令和3年小金井市議会議員選挙開票立会人をつとめて。
朝5:20、すべての開票作業を終了してやっと帰れることになり、立会人全員やりきった感で充実した気持ちで解散したと思います。時間がかかってしまったけどこの40606票には自信をもって結論を出した。当選した候補者さんおめでとう、そうじゃない方は残念だったけど、ほぼ完全に公正な結果です。そういう気持ちで眠くて空腹でウデは棒のようだし、足もふらふらしていましたしたが、すがすがしい気持ちでした。
が。
発端はこの記事。
帰宅後こんな記事が出ていることを知り若干悲しくなりましたが、こんなにがんばってちゃんと確認したんだから、まぁ悪く言う人はいないだろう。そう思っていました。
しかしそのあと開票が遅くなったのは立会人のせいみたいな論調をSNSでかなりたくさん見かけ、日を追うごとに悲しく、だんだん腹がたってきたので色々なところに話を聞き、検証してみました。
開票立会人とは
まず、開票立会人というのは各候補の選挙事務所から一人ずつ応募することができ、その中からくじで10名が選挙管理委員会によって選ばれるものです。その職務は次のように規定されています。
1.送致された投票箱、鍵に以上がないか点検すること
2.投票箱を開く時の立会い
3.疑問投票の効力について意見を述べること
4.選挙録に署名する。
※事前に郵送される「選挙立会人の手引き」より
全体の時間の流れとしては、会場には20時10分に集合、説明があってから機械と職員による開票が始まりました。上記の職務に書かれているように、この開票作業や投票箱の確認にも立ち会います。
そのあと、立会人はまず100票束の確認を行います。その後、500票束の確認が始まったのはおそらく10時すぎ。
終わったのは朝4時半くらい(会場出るまで、その他の確認作業や説明、捺印などもあったので、プラス1時間)
なので、おそらく7時間くらい確認していたものと思われます。その間食事ももちろんとれませんし、トイレに行って、控え室で少し水を飲むくらいしか休憩はとれていません。
選管からは、はじめに、
「今回は回示点検方式という方法で確認を行います。このようにパラパラめくって見て確認してからハンコを押してください」と説明がありました。
※回示点検方式
有効、無効の各票束に決定付票を設け、開票立会人全員に回付し点検をうけ、点検結果の意思表示として押印を求める方式。
つまりすべての票をめくって確認してハンコを押してくださいという指示です。(説明のとき少し遠かったので見えにくかったのですが、輪ゴムははずさずにめくるイメージだったようです。)
選管がこのように…と言ったやりかたで票束を確認しようとするとこのようになります。(上半分が見えません)見える位置まで輪ゴムをずらすと見ているうちに輪ゴムがはずれてしまいます。
なので私は輪ゴムははずして右手にかけてから、このように持って確認しました。選管が思っているよりも丁寧にみている印象にはなったかもしれません。しかし確認のしかたはそれで良いですと会場でも選管に言われました。票が見えないのですからそうするしかなかったと思います。
確認して自分のハンコを押すのですから、もし束の中に問題のある票があって後で1票差で候補者の当落が変わったら自分のせいです。
いずれにしても彼等の人生を変えてしまう可能性があります。
時間を早めるために他の選挙と同様な点検方式が妥当ということで、そういうしくみだというなら私はそれでも全然かまいません。しかし
自分が任命され、点検方式は選管が決め、すべてパラパラみてハンコ押せと言われたからにはそういう方法で責任を負って確認しているのです。
そもそも、今回開票作業に時間がかかったのは、新聞報道の「立会人が思ったよりも丁寧に票を確認していた」という選管のコメントが決定的になっているようですが、そうではない可能性も大きいと考えています。理由は下記。
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まず、自分がどのくらいのスピードで票確認をしていたか再現してみました。
ちなみに私も最初の頃に選管の方に「その方法で良いのですが、もう少し早くお願いします」と言われたので、早いほうではなかったと思います。
私の他にももっと時間のかかっていた方もいたという話も聞きました。
私の場合とにかく、最初のうちはコツがつかめず、常に目の前に票束が積まれていましたがだんだん慣れてきて、コツをつかみ、500束を確認するころには、あまり自分の前に票束がたまらず、手が空くことも多くなりました。
しかし基本的には票の中身をすべて目視することは優先して作業していたことにはかわりありません。つまりこの早さは会場の中の立会人としては早くもなく遅くもない平均的なスピードと仮定。今回の検証はこのスピードを基準として検証してみることにしました。
票束はこんな状態。紙は100票ずつたばねられてまず輪ゴムでとまっていて、それが5冊束ねられ、その5冊に別の色の紙がかけられてまた輪ゴムがかけられています。
(500束の場合は、上の紙に500と書かれていますが、今回の検証では500束をつくるのは大変なので、100束を5回めくる時間を計測しました。)
再現した紙束で自分が最終的に確認していたスピードを計測すると、100束5冊の500束を確認するのに、ひとつ平均90秒程度でさばいていたと思います。輪ゴムをまずはずして右手に束をもち、パラパラめくって確認したあと、再度輪ゴムをかけて5冊確認、最後にまた一番上の紙をかけてハンコに朱肉をつけて押し、次の人にまわします。ここまでの時間です。
この時間をひとまず基本とします。
■時間の計算について。
票の総数は40606票。およそ40000票として、500票の束が80個とします。
(実際には最初100票束だけがつくられ、それを確認のために立会人に流すので、もっと時間はかかりますが、計算をシンプルにするため、このようにしました)
90秒×80=7200秒=120分
つまり、500束を平均的なスピードでよどみなく確認した場合、これを80回くりかえすと、120分です。(じゃあ2時間で出来るじゃん!)いえいえ、一人が120分かかるので、これを票束を分散させずに10人に順番に流すと、
120分×10=1200分=20時間
となってしまいます。
しかし現実としては実際は票束は基本、テーブルの4方向から流していたので、かかる時間は20時間の1/4程度かと思われます。
20÷4=5時間
この方法だと票確認作業にあたっている人とあたっていない人のムラがかなりあり、一定時間手が空いている方がかなり出てきてしまっていました。
実際はこの票確認中疑問票を洗い出したり、疑問票全体の審査があったり、100票束を先に流して、最後に疑問票や白票束の薄い束を流したりする工程があったり、中間発表準備を選管が行ったりする時間などがあるので、プラス1〜2時間。で、6〜7時間とすると、実際かかった時間にかなり近くなります。
5時間+2時間=7時間
つまり、これが当日の実態に近い時間ではないのかなと…
実際には、3時以降になってもう少し効率良くしようということで、票束をなるべく全員に回す形を少しずつ取り入れることもできました。
しかし仮に束を完全に分散させて最初に同時に10人それぞれの前に束を置き、終わった人からとなりにまわす、遅い人は後回しにし、
早い人にどんどん束をまわすようにように工夫し、まったくよどみなく票確認ができた場合には、かかる時間はほぼ一人分の時間で済み、20時間の1/10程度になるはずです。
20時間÷10=2時間
実際はこんなにうまくいかないとは思いますが、回示点検方式でやるのであれば、本来この状態を目指すべきだったのではないかと思います。
もしかすると、前回市議選で同じ方式なのに短時間で済んだのはこの票束の回し方にもう一工夫あって、効率が良かった、という可能性もあるのではないかと思います。また、票数も2000票ほど少なく、候補者も2名少なかったのです。
選管の対応については、うまくいかなかったことは次回に活かせばよいし、対応策は色々あると思います。私も選管に工夫の意見をまた送ろうと思っています。
しかし。
ネット上で確認の遅い立会人をつるし上げるような論調をいくつか見ましたが、これには私はかなり疑問を感じました。
(というか、冒頭にも書きましたがかなり腹がたっています)
選管が新聞社にした、「思っていたよりも立会人の方に熱心に、丁寧に見ていただいた。丁寧に見るのは必要だが、早く結果も出さないといけない。
どういうところでバランスをとるか、他市のやり方を確認したい」という感想については、
選管に電話して確認しましたがそういったコメントを新聞社にしたことは事実でした。
上記の私なりの検証の結果、丁寧に見たことは時間がかかったことの主因ではなく、実際は票束の回し方などにもっと工夫の余地があったはずだし、これの他にも様々な原因があったように思っています。
なので、選管の方の当日のこのコメントについては、原因の公式見解ではなく、実際そういう方が前回よりは多かったという単なる現場の感想と受け止めています。
しかしそれを歪曲して「一部の立会人が選管に全票確認をせまっていた」などのまったく事実と異なる批判をはじめ、「一部の立会人の身勝手で発表が遅れ大迷惑」といった新聞報道のイメージだけとらえ、好き勝手な批判をされている方をSNSでたくさん目にしました。批判をされている方の中には一定のお立場のある方も。
謝礼程度の報酬で正確な根拠もなくこんな疑惑をかけられ、名誉を傷つけられたうえに深夜から明け方9時間休憩なしで拘束される可能性があるのであれば今後誰も立会人なんかやらないと思います。
そもそも全票確認は選管から指示された内容ですし、立会人全員が点検・押印してから積載台に載せる「回示点検方式」を採用したのも選管であり最初から郵送された手引きにも
しっかりと書いてあります。立会人はこれについて一切意見は言っていません。選管の方にもどの立会人にも意図的に遅らせたような事は見受けられていない、なにか方法を考えないといけない、というお話をいただきました。
新聞報道だけを見て事実と乖離した批判をSNSなどで軽々しくすることには慎重になっていただきたい。そう思いました。
↓↓下記はこの件を受けた改善案です。↓↓