ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」について
これまでのわたしとジャージー・ボーイズ
2016年
シアタークリエ そこそこ見た。
2018年
シアタークリエ 台風で一回中止になったものの、そこそこ見た。
2020年
帝国劇場 何度か見る予定が全公演中止となり、比喩でなく悲しみに号泣した。コンサートバージョンは1度観に行け、配信を友人とリアタイした。
2022年
日生劇場 矢崎広さんの出演がないとはいえ、当然友人と観る。
と、いうことで10月24日マチネ(中川Green)とソワレ(花村Black)を観て参りました。以下雑感。まったく気を遣わずに比べます。この日は一回のみのシャッフル公演なんですね。今回のスタンダードではないのかもしれませんが、私が観たのはこちらなので。
フランキー・ヴァリ
不動の中川さんと今回からの花村さん。中川フランキーの圧倒的な高音は相変わらずやばい。突き抜けている。お芝居もなんていうか、安心。あの空間をそのまま生きている。花村フランキーは、メアリーをエスコートできない(ディナーのシーンで椅子を引いてあげられなかった)のが、もう色んなことを物語っている笑 でもスポットライトを浴びての振る舞いが完全にスター。場慣れていてものすごく決まってる。トミーの借金が発覚したときの終盤、中川フランキーは戸惑ったように「どうしよう、僕本気で〜思ってる」と言っていたけど花村フランキーは段々怒りを抑えられずに爆発していた。家族に対してのアプローチの違いかもしれない。どちらも捨てられないんですけどね。あのシーンの花村フランキーの静と動がとてもよかった。藤岡トミーとうまくぶつからなかったなあ。
今回は、本当の家族と家族のような存在についてとそれぞれ考えさせられました。
トミー・デヴィート
尾上トミーがびっくりするくらいに何も考えていなかった。すごい。3500ドル必要なのになぜ5000ドル借りる。他のトミーは残りの1500ドルをギャンブルとかに使う気(少なくとも自分のために使う)だけど、尾上トミーは、「5000あれば足りるから」という理由で借りてるに違いない。憎めないといえばそうなのかもだけど、だからこそ良くないことも。
藤岡トミーはクズっぷりが堂に入っていた……。スタッフさんのハンカチを床に払い捨てる。脅し方がえげつない。自分でも抑えられないような暴力性があったのかもしれない。どちらも、こんな人間がいるんだ!と大変興味深かったです。
ボブ・ゴーディオ
有澤さんのボブは登場時がとても無邪気。ひょろりとした感じに余計若さが出ているように見える。そして何だかカラッとしている。お金を用意してきたトミーに「誰も頼んでないのに」と言った時も、思ったことをストレートに言っているだけ。現代っ子な感じで、だからこそ自分の生まれた地にそこまで執着しない。
比べると東さんのボブはあの身長のせい(でもひょろりではない)か、人に警戒心を抱かせるしそのことに本人はわりと無頓着。地方の超優秀生って感じ。2幕では自分がどう見られるかということに気づいて大人になっていて欲しいなあと休憩中に話してました。で、気づいていた。そしていい男になった。2幕最初の収録?ステージ?のシーンで、カメラをちょちょっと呼んだところで思いました。自覚的だ。あと東ボブが印象的だったのはトミーの借金肩代わりの時に「トミーはそれでいいの」と言ったところ。わざわざトミーの目の前に椅子を置いて座り、目線を合わせて尋ねる。そして立ち上がって見下ろして離れる。あの背を活かした動きだなあと。これも自覚的に使っている。
それにしてもこの作品の「Cry For Me」のシーンは凄い。曲の素晴らしさはもちろんのこと、あれがあそこで歌い上げられることにより、ボブの才能を一瞬で観客含む全員に理解させられる。もちろんボブの方々の力量ありきなんですが、それをより引き立てる演出だと思います。
ニック・マッシ
spiニックは、自分がポールマッカートニーにもジョンレノンにもなれないことを知っている。リンゴスターの自分を受け入れるか、それともバンドを辞めるかの2択なことを知っている。でも、後ろ髪を引かれている。あのラストの「正直に言おう」が、本当にやっと本心を吐露した感じですごく切なかった。
大山ニックは、周囲にではなくあくまで舞台上での話なんですけど、自分の弱さをあまり隠そうとしてなかった。涙ぐんだり、バンドを辞めると言い出す前に少し躊躇ったり。大山ニックにとっては、トミーのことやバンドのことは本当の家族を切り捨てていく感じだったのかなあ。優しい感じがしました。
驚いたこと
作中の手拍子。これまではなかったように記憶していたので、あれ??と思いました。コンサートを挟んだから観客側の意識も少し変わったのかなあ。個人的には無い方がいい派です。参加したかったらカーテンコールがあるから。でも、観客もよく承知しているのかお話の邪魔をすることはなかったです。
確認したこと
矢崎広さんをずっと観てきていたので、ジャージーボーイズでは自然とボブに目がいくようになってしまった。そのせいか、誰の「Cry For Me」や「Oh What a Night」でも泣ける体に……。でも、これは完全に個人の好みですが、「僕たちをこの場に連れてきたのはファンだった」の台詞は矢崎さんが最高でした。また観たいなあ。