに配るために10冊作ったり、幅広く売るぞと決めて何百冊も作ったり、規模も方法も好きにしていい。
今回の私は、やっぱり本を作るなら無料で配布するものではなく、ちゃんと「本」として、商品として作りたかった。
ということで、いろんな出会いや工程を経て、今回の本の製作に至ったのですが、
そんな今回の工程の中で、一つ忘れられない瞬間がありました…!
本の原稿を印刷所に入稿する前に、誤字脱字や文章に変なところはないかを確認するために、たびたび原稿データをコンビニでプリントアウトしては、そこに赤ペンを入れるという作業(いわゆる校正作業)をしたのですが…
初めて自分が書いた文章が紙に印刷されてコンビニのプリンターから出てきたのを目にしたとき、自分でも驚いたことに、思わずウルっときてしまいまして…!
ただコピー用紙に自分の文章が印刷されただけで、泣きそうになる、という…!
でもそのときに、"あぁ、これは、私がずっと、小さい頃からずっとやりたかったことなんだなぁ‥"と、改めて実感したのでした。
小さい頃の私、学生時代の私からしたら、非現実的すぎて諦めていたこと。長年の時を経て、それを今私はできているんだなと、しみじみ…!
…というような私の個人的感傷も挟みつつ、そんなこんなで、製作過程は慣れないことだらけで苦戦すること多々でしたが、まずはこの一冊の本を形にできたことに
すごく感動&満足しています!
例えば中身の文章や、本全体の構成、装丁などなど、熟練した人からしたら未熟な点は多々あると思うのですが、そんなことは関係なく、私はこの自分が作りあげた本が目の前にあることが、嬉しくて嬉しくてたまらない。
自己満上等!出来上がった本が、本当に愛おしくてたまらない。
実は出来上がった本を読み返してみたら、早速誤字脱字を見つけて、「ひぃっ……!」となったりもしているのですが、まぁそれも愛嬌というか…何もかも最初から完璧なんて無理ですもんね!←
もし今後こちらの本を手にとってくださって誤字脱字を見つけた方がいましたら、
「お、ここかな…?」とひっそりニマニマしてやってください(笑)
さて、そんなわけで、今回の製作においては、まずは「本を作る」という作業自体が目的であり目標だったので、その後の、「作った本を売ってバリバリ稼ぐぞー!」みたいな気持ちはあまりなく…(というか自主製作本は製作費や手間を考えると、販売しても本当に大した利益はないので、改めてお金目当てではできないことだなと思ふ…)。
とはいえ製作する時点で既に何冊かお店に納品することが決まっていたので、少し余裕を持って冊数刷って、現在手元に在庫が何冊かありまして。
このまま手元に置いておいてもいいくらいなのですが、でもせっかく本という形になったのだから、これを販売して、それがもし誰かの元に旅立ってくれて、この本とそれを読んでくれた方が一瞬でも触れ合って、そこから何かしら生まれるものがあったら、それもまた素敵だし、販売するのも未知の体験で面白そうだなと思っている次第です。
本の詳細や購入方法はこちらでご確認ください。
ちなみに、この先もまだいくつか作ってみたい本があるので、まだしばらくは私の自主製作本活動は続きそうです。今も次の本の原稿を執筆中。
毎日めちゃくちゃ楽しいです!
(そういえば、今現在はエッセイとか日記とか現実の世界におけることを書くことを楽しんでいますが、小さい頃の夢のように、またいつか小説を書くこともあるかもしれない。なんていったって、ZINEの可能性は無限大!)
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