25年の人生において一番忙しかった日②

そこからの2ヶ月間、とんでもなく忙しかった。
忙しい人は忙しいとは言わないとよく言うけど「忙しい」という暇がないくらい忙しかった。

大会出場の資料はいつも提出ぎりぎり。
本当にすいませんと頭下げっぱなし。
同時並行で、結婚式の準備。
音響リストの提出がどっちがどっちなのかわからなくなったり、結婚式の照明プランと大会の照明プランがごっちゃになったりして多方面に迷惑をかけた。

やべーやべーって脳内のキャパオーバーを起こしかけてた時、部員が声をかけてきた。
「先生ぇ…舞台の大道具っていつ作りますか?」

……ジーザス!!!!!!!!

そう、県大会が決まった直後、誰にも応援されないという事実が辛すぎて、「なんとかいいものにせねば」と意気込み、「大道具つくろーぜ!!」ってなんのプランもない提案をしたのをすっかり忘れていた。
キャパオーバーしかけてた脳みそが完全にキャパオーバーを起こした。
「先生まさか忘れてました?」
「ゼンゼンソンナコトナイヨー。材料買ッテオクネー。」
「あと…あの、今日も全員揃わないです」
「マジカー……。」

そうなのだ。地区大会が終わった途端、急激に新型コロナウィルスの感染が拡大してきたのだ。一日必ず誰かしらがいない。通しもできない。誰かが感染しているかもわからない状況。
これ…詰んだんじゃね…本当に本番迎えられるかなぁ…。
そんな不安が部員の顔からにじみ出ている。
キャパオーバー起こしてる場合じゃねえ!!!!
私は家庭科の先生に頭を下げ、被服室を放課後貸していただいた。
部員が揃わない日は、練習を切り上げ、被服室で大道具製作をした。
もう一人の顧問の先生や家庭科の先生も協力してくれ、私のせいで少なくなってしまった製作時間のなかで作り上げてくれた。

というかさ、私たちが作ったの、つるすための暖簾なんだけど、それだけでかなりの時間を要したんだけど(大道具をきめることろから完成まで)建築みたいな舞台創る学校さんってどんな時間の使い方してるんだろ…。神か何かなのかな…。すごすぎる…。

そんなこんなで大会1週間前。
大道具は完成したものの、通しは一回もできてないし、なんなら建て込み練習も全員揃っていない状況で、3年生全員が濃厚接触者で欠席しているような誰がどう見てもやばい状況だった。

そんなとき、部員のチャットから最も来てほしくなかった一言が投稿される。
「すいません。陽性出ました。」

…もう仕方ないのだ。だって誰がかかってもおかしくないんだもん。だから仕方ない。仕方ないけど…。
誰が変わりやる??????????????
そう、うちは超弱小校。人数がすごく少なく、ギリギリなので代役という概念がないのだ。
なんだったら照明も顧問の先生にやってもらっている。
しかし、不幸中の幸い。陽性が出た子は音響だった。
「ウン。ジャア私ガヤルヨーーーーーー。」
選択肢は残されてなかった。だってみんなの舞台つぶしたくないもん!!!

これで私の人生で一番忙しい期間が確約された。
そこから本番までの記憶はほとんどない。うん。思い出そうとすると脳がなんか悲鳴を上げる。からもう思い出すのはやめておこうと思う。

本番の次の日、よーし!今日は気が楽だー!観劇するぞー!と息を巻いてた。
他にもイベントがあったらしく、屋台も出ていた。
午前の観劇が終わり、「屋台でも食べちゃおー!」なんてルンルンで屋台に並んで物を購入し、スマホを確認するとたくさんの不在着信が。
何事かと思い折り返し連絡すると、交流のある先生から「先生の学校の生徒が吐きました」と連絡。
ひゅっと喉が鳴り、昨日音響席に置いてきたはずの胃の痛みがキリキリとなりだす。
走って戻ると、他の先生が対応してくれた跡が。当の本人はけろっとした顔をしていた。
私はふたたびたくさんの先生に頭を下げ、ご時世なこともあり生徒を送り届けることになった。
当の本人は「吐いたらすっきりしました!先生、クレープ買っていいですか?」
……うん。やめておこうね。
そんななんとも愛嬌のある生徒を無事送り届け、気を取り直し、帰って観劇するぞー!と現地に戻るルートに入った。
いまから、帰るとあと何校見れるかなーと考えていると、後ろからとてつもない衝撃を感じた。

……ナニガオコッタ??????

後ろから車が追突してきたのである。

…そんなことある?

そうして事故の処理を終えるとすっかり日が暮れ、もう現地には戻れない時間になっていた…。
その日は結婚式の準備のため、実家に車で帰ることになっていた。
その車がおじゃんになってしまったので、電車で帰り、妹に駅まで迎えに来てもらった。
家に着くなり母から一言
「あんたなんか老けた?」

…これが私の人生の中で最も忙しかった日である。

そこからなんだかんだあったが、結婚式も無事終わり、私の人生で一番忙しかった期間は幕を閉じた。


ここまで読んでくれた人は「どゆこと?」とハテナを浮かべる文章に感じているだろう。安心してほしい。書いている私が一番「どゆこと??」と感じている。

きっと来年の11月には「そういや去年こんなことあってさあ……」と笑い話にしてることだろう。
結局笑いに変えられればそれでいいのだ!!

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