長野市立博物館 de みんキャプ クエスト レポート

日時:2024年1月20日
参加者:
長野市立更北中学校の生徒、今井さん、佐々木さん、白石さん、
樋口さん、久田さん、野口さん、須坂市情報センター化学クラブの皆さん
会場:長野市立博物館

2024年1月20日(土)、長野市立更北中学校の1年生 6名、2年生 7名の合計13名が長野市立博物館で「文化財とデジタルを活用した探究学習」を行いました。

博物館の収蔵物をスマホアプリをつかって3Dモデル化し、デジタルでの活用方法を探究するワークショップです。

博物館の樋口さんはもちろん、中学校教員の佐々木さん、株式会社アナザーブレインの久田さん、Nianticの白石さんや考古学研究センターの野口さん、須坂市技術情報センター科学クラブのみなさんが、生徒たちの学びを応援しました。そして今回は漫画家の今井さんも参加しており、今日1日を漫画にしてくださるとのこと!

 イベントは改正博物館法の施行における、「博物館資料に係る電磁的記録を作成し、公開すること」、「社会的教育における学習の機会を利用して行った学習の成果を活用して行う教育活動その他の活動の機会を提供し、及びその提供を奨励すること」、「学校、図書館、研究所、公民館等の教育、学術または文化に関する諸施設と協力し、その活動を援助すること」の部分に焦点をあてています。
 この中でも特に、「電磁的記録を作成し、公開する」ということにおいてはデジタルアーカイブが進んでいる現在でも、国宝や重要文化財が優先され、予算的、人的リソース不足もあり、博物館資料の90%以上はデジタルアーカイブが後回しにならざるを得ない状況であることから、本イベントにより、誰でも簡単に3D化可能であることを示し、活動推進していくことを目的としているのです。

私自身も久田さんに呼んでいただき実際に参加させていただきました。

時間も近づき、皆さんが集まったところで一人一人自己紹介スタート!

 

自己紹介が終わり早速館内へ!

館内に入ると注意事項の説明があり、皆さん真剣に聞いていました。

今回撮影させていただく場所は2階にあり、上がってから撮影可能箇所に関しての説明を受け、その後ついに3Dスキャンアプリである「Scaniverse」についての使いかたを教えていただきました。

スマホを渡されると騒ぐわけではなく、じっくりまじまじと興味を持つように見て触っていました。私が同じくらいの年代であれば確実に騒いでいたので、かなり大人びた印象を受けてかなり驚きました。

スキャンアプリの使い方を学ぶ中学生

皆さん説明を聞き終わるすぐに撮影対象を探し始めました。じっくりと何を撮影するか考える子もいれば、取り敢えず近くにあるものを撮影する子や一つのものを集中的に撮る子など一人一人の色がかなり出ていて面白かったです。

撮影しているときの顔は真剣で、まるで「今撮っているから話しかけないで!」と言っているかのような熱意を感じました。ですが、実際そんなことはなく、話しかけると何を撮ったか教えてくれたり、自信作を見せてくれたり寧ろ「見てくれ!」と言っているようで、しっかり子供の一面を感じることができて安心しました。

集中して取り組む生徒たち

2時間ほどあった撮影時間もあっという間に過ぎ、一度集合し、それぞれ撮った3Dモデルを長野市立博物館の樋口さんに見ていただくことになりました。皆さん本当に細かく上手に撮れていて樋口さんもかなり驚いた様子。さらに驚くことに、現状で教えている物体の3D化の次のステップとして教えるはずであった、3DモデルをAR化して出現させることを既に自分で試行錯誤して行っている子もおり、これには樋口さんも「ここにありえないものが出現している!」とびっくりしつつも喜びをあらわにしていました。

樋口さんと中学生

その後は各自昼食休憩で、どこかに買いに行く人もいれば、外食する人や持ってきたお弁当を食べる人もいました。私は買ってきていたので外で食べようとしたのですが、雨が降っていたため室内で済ませることに。中学1年生の3人と一緒にご飯を食べさせていただきました。3人ともお弁当を食べている姿を見て私がおいしいか尋ねると、みな元気よく「おいしいです!」と答えていて、自身も久しぶりに親の作るお弁当が恋しくなりました。

1時間ほどすると外に行っていた人も集まり、午後の活動内容確認や午前で気づいたスキャナのコツ共有が行われました。また、学芸員の成田さんが来られ、前回のみんきゃぷの際に3Dスキャンにハマり、自身で家を3Dスキャンをしたモデルをもとに図面におこして、作成した家の模型を披露していただきました。このように楽しさを感じて、どんどんできることを行う行動力は自身も見習いたいところです。


成田さん制作の模型

そして午後の部が始まる前に午前で撮った3Dモデルを集めて鑑賞会をしました。迫力のある大きなものや小さいものまで皆さんそれぞれ気に入ったものを撮っており、同じものを撮影していても自分の撮影したものよりも細かく写せていたり、裏面までしっかり撮れていたりとクオリティ高い作品ばかりでした。個人的に好きな作品は「稲刈り鎌」で、小さく台の上に置かれているため、私の撮影したときは持ち手の部分が透過してしまいうまく映らなかったが、その柄の部分までしっかりと写すことができていて、自身も早く午後の部でリベンジしたくなりました。

(左上:稲刈り鎌、右上:スクラ織り機、左下:練炭ストーブ、右下:道祖神)

送られてきた作品を見終わると午後の部が始まりました。
午後の部では午前と同じように2階にある展示物の撮影をリベンジするか1階にある様々な民具をじっくり撮影するかを選んで行いましたが、ほどんどの学生はリベンジに励んでいました。そのため、ほどんどの学生が2階でリベンジを、残った学生と大人たちで1階の作品を撮影という構図でした。

まずは私も1階に残り様子を見ていると、学生たちは一人一人黙々と撮影しているという感じでしたが、大人たちは話し合いながら、意見共有などをしてかなり和気あいあいとした様子で撮影しており、子供たちに負けないくらい楽しそうに撮影していました。
数ある道具の中でも昔のガラス製ハエ取り器の撮影が難しく、皆何度もチャレンジしながら見せ合ってはリベンジを繰り返していました。ガラス製であり、透明であるため、どこがガラスの境目かをこの3Dスキャナでは上手く認識できないことから歪んだモデルしか撮ることができず、この透明な物体というものは今回のアプリでは弱点だということも白石さんからお話しいただきました。ですが、反対にこの仕組みを利用することで透明のガラス台を撮りたいものの下に置くことで、本来写せない下の部分を撮影することができるようになるなど活用方法もあるため、そのような使い方ができるという点では便利だそうです。

ほかの作品も撮影できたため、満足した私は2階の様子を見に行くことにしました。
2階では午前同様にかなり真剣に3Dスキャンをしている姿があり、午前で撮れなかったものを撮っていたり、午前で失敗してしまったもののリベンジをしていたりと皆さん本当に楽しそうでした。昼食を共にした3人のうちの1人は大きなプロペラをリベンジしていて、上手く撮れそうかと聞くと、「終わったら見せますね!」と言ってくれて、後で見せてもらうと、上手く言った部分を教えてくれて、でもやはり細い部分はうまく映すのが難しかったなど様々な考察を話してくれて嬉しかったです。また、他の場所では2人で協力している子たちがいて、2人には上手くリベンジできた自慢の作品とともに撮影をさせていただきました。

時間が経ち、終わりの時間も近づいてきたため、再び1階に戻ると、なんと亀の化石がおかれていました。

亀の化石

これは先ほど家の模型を持参された成田さんが持ってきてくださったもので、この貴重な化石も3Dスキャンしていいとのことでスキャンさせていただきました。
化石をスキャンしているとやはり床に直接置かれているため、接地面が上手く撮れないと思っていると、野口さんが「下に紙粘土を置いてみたらどうだ」とおっしゃてくださり、実際において高さを出すと、置く前よりも鮮明に全体を撮ることができるようになりました。

他にも入射角や反射角を考えたり、部屋の明るさを調整したり、撮影距離を調整したりと工夫することで今まで撮れなかった部分が撮影できるようになるなど、誰でも簡単に撮影できるが、努力次第でさらに細部までモデル化できるようになるなど、奥深くいつまでも楽しむことができました。

午後の部も終わり、少しの休憩を挟んだのち最終的な成果物を送ってもらい、その後8th WALLというWebARで土器を頭にのせたり、イヤリングを耳につけたりを楽しみました。
実際にやってみるとこんな感じになりました。

8th WALLお試し

そしてこの活動では3Dスキャンをして終わりではなく、この3Dモデルを活かして実際に何かできないかを考え、実践するまでを目標としているため、今回は何ができるかを考えるところまで行いました。
中学生、大学生、大人チームでそれぞれ付箋に意見を書き出し、発表してもらいました。

↑ 中学生の考えた活用案
↑ 大学生の考えた活用案
↑ 大人の考えた活用案

中学生チームの案として、「デジタル博物館を作り、遠くの人でも来られるように」や「デジタルの館内マップを作る」など発想の柔軟さに驚かされました。
また、大人チームの案では、「2人組で3Dスキャンするイベントにより、新たな出会いを」という変わった発想の意見が出ており、今の流行と組み合わせるという大人らしい考えもまた、面白かったです。

この後、中学生たちは、本日作成した3Dモデルを活用しデジタルな表現で誰に何を伝えたいかなどの探究学習へ進みます。どんな作品ができるかとっても楽しみです。

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高橋はこう感じた

 多くの中学生や大人の方と関わる機会などないため、貴重な経
験ができるとてもいい機会となりました。
 個人で博物館にいくことは少なく、このような現状であること
など全く分からない世界でしたが、今回のみんきゃぷによって興
味へと繋がったので、博物館巡りしてみたいなと思います。
 また、3Dスキャンアプリを使うことは今回が初めてでしたが、
夢中になるほど楽しめたので、身近なものでもどんどん活用して
いきたいです!

このような文を書くのは初めてであり、もっと他の写真を撮って
おけばよかったと失敗もありましたがまた機会が訪れた際には失
敗を活かし、さらに興味の湧くようなものを作れたらなと思いま
す。拙いと感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、最後まで
閲覧いただきありがとうございます。

大学4年 高橋 諒
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株式会社アナザーブレイン

3Dスキャン撮影をさせていただいた施設
長野市立博物館のホームページ

今回の3Dスキャンに利用したアプリ
Scaniverse


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