20.被写体を「照らす」ではなく「輝かせる」ライティングの考え方(「演出のための光」を考える)
僕がライティングを組み立てるとき、手前から被写体を「照らす」ライトではなく、後方から被写体を「輝かせる」ライトに重きを置くように意識していると気づいた。
【ヘッダー写真・江雪左文字:toiさん】
F2.8 1/200s ISO2500
Canon EOS5D MarkⅢ+EF200mmF2.8L
というのも、ここ数ヶ月、「基礎的なスタジオライティング」を意識しながら撮影を繰り返すうち、自分のライティングに対しての考え方の根底に、改めて気づくことができた。
それは、「被写体の明るさを整えて美しく写す」ための考え方ではなく、「被写体を輝かせる」ための、どちらかといえば「演出」としての考え方に重きを置いている、ということだ。
余談だが、皆さんのおかげで、僕の撮影方法をまとめていくこのnoteでのシリーズも20個目に到達した。
最初の記事はライティング機材の不便に負けず
工夫で補えというような、根性論にも似た自身の考えの根底のひとつを表したものだった。
1.突然だけど、まぐろの話をしよう。(光の芯とストロボ直当ての話)
読み返してみると一年ちょっと前の自分めちゃくちゃ強火。
さておき、このタイミングで、自身の撮影において大きな比重を占める「ライティング」に再び向き合えるのは非常に良い機会だ。
今回はスタジオライティングの基礎に触れつつ、どう応用していくか、背景や表現したいものに応じ、どのようにライティングを組み立てていくかを記していく。
4.美しい光はだいたい頭上からくる(ライティングの考え方と、ストロボ光を不自然に見せないための話①)
この記事での考え方と共通した部分も多々あるかと思うが、練り直したものだと考えていただきたい。
1.スタジオライティングの基礎って?
特に、白ホリゾント、黒ホリゾント、カラーバック紙などでの撮影において、多く用いられるのが、このように被写体を取り囲むようなライティング。
このセッティングで撮影したのが、こちら。
真っ黒の背景などであれば特に、光の有無、方向の差などで写真が全く違うものになる。
被写体を取り囲むストロボには、被写体に対してどの位置に配置するかによって、それぞれの役割と呼び方が変わる。
①斜め前からの「メインライト」
被写体を照らす上で一番重要とされるのが、斜め前からのライト。
被写体とカメラを結ぶ線に対して45度ぐらいの位置が目安。
基礎的なライティングでは、この「メインライト」が一番強くなるよう設定する。
極端な話、メインライトが一つあれば撮影はできてしまう。
メインライト一灯で撮影した例。
光が背景全体に当たらないよう、範囲を制限するため、スタジオにあった全身鏡(姿見)にストロボ光を反射させて使用している。
正面ではなく斜めからが良いとされるのは、カメラ側から見て陰影があることにより、立体感が出るため。
正面からのライティングは「のっぺりする」と言われるうえ、背景に対してもダイレクトに光が当たってしまう。
斜めからの光であれば、角度や距離の調整で背景に光を影響させにくくできる。
②もう片方の斜め前から補う「フィルインライト」
要するに「メインライト」に対しての「補助光」だ。
「補助」というからにはもちろん、メインライトよりも弱い光を用いる。
一般的には、被写体に当たる光量がメインライトの半分程度になるよう調整するのが基本とされる。
序盤の写真を、メインライトと補助光のみに替えた場合は、このように写る。
補助光がなければ、これよりもさらに陰影が強く出て、暗く落ちる部分が多くなる。
比較は後で行うとして、黒い背景の中で被写体だけが照らされるような状態になっているのではないだろうか。
これはこれでいい感じ。好き!という方も多いのでは。僕も好きです。
また、補助光としては、被写体の正面に配置し、全体の明るさを調整する「フロントライト」を用いることもある。
③後方から輪郭を強調する「アクセントライト」
さて、先に挙げた写真に、斜め後方からのストロボ2灯を2〜3m程度の高さで、「アクセントライト」として追加したのがこちら。
アクセントライトのパワーはそれぞれ、フィルインライトの半分、つまりメインの1/4で調整している。
前者のほうが、流れを作った衣装や、髪色などが、アクセントライトの存在によって際立っているのがお分かりいただけるだろう。
特に、輪郭線が「輝いて見える」のがアクセントライトの特徴で、これこそがまさに「被写体を輝かせるライティング」の肝だ。
アクセントライトがあるだけで、被写体が背景の中で際立って見える。「存在感」はつまり写真の中での「輝き」。
「存在感の強調」がされるため、主役として「輝いて見える」演出にも繋がるのである。
また、2〜3m程度の高さからアクセントライトを使用していたが、これはレンズの焦点距離によって、望遠であれば低く、広角であれば高くして、写真への影響を見ながら調節するのが良い。
こちらの写真では画面外左、被写体さんよりも後方に「薄めのオレンジフィルター」をつけたストロボ一灯を使用して、背景から被写体を際立たせている。
曇りの日の屋外撮影などでは、ストロボなしでも柔らかい光での撮影ができる反面、どこかぼやけた印象になってしまう。
そこで、半逆光の太陽光をイメージしたアクセントライトを一灯置くことで、違和感なく光をプラスしつつ、このように被写体の存在感をさりげなく際立たせることができる。
このときの光源の配置の仕方については、下の記事をご参照いただきたい。
他にもトップライトなど、位置によって役割・呼び方の違うライティングがあるが、今回は割愛する。
「アクセントライト」を中心にライティングを組み立てる
「メインライト」を中心に考えるのが基本的なスタジオライティングだが、僕は「アクセントライト」を中心にライティングを組み立てることが多い。
左右後方のアクセントライト2灯だけを使用したパターン。
背景は模様が入った半透明の布を、アクセントライトのライトスタンドに括り付けている。
この背景布が際立つように、後方からのストロボをメインに組み立てている。
このように、明るささえ稼げれば、アクセントライトだけでの撮影もできてしまう。
また、僕はメインライトよりもアクセントライトを強めにすることも多くあり、特に下のようなシチュエーションでは、アクセントライトが強いほうが有効な場合が多い。
水撮影でのアクセントライト
画面外左手前のメインライトと、画面外右奥のアクセントライトでの二灯撮影。
このように水を投げての撮影などでは、アクセントライトが飛び散った細かい水飛沫などをキラキラと輝かせてくれる。
こちらは被写体さんの後ろ上方、天井近くにストロボを吊るした例。
アクセントライトがレンズ付近の細かい水飛沫まで照らしてくれるので、よりキラキラした写真になる。
雪・雨撮影などでのアクセントライト
雪や雨などは、水撮影での細かい飛沫と同様、ストロボの光が当たらない限りほとんど写真に写らない。
アクセントライトを用いることで、初めて雪や雨が活かされるのだ。
スノーマシンなどを用いての撮影などでも同様だ。
ただし、いずれの場合も機材に直接かかると、機材故障の原因になるので、配置や保護などに注意しよう。
また、スモークを用いての撮影などでは、アクセントライトの強さ次第では全体のスモークが強調されすぎて、写真が真っ白になってしまうこともあるので注意。
アクセントライトが、被写体のドラマチックさを200%にする
つまるところ、ライティングで被写体を綺麗に見せるのは手前からのメインライトやフィルインライトだが、感情を揺さぶる光は「アクセントライト」だ。
いろいろな撮影手法を試しながら、さらに活用して、よりドラマチックな写真を目指していこう。
😎<逆光直視すると目がやられるよ