映画「バービー」感想
原題:Barbie
見れるなら何でも良いというわけではありませんが、
映画鑑賞が好きです。
映画に関わることを少し努力してみようと思い、
先月からイオンシネマ会員になりました。
月1回のクーポンで少しお得に観れて、6回観ると1回タダ。
年会費を取られるので無理やりにでも続ける良い理由になっています。
初回の映画はマルセル。
大変満足のいく映画体験で、幸先のいいスタートになりました。
そして今月の映画、実写版バービーです。
実写といっても元の作品はアニメでも小説でもなく、
我々の世界に存在する着せ替え人形のおもちゃ、バービー人形そのものです。
今回ストーリーの内容に触れる部分が多くなってしまいました。
鑑賞前の方はご注意ください。
字幕版鑑賞!
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オープニングは女の子の人形遊びの歴史を神話っぽく説明されます。
昔々、女の子たちの人形遊びといえばもっぱら赤ちゃんの人形を使ったものでした。
服を変え、ごはんを食べさせ、おぶってあやす『お母さんごっこ』です。
そこへ空から落ちてくる足長でおっぱいの大きい大人の女の人形。
バービーの登場は女の子の人形遊びを、『お母さんごっこ』から『憧れの自分を投影するもの』へと変えていきました。
大げさに表現していますが、実際には選択肢が増えたんだと思います。
現にお母さんごっこ用の赤ちゃん人形は今でも販売されています。
大げさ、ひっかけ、風刺、ブラックジョーク。
映画内には表面通りに受け取らない、いじわるなジョークがたくさんちりばめられていたように感じます。
物語は舞台はバービー人形たちが暮らす国、『バービーランド』。
人形を演じるのは人間の俳優さんですが、人形世界の表現がおもしろい。
朝、目覚めたバービー(主演のマーゴットロビー)は気持ちよさそうにシャワーを浴びますが、お湯も水も出ていない(音はする)。
ヘアブラシは髪にかざすだけ、傾けた牛乳パックからはなにも出てこないし、プラスチックの朝食を食べるふりをします。
人形遊びをするとき、コップを『だいたい口のあたり』に持っていって「ごくごく、あーおいしー」ってやるやつ。
あの『ごっこ』の感じがバービーランドの生活なのです。
バービーランドのみんな(女性の名前はほぼすべてバービー、男性はケン、アランが一人)に挨拶しながらビーチに向かい、おしゃべりして、家に帰ってダンスパーティーしたあと、女の子だけでパジャマパーティーする。
それがバービーの毎日でしたが、ある朝異変が起こります。
なんとバービー(マーゴット)のかかとが床についている!!
バービー(マーゴット)はいわゆる『定番タイプ』のバービー。足はヒールを履くために『ヒールを履いた足の形』、つまり常につま先立ちになっているのです。
友人に打ち明けるとひとしきりグロそうなリアクションをされたあと、『変てこバービー』に修理してもらう事に。
変てこバービーは持ち主に乱暴に遊ばれたバービー。
髪は散切りで、クレヨンでメイクされています。
昔は美しい見た目をしていましたが、今はみんなの修理担当として魔女のように扱われています。
バービーの変化は持ち主の変化、かかとを直すには人間界(リアルワールド)に行って持ち主に会うしかない。
こうして、バービーの冒険が始まります。
そして、人間界に紛れ込んだバービーがてんやわんや。
ラストは持ち主の心を癒して、かかとを直してハッピーエンド!
予告を見たときはこんな内容だと思っていましたが、そんな簡単でやわらかいものではありませんでした。
美しさについて、愛について、男性と女性の間に生まれるゆがみ、本当の自分をみつけること。いくらでも重く真面目に、つらく語れそうなことを、ブラックジョークを交えて明るく、時々優しく導くように見せてくれる、たくさんのもので溢れている映画でした。
ちなみにメインの舞台はリアルワールドではなくバービーランド。
しかし常にどこか不安になりながら見ていました。
これは自分を救うための映画ではないのかもしれない。
バービー(マーゴット)の気持ちになるのではなく、自分自身の気持ちを投影しすぎたのかも。
見終わったあと、自分は一体何者なのか、何をすれば正しくなれるのかを少し考え込んでしまい、複雑な気持ちになりました。
ファッションが見ていてとても楽しかったです。
マーゴットロビー演じるバービーが一番お気に入り!定番バービー最高。
ドールを衝動買いしてしまったこと、いまだに後悔半分ですが、最近洋服を作ってあげたいなと思うことが増えてきました。
映画に登場するようなおしゃれなスーツやドレス、キャンプウェア、着せてみたいです。
私のドールもバービーランドにいる…と考えることはできませんが、大事にしようと再び決意しました。
おもちゃに関してはトイストーリー的な考え方が根強い。
パンフレット見たかったので買えて良かったです。
内容はまあまあ。写真がかわいい。
あと、犬はおもちゃでした。
!! ここからストーリー結末までの内容に触れます !!
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たくさんのもので溢れていると言いましたが、バービー、ケン、人間たちみんなの想いが溢れすぎている映画です。誰か一人に肩入れしているとおいて行かれそうになります。
バービーたちは何度も、バービーランドは完璧だと言います。
しかし現実は現実。『普通のバービー』発売前なので時代的には少し前の設定だと思いますが、リアルワールドに到着するやいなやバービーは下心を隠そうともしない目線にさらされ、ボディラインやファッションがエロいと冷やかされ、一人の男が笑いながら背後に近づいてきたかと思えばレオタード姿の尻をひっぱたきます。そんな数々の暴力を受けて顔面パンチで反撃すると、バービーだけが警察に捕まる(なんでかケンも逮捕)。
挙句、憧れられてると思っていた女の子たちにはファシストと言われてしまいます。鑑賞中はファシストの意味が分からなかったのですが、「この『男も女も女が嫌い』な世界はバービーが作った」と言われ、自分が信じてきた自分とは真逆の扱いを受けたのです。
傷つき、ベンチに腰掛け初めて涙を流すバービーは、同時にこの世界に生きる人たちの笑顔や、落ち込む姿、生きる姿を目にします。そして隣に座っているしわしわのザ・お年寄りを見たとき、心から「あなたとても綺麗ね(You're so beautiful.)」と声を掛けます。するとお年寄りは「知ってるわ(I know.)」と自信に満ちた顔で答えました。それはバービーランドでバービーたちが何度も言っていた言葉です。平たいかかと、セルライトが出来たふともも、不安なことを考えてしまう壊れた自分を直すために旅立ったバービーの心が変わり始める、一番好きなシーンです。
ケンが思っていたよりかなり重要なキャラでした。
ライアンゴズリング演じるケンはバービーのボーイフレンドですが、序盤からドジばっかりで、軽い扱いを受けています。他のケン(シャンチーの俳優!強そう)に、いじわるされたりもする。
バービーランドでは重要な役割や様々な職業に就いた女性が住んでいますが、ケンには何もありません。パンフレットによるとケンの職業はビーチ。ライフセーバーでもサーファーでもなく、『ビーチ』。
常にバービーに気に入られたそうに行動しますが、バービーは挨拶するだけ。夜は女の子だけのパジャマパーティーがあると言って家から追い出されます。ケンは明らかに切なそうな表情をして、空元気のステップで何処かへ去っていきます(ケンには家がない)。
もしかしたら口にしてないだけで、バービーよりも先に不安な気持ちに気づいていたのかも。
バービーが生まれて初めて不当な扱いを受け、自分というものに気づいたりしている間、反対にケンは女性から敬語で時間を尋ねられたことにめちゃめちゃ感動していました。そんなことで?と一旦笑いましたが、ケンはバービーランドで頼りにされるどころか、一度も敬意をもって扱われたことが無い。それはケンがそういう人形だから。大体の人はケンはバービーのオマケだと思ってる。自分も。リアルワールドの男社会を知って若干間違った自信に満ちていくケンを見るのがつらかったです。
この映画に出てくる男性は大概マヌケです。ケンたちも人間の男性もまるで幼児。バービーランドは現実とは反対の女社会を描いているんだろうけど、ここまで男性を下げないと女性は偉く見られないのか?それとも今までこんなに女性が下げられていたのに自分はなんとも思わなかったのか!?こういう、多くの人間の心が関わる真面目なことを考えるとめちゃめちゃ不安。
それに、映画でもこの感想でも女性は、男性は、という表現が何度も必要になって、そういう話をしているから必要なんだけど、自分はどこに立てばいいのかわからなくなって悲しくなる。
ひと晩たって考えがだいぶ落ち着きましたが、序盤から大げさな笑いのシーンもあるし、そんなに重苦しく考えなくても、この映画の中ではここまでやるか?というブラックジョークとしてとらえて楽しめばいいと今は思います。
全体的に楽しい雰囲気にあふれてて、バービー(マーゴット)が役割ではなく自分を見つける話なので最後は良かったな~となりました。
でもほとんどの人が役割を見つけていくのがちょっと寂しい。
こんな考えることになるとは思わなかった。
来月は何見ようかな。
/すわみ