「オットーという男」感想
原題:A MAN CALLED OTTO
映画を見たのは10月13日でした。
13日は飼っていた犬の月命日です。
そんな日にこの作品を見られて良かったと思いました。
アメリカのある住宅地にオットーという男がいました。管理人でもないのに毎朝駐車場やゴミ捨て場の分別を厳しく見回り、住人やチラシ配りに文句を垂れ、挨拶されてもムスッとした返事をするだけ。簡単に言うと偏屈じいさんの心が絆されていく系なんだけど、それだけの話と言って終わるのは勿体無い気がします。
あらすじ
物語はオットーが5フィート(およそ150cm)のロープを購入する所から始まります。
売り場で自前のナイフを使って必要分をカットしようとすると店員は手伝いを申し出ますが、オットーはこれをなんともひねくれた言い方で断ります。
さらに会計時、ロープが「インチ単位」での販売だったため、レジの計算では5フィート分より少し多い値段になってしまいました。オットーはこれに猛反発。2番レジの客が親切で超えた分を払うと言いましたが、オットーは「金を払いたくないんじゃない、買ってない分の料金を何故払わなくてはならない?」と譲りませんでした。その場にいた全員の「めんどくさい客がきたぞ」とでも言いたそうな顔。オットーという男は確かに間違ったことは言っていないのですが、めんどくさい男であることも確かでした。
そんなオットーの住む住宅地に、新しくお向かいさんが越してきます。よく喋るお母さんのマリソル、ちょっとマヌケな旦那さん、絵本と人形遊びが好きな娘2人。この出会いが、偏屈じいさんの人生を変えることになるのです…。
※※ここから映画感想・終盤の内容に触れます※※
正直、映画に出てくる「本当は優しい偏屈じいさん」はかなり好きです。あとトムハンクスも。
私はこの映画が「どうやらいい話らしい」という前情報を持っていたので、オットーのめんどくさい客ムーブを笑って見ることができましたが、冒頭のオットーはマジで嫌なやつ。嫌なやつではあるのですが、ルールを厳しく守り、ただの人付き合いが苦手そうな人にも見えるので真っ向から嫌い!とはなりませんでした。それに、昔から知り合いの住人はオットーに挨拶して、冷たくされても二言目にご飯に誘うのです。この人悪人ではないな、というのが伝わってきます。
映画の空気感もコメディのように明るくテンポ良く進みます。嫌なじいさんを笑って、家に戻って手際よく天井に金具を取り付けるかっこいい姿を見て、買ってきた紐を天井から吊り下げる。ここで急に引き込まれました。5フィートの紐は頭が通るくらいの輪っかになって天井からぶら下がります。オットーは死のうとしていたのです。理由は、ネタばらしの前からなんとなく伝わってくるのですが、亡くなった奥さんの元へ行くため。
しかし自殺は失敗します。オットーは何度も、いろんな方法で死のうとしますが、いろんな原因で失敗します。お向かいさんが引っ越しの贈り物を持ってきたり、天井の金具があっけなく壊れたり、先生だった奥さんの元生徒が訪ねてきたり、迷い猫の面倒を見ることになったり。ちなみにこの猫は本当に可愛い。猫映画としてもおすすめできる作品だと思います。
こっそり死のうとするオットー(家が汚れないようにシートなどひいてから死ぬのが健気、まあ死ねないけど)、オットーと奥さんの出会いからを追体験、お向かいさんが来たことによって起こる暖かいドタバタ、それらを繰り返しながら、オットーと周りの人たちに新しい絆が生まれ、失ったと思っていた絆に気付き、登場人物みんなを好きになっていきました。一応悪役がいるので、それ以外の人たちを。
クライマックス、お向かいの奥さんマリソルと本当の友達になってからのオットーはかなりアクティブで見ていて気持ちが良かったです。今までも自殺のためにキビキビ動いてはいたのですが、その行動力を全力で人助けのために使うオットーのかっこよさ。トントン拍子に解決に向かっていく様を見ながら、なぜか東京ゴッドファーザーズを思い出しました。奇跡が起こって全てを解決してくれるような感じ。後日談というか、問題解決のあとも少しお話は続くのですが、1番幸せな時間で終わらせないところも良かったです。
オットーが奥さんを、すごくすごく愛している事が伝わってくる、とても好きな映画でした。オットーは何度も自殺に失敗しますが、毎回本気で死のうとします。怖くて手を抜いたから失敗したことは一度もありませんでした。オットーが生きていてくれた事は本当に本当に嬉しいし良かったけれど、奥さんの元へ行こうとする姿からは痛みや悲しみではなく、愛を感じました。
あと、犬は無事です。
/すわみ