29.「水撮影」をやってみよう!(水の投げ方と撮り方のコツ)
コスプレ撮影では、スモーク、プロジェクターなど「特殊撮影」と呼ばれる手法がいくつか存在する。
特殊撮影の一つとして、経験値が別れやすいものの一つが、「水撮影」だろう。
【ヘッダー写真 謎のアルターエゴ・Λ:花核さん】(F2.8 1/100s ISO1000)
Canon EOS5D MarkⅢ+EF85mmF1.8
水撮影は、ある程度のコツさえ掴めば、シンプルな手法でも、撮れ高は確保できる。
しかし、やったことがない、苦手意識がある、自信がないという方も多い。
そこで今回は、個人的に意識している、水撮影での、水の投げ方、コツなどを記していく。
これから水撮影をやってみたいという方や、前にやってみたけどうまくいかなかった……という方の一助になれば幸いだ。
①水撮影で準備するもの、確認すること
①-1.準備するもの
・タオル(バスタオルやスポーツタオルなど)
体を拭く用だけでなく、機材や小道具などにも使えるよう複数あるとよい。
・ビニール袋やジップロックなど
濡れたものを入れるほか、濡れては困るものを保護するためにも使用する。
撮影中のストロボなどを保護するために、透明のものを用意しておくとよい。
・(スタジオなどにない場合)水投げ用の桶など
使いやすいものについては、「③水の投げ方の基本」で紹介する。
・着替え
被写体さんはもちろん、カメラマン、アシスタントも濡れる想定で備えておこう。
・できるだけ滑りにくい靴
床などが滑りやすくなるので、足元にも注意。靴ももちろん濡れるので、脱ぐか、サンダルなどにするのがおすすめ。
①-2.確認しておくこと
・水が飛んではいけない箇所はどこか確認しておく
機材などはもちろんだが、スタジオの中にも水が飛んではいけない箇所があるので、事前に確認しておこう。
・荷物など、濡れて困るものはできるだけ遠くへ
ここなら安全、と思っていても、夢中で水撮影をしていると、荷物などがびちゃびちゃになることも。
濡れて困るものは、できるだけ水撮影のスペースから遠くに置いておこう。
②水撮影のライティングは「水を照らす」
水撮影での悩みとしてよく聞くのが、「うまく水が写らない」という声。
水をきれいに写すためには、まずライティングから考えてみよう。
★水の動きは「ストロボの光」で止める
水の動きは、ストロボの閃光を当てて止めるのがオススメ。
水の動きを止める方法として、シャッター速度を上げることで、ブレずに写す方法もあるが、それだけではっきりと水を写すのは難しい。
ストロボの閃光で水の動きを止めれば、水がブレずに写るだけでなく、水自体も照らされるので、水の形もはっきりとわかるようになる。
先ほどの見本写真のライティングを図解すると、下図のような状態。
つまり、後ろ上方からの青いライト(カラーフィルターつき)が、全体を照らすライトであると同時に、「水を照らすためのライト」として機能している。
多灯ライティングでストロボの数に余裕があるなら、後方、画面外左右で二灯設置するのもおすすめ。
後方からだけでなく、水の軌道に応じて、別個で水専用のライトを配置するのも手。
③水の投げ方の基本
③-1.水は適量を投げる
「できるだけ多く投げたほうがいい」ような気もするが、基本的には、筋力などに応じて「片手でコントロールできる量」を、シャッター直前にタイミングを合わせて「素早く投げる」のがポイント。
バケツで一気にバシャッとするより、確実にコントロールできるひしゃくや取っ手付きの小さい湯桶、取っ手付きのザル・ボウルセットなどがおすすめ。
ボウルにザルを一緒にすることで水の粒を細かくしやすくなる。
持つときは、ザルとボウルに1cmほど隙間を作るのがポイント。
③-2.水の軌道の作り方
水の投げ方によって、水の形が変わるのだが、具体的に、どの動作によって変わるのだろうか?
画面外から水投げをするとき、水を「投げる」だけでなく、ひしゃくなど、水投げに使ったものを画面外に戻すように、素早く「引く」動作も必要となる。
このときの「投げ」の動作と「引き」の動作がそれぞれ、水の形に作用する。
つまり、「投げ」だけでなく、素早く「引く」際の動きによっても水の形が変わってくるので、意識してみよう。
このほか、どんな高さから水を投げるかなどによっても水の軌道は大きく変わってくる。
また、レンズの望遠具合にもよるが、水の速さも大切。
カメラから遠い位置を通る水は特に、素早く投げないと、端から端まで届かなくなってしまうので注意。
③-3.水の「面」を作る
水を投げる直前に手首を回転させ、ひしゃくや湯桶などを地面に対して垂直にすることで、水の「面」を作ることができる。
この動作を素早く行わないと、水が下にこぼれるだけなので、投げる直前にどれだけ素早く行えるかが重要。
また、うまく制御できないと頭から水を被ったり、被写体さんや機材などに水が当たることもあるので注意しよう。
水の面を作ることができれば、水の向こうが透けて写ることも。ただし、多少の屈折や歪みがあるので、主要な部分に重なったらやり直し。
このように、少ない水でも、面を作って広げることができれば、写真の中でしっかりと水の存在感を出すことができる。
③-4.水を細かく砕く
ボウルとザルがあると、特にやりやすい方法。
水をジャバジャバと揺らしてから、シャッター直前で被写体の手前に少量投げるのが方法の一つ。
奥からのストロボで照らすことで、このように水がキラキラと写る(見本画像では黄色のカラーフィルターを使用)。
水は少量でも、レンズに近ければ大きく写る。むしろ、水が多いと、細かい水粒ではなく水の塊になってしまうので注意。
ボウルに入れた水を、ザルに当てて砕く方法もある。
そのほか、「④水をどこに投げるか」で紹介する、「背中にぶつける」「武器などにぶつける」投げ方も、水を砕くための方法の一つ。
③-5.頭上から床に叩きつける
水を頭上から床に叩きつけることで、しぶきを作ったり、写真の中に縦のラインを作ったりできる。
縦写真におすすめの手法だが、被写体さんも、水投げをする人も頭から水をかぶる可能性があるので、注意。
被写体さんの後方に水を叩きつけることで、手前の水面のリフレクションを写しつつ、奥の水面に激しく水が叩きつけられる様子が撮影できる。
④水をどこに投げるか
水投げで撮影を行う場合、水をどこに投げるかによって水の写り方、演出の形が大きく変わってくる。
もちろん、複数の箇所に投げることもあるので、それぞれの効果を把握しよう。
④-1.水をカメラと被写体の間(手前)に投げる
カメラのレンズに近いものは、写真の中で、大きく写る。
この場合は、水がレンズに近くなるので、少ない水でも迫力を出しやすいのが特徴。
ただし、水が被写体に被りやすかったり、位置関係によっては被写体に向けたライトや、カメラに水が直撃する可能性もあるので、水投げには繊細なコントロールが必要になる。
写真の中で、「水の高さがどこにほしいか」や、「どのラインを補いたいか」を意識する。
アシスタントに水投げを依頼するときには、まず、水投げ無しで構図を決めた写真を見てもらって、イメージを共有しておくのがよい。
細かい水の粒をたくさん作ることで写真全体の迫力も増す。
ただし、目など、顔の主要なパーツに水が被ったら撮り直し。迫力を求めれば求めるほど、根気と時間が必要になってくるので、注意。
また、レンズから近いものほど、少しのズレが写真の中で、大きなズレになる。どのぐらいの高さの、どんな軌道がいいかの調整にも、根気が必要だ。
また、カメラの高さによっても水の高さが変わるので注意しよう。
④-2.水を被写体の後ろに投げる
この場合は水が被写体を隠してしまうことがないので、「被写体に被って失敗」というケースを減らすことができる。
ただし、水は大きく写らないので、引きの画角の場合には人数でカバーするか、写真の中で「背景を補う」役割と考える方が良い。
縦構図なら、「頭上から床へ水を叩きつける」投げ方も有効だ。
投げる人は、頭から水を被りやすいので、自分は濡れる覚悟で。
床に叩きつけられた水が細かく散るので、画面内の水の面積も広くなる。
アップであれば特に、衣装や主要な部分を隠すことなく写すことができる。
水をカメラと被写体の間に通すよりも失敗は少ないものの、水の速さがないと、背景全体に水を通すことができないので注意。
写真の中のどこに水のラインが必要かを考えて、水の形を作ろう。
④-3.水を被写体の前後に投げる
両手が使える場合や、二人以上での水投げの場合には手前と奥、両方に水を投げる方法が有効だ。
水が被写体を取り囲むような画が撮れる。
このように、手前の水だけでは表現できないラインを補えるのがこの水の投げ方だ。
手前の水は少なめ、奥の水は多めにしてバランスを取るのがおすすめ。
投げる位置、高さを調節し、手前と奥の水のラインにそれぞれ高低差を出すのがポイント。
もちろん、手前と奥、それぞれの水にライトが当たるように調節しよう。
また、水がかなり広範囲に飛ぶため、ライト配置を決めるときには、投げた水が機材に当たらないように注意。
また、一人で行う場合、左右の水のコントロールが複雑になるので、水を投げる際に、水が被写体の顔面直撃……なんてことにならないよう、くれぐれも注意しよう。
④-4.水を被写体の背中にぶつける
シンプルなものの、特に迫力が出やすい方法。
水が奥から手前に向かうので、細かい粒や、水飛沫が大きく映りやすいです。
ただ、当然、被写体さんが一発でずぶ濡れになるので、どのタイミングでこの方法を使うかは考えて。
④-5.水を武器などにぶつける
武器などに水をぶつけることで、水飛沫が武器などに沿って砕け散る場面を撮影できる。
ポーズによっては顔の近くに水が飛んだりもするので、力加減に要注意。
顔に来ないとわかっていても、意外と怖い。
まとめ
水撮影はある程度のコツさえ掴めば、難しい撮影ではない。
どんな演出に活かすかも、想像力と表現力次第なので、いろいろなチャレンジをしてみよう。
🌊<エンジョイしすぎて荷物がずぶ濡れにならないようにね
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