野口晴哉「整体」を読んで
つい最近、野口晴哉という人間を知った。
日本に「整体」をもたらした人間らしい。
『体癖』という本は、人類誕生以来、人類の身体は強くなったか?という問いからスタートする。即ち答えて否。医療、食事の2本柱を軸に、人間を生かすための環境が発達したに過ぎず、人間そのものは病にかかりにくくなったり、活力に満ちるようになったりしたわけではないという。
人間の地球に対する勝利によって、世界はどんどん人間に優しく(易しく)なった結果、人間自身の能力値は下がっているのでは?とまでは野口は言ってなかった気がするが、しかし話のエッセンスを敷衍すればそういう話になる。
「整体」というのは少し胡散臭い。科学的な説得力に欠けるイメージ。
野口の文章もまた、科学的かと言われればそうではない。しかし、全てが金言に見える。今の人々がおかしなことになっているのではないかということを科学的とは言えずとも明晰な文章で暴いている。
話はズレるが、最近のXの風潮。
できるだけ有害なものを取り除く。無菌であればあるほど良い。
菌はなければないほど良い。そして今、それを可能にする技術があるのだから、そこに向けて努力することは正しいのだ。という価値観がある。
そうした無菌というか滅菌主義のような価値観は、精神の領域にも浸透しているように思う。ひとの不倫や、失言に対する批判はちょっとどうかしている。傷付くことを進んで求めているかのごとく、人々は誰かのツイートに傷付き、お気持ちを表明する。ここに菌がある!菌がある!と。
自分も菌であることを自覚していない人間のなんと多いこと。
みんな菌なんだから、みんなが生きられる方策を探せよな。
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