器質性精神障碍
神経認知障碍群とも呼ばれる.記憶などの認知機能と生活機能が障碍され、生活に支障があるが自立生活可能である状態を軽度認知障碍(Mild Cognitive Impairment: MCI)、自立生活が困難な程度に低下している状態を認知症とする.認知症における認知機能障碍は中核症状と呼ばれ、複雑性注意、実行機能、学習と記憶、言語、知覚・運動、社会的認知の六領域で分類されている.認知症に伴う行動・心理症状(Behavioural and Psychological Symptoms of Dementia: BPSD)は「周辺症状」と呼ばれ、不眠、気分障碍(抑うつ・多幸・強度の不安)、幻覚・妄想などがしばしば見られる.異食、失禁、暴言・暴力行為などは介護者の負担になる症状である.認知症の進行、すなわち中核症状の悪化と周辺症状の出現・悪化は必ずしも一致しない.認知症自体は重度でも周辺症状がほとんど出現せず、介護負担が軽い場合もある.認知症が初期でも、周辺症状が重度で精神科病院での管理を必要とする場合もある.
アルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型、血管性は四大認知症を指す.前三者は神経変性が主たる原因であり、血管性は脳血管障碍(脳梗塞・脳出血)が原因の後遺症と考えて良い(例外として高血圧による白質編成をきたすBinswanger病、微小皮質下出血を繰り返すアミロイドアンギオパチーは血管性であるが変性が主因となる).認知症の症状は脳障害部位によって異なる.アルツハイマー型認知症では、海馬、側頭葉、頭頂葉が先に障碍され、その後全般性に進行するため、記憶障害、見当識障碍が初期から出現するが、言語機能、感覚運動統合機能は後期まで維持される.レビー小体型認知症はパーキンソン症候群と波動性の認知障碍、幻視、薬剤過敏性、自律神経症状などが特徴的であるが、アルツハイマー型では傷害されない後頭葉機能障碍があり、幻視の出現と関連している.前頭側頭型の代表であるPick病では、前頭葉障碍のため万引などの衝動制御障碍、人格変化をきたす.側頭葉障碍が目立つ場合は言語機能に影響し、失語や流暢性障碍が顕著となる場合もある.病歴、認知機能評価、画像診断(MRIなど形態画像検査)、SPECT、DAT-SCAN、PETなど機能画像検査)でも診断される.正常圧水頭症やうつ病による仮性認知症など治療可能な認知症がある.身体状況を含めた介護環境調整、非薬物療法介入を優先し、薬物療法(抗認知症薬と必要な場合のみ向精神薬)を行うこともある.Neurocognitive Disorder.
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