本の感想: アガサクリスティー《そして誰もいなくなった》《春にして君を離れ》
最近Hontoでアガサクリスティーセールをやっていて、《アガサクリスティー完全攻略》で著者が上げているランキングの、1-5位までと、自分の中でアガサクリスティーと言えばこれ!な《そして誰もいなくなった》を購入したので、読んだ感想をちまちまと投稿していこうかと思います。
今更誰も気にしないと思いますが、ネタバレあります!
《そして誰もいなくなった》
評価:★★★★☆ 偉大なるミステリのパイオニア
言わずと知れた、クローズドサークル、見立て殺人、実は〇〇〇が犯人という概念をミステリに持ち込んだ作品。昔読んだ時は古臭さを感じたのだが、読み直すと今読んでもとても面白い。2010年の新訳版を読んだので、新訳が刺さったのか、はたまた年をくって想像力の幅が広がったのか。
各登場人物のキャラも立っているし、文章中での証拠の提示の仕方もフェア。自分は推理は程々に、すぐに解決編を読んでしまう性質ですが、ちゃんと推理して解決編を読みたい!って方も、文中の情報だけで当てられるんじゃないかな、と思う。
《春にして君を離れ》にも登場する、歪んだ良識という概念も登場する。
《春にして君を離れ》
評価:★★★☆☆ 他人への諦観がすごい
《アガサクリスティー完全攻略》では最高評価だったが、個人的にはそこまで…多分、これを書いていた時に筆者は大分心にダメージを負っていたんじゃないかと思う。ちなみに謎解き要素は全くない。
お嬢様学校を出てすぐに結婚したため、多くの他人と触れ合う事によって形成される、価値観も大事にしているものもそれぞれ、という認識が形成されなかった、自称良妻賢母が主人公。
旅先での空いた時間に自省して、今まで家族のためと思ってしてきた事は、自分の良識のタガに嵌める行為で、本当に家族のためを思っての行動では無いという事に気付くのだが、家に帰ったらまた元の木阿弥という話。
夫も、弁護士事務所の共同経営者の話が出た時に、僕の夢は農場経営だから金は全く儲からないがやりたいと言い出したり、完全に主人公の事を諦観していて、子供と一緒に主人公を見下した言動を取る。
挙句の果てに結婚後に好きになった女性が使ったクッションやら、話題に出した事をモチーフにした絵やらを自分の事務所に大事に飾っていたり、結構お似合いの夫婦である。
読後感としては、この両親の子供かわいそうに…で終了。一応、他人を自分の良識のタガに嵌めるという行為への戒めにはなる。所謂、良かれと思ってやったのに…というやつ。
自分の経験と重なり合う部分がある人なら、刺さるのかも知れない。