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百草丸
先日、富山まで行った後、帰り道で白骨温泉に寄りました。
プーアル茶と湧水 園家山キャンプ場|Keiko5460 (note.com)
猛暑の中、温泉で温まり、さらに鴨南蛮を食べて滝汗かいてるところ、売店で百草丸をみつけました。
そう、長野県の民間薬、百草丸です。
売店では「御岳百草丸」1100円、「日野百草丸」950円と、2つの製薬会社のものが売られていました。
買ってきたのは「御岳百草丸」。
どちらも効能効果は同じ胃腸薬で、江戸時代から木曽御嶽山にあった「百草」の処方を昭和初期にのみやすい丸薬にして販売したもの。
「御岳百草丸」は長野県製薬のもの
一日量60粒中
オウバクエキス 1600mg ( 原生薬換算量2240mg )
コウボク 700mg
ゲンノショウコ 500mg
ビャクジュツ 500mg
センブリ 35mg
「日野百草丸」は日野製薬のもの
一日量60粒中
オウバクエキス 1800mg ( 原生薬換算量2300mg )
オウバクチンキ 33mg ( 原生薬換算量60mg )
ゲンノショウコ 500mg
ビャクジュツ 500mg
ガジュツ 500mg
エンゴサク 350mg
リュウタン 100mg
センブリ 16mg
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オウバクは、キハダという木の表皮を剥いだ下にある黄色いコルク層。
キハダはミカン科の植物で、ミカンの皮をかじるとわかると思うけど、同様の苦味が胃腸に効くというもの。山椒もミカン科で、苦味が胃腸に効く。
この黄色いオウバクの中に含まれるベルベリンという成分は、現代薬でも下痢止めとして使われている。ただし、実際に処方箋でみたのは一度だけで、今は使われない「いにしえ」の薬。
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値段は日野製薬の方が安いが、オウバクの成分量は日野製薬の方が多く、含有する生薬の数も多いので、日野製薬の方がお得感がある。
長野製薬に含まれるコウボク「厚朴」はホオノキという木の表皮。
ホオノキは、ゴールデンウイークくらいに白い大きな花をつけ、葉もでかい。ちょっとした郊外の山でよくみられる。
飛騨高山で飛騨牛を味噌で焼く朴葉焼きで使われるのはホウノキの葉。
精神安定作用をもつ。
日野製薬に含まれるガジュツ、エンゴサク、リュウタンについて。
ガジュツはショウガ科の根茎で、ショウガ同様に健胃作用をもつ。
エンゴサクはケシ科の塊茎で、北海道で春一番に青い花を咲かせるエゾエンゴサクと近縁。
リュウタンはリンドウ科の根で、苦味健胃薬。
日野製薬は、オウバクに毛色の違う健胃薬を重ねた処方。
どちらにも含まれるゲンノショウコとセンブリは、比較的歴史が浅く、中国にはない日本独自の苦味健胃薬。
胃痛ではなく、胃の動きが悪くて調子でないというときにのむとよさそう。
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「百草」の起源については諸説ありますが、7世紀(690年頃)に修験道の開祖である役小角(えんのおずぬ)がオウバクエキス薬により民衆を救済したものが、修験者の間で脈々と受け継がれてきたとされています。
1849木曽地域に百草の生成方法が広く伝わったのは、1849年(嘉永2年)頃。御嶽信仰を全国に広めた普寛行者の言葉として、
「御嶽山の霊草百種を採り集め、よく煎じ詰めて薬を製せば霊験神のごとし、これを製して諸人を救え」
と修験者たちが村人へ作り方を伝授したと伝えられています。
京都の石清水八幡宮では、毎年9月15日に行われる石清水祭りで、オウバクを人型に切ってお祓いで使っているとのこと。
石清水八幡宮様とキハダ|生薬の話|日野製薬 生薬ブログ(Crude Drug)|生薬とともに-日野製薬 (hino-seiyaku.com)
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オウバクは高野山の麓で作られる「陀羅尼助」の主成分でもある。
鮮やかな黄色は、染色に使われる。オウバクで染めた生地は、防虫効果がある。道の駅でみられるオウバクは染色用だろう。医薬品として売ると薬事法違反となる。
アイヌの方々は「シコロ」といって実を使う。皮を使うと木は死んでしまうので、北海道のような寒い地域で実を使うのは合理的だ。
2024.9.6