8.世界を赤く燃やす方法(背景に色をつける方法、カラーシフトの話)
カラーフィルターをつけたストロボで、背景に色を付ける撮影についてのお話。
コスプレ撮影などでは特に、カラーフィルターを用い、背景に色を付ける撮影が好まれる。
【ヘッダー写真:くぉーつ。さん】
(F3.5 1/200s ISO100)
ポートレートでもオレンジを足して夕暮れっぽくするなど、背景の雰囲気を変える手法として、活用できる。
【Model:さやさん】
(F6.3 1/100s ISO200)
様々なカラーフィルターがあるが、背景に色を付ける際、特に躓く方が多いのは「赤」ではないだろうか。
使い方によっては色がうまく乗らないどころか、まっピンクの世界になってしまい、卑猥な雰囲気になってしまうことも。
今回は、僕が背景に色をつける際、つけたいと思った色を出しやすくするために行っていることを、以下にまとめていく。
①「カラーシフト」を活用する
②背景と被写体の距離を取り、背景の露出を暗めに合わせる
③カラーフィルターつきのストロボを被写体の後ろに配置して、背景にはあまり向けない
では、これら三つを順番に見ていこう。
①カラーシフトを活用する
だいたいのデジタル一眼カメラには、「マニュアルホワイトバランス」または「カスタムホワイトバランス」と呼ばれる機能が備わっている。
これは、どんな環境光の下でも、その光の中で「これが白(グレー)です」という色をカメラに設定しておくことで、ものの色を正確に写せるように補正するための機能だ。
例えば、オレンジの電球の下で普通に写真を撮ると、オレンジが被写体に被ってしまい、正確に被写体の色を写すのが難しい。
その電球の下で白い紙などをめいっぱいに写して撮り、その画像を読み込ませれば、写真全体にオレンジの逆である「ブルー」の補正が入る、といった具合だ。
詳しい設定の仕方は各カメラの説明書を参照いただきたい。
この機能を応用して、光源の色に関係のない、全く別の色を設定することで、世界観そのものをガラッと変えてしまえるのが「カラーシフト」。
例えば、白い背景、白い光の環境で、オレンジのものを「白」としてカメラに設定すると、写真全体に青の補正がかかり、下のようになる。
【巴御前:さやさん】
(F3.2 1/200s ISO400)
同じ背景で、青色のものを「白」としてカメラ設定すると、写真全体にオレンジの補正がかかり、下のようになる。
【Model:さやさん】
(F2.2 1/30s ISO500)
このとき、被写体に当てるライトの色を、カラーシフト設定に使用した色(一枚目であればオレンジ、二枚目であれば青)にすることで、被写体の色をそのままに、背景の色だけを変えることができる。
カラーシフト用の画像は、白い壁などに、カラーシフトで使用したい色のライトを当てたものを撮影する。
このとき、カメラの露出設定を暗めにしておくと、色がはっきり写りやすい。ライトの強さや、壁とライトの距離によって変わるので、調整しよう。
カラーシフトをするためには、背景に出したい色の「反対の色」を選ばなければならない。このときに役立つのが「色相環」。
https://hirotama.blogspot.com/2021/01/hue-circle.html より
環状に並んだ色同士の中で、一番遠い位置にある色の組み合わせが「反対の色(補色)」となる。
たとえば、カラーシフトを行う際に、赤色を出したければ青寄りの緑色、紫色を出したければ黄緑をカラーシフト用のライトの色として選択するとよい。
②背景と被写体の距離を取り、背景の露出を暗めに合わせる
まず、背景と被写体の間の距離を確保できる広い場所のほうが、背景に色を付けやすい。
というのは、カラーシフトのために被写体に使うライトが背景に影響してしまうと、その光が当たっている部分だけが、元の色として写ってしまうためだ。
カラーシフトのためのライトが、背景に届かないよう、背景と被写体との距離を取ろう。
あるいは、カラーシフトのためのライトを横から当てる(このとき被写体は横向き)など、背景に対しての方向で解決できることもある。
また、背景が明るいと、色も明るく、薄くなってしまう。どんな色であろうと、明るくなると「白」に近づく。背景を「赤」にしようとして「ピンク」になってしまうケースのように、思うように色が出せないのは、背景の明るさが原因であることが多い。
(F3.2 1/200s ISO400)
先ほどの画像と、下の画像を見比べてみよう。
(F2.5 1/200s ISO800)
二枚目の画像の方が露出設定が明るいため、写真全体も明るい。
対して、一枚目の画像のほうが露出設定が暗い(=被写体に当たっているライトの影響が強い)ので、背景は2枚目に比べて暗く写っており、ブルーが濃く表れている。
「被写体に当たる光」が、「背景に当たる光」に比べて強いほど、露出を被写体に合わせたときに背景を暗く写せる。
そのため、背景を暗くできるように、被写体と背景の距離を調節した上で、被写体に当てるカラーシフト用のライトができるだけ強く影響するよう、被写体の近くに配置するのがよい。被写体に当たる光の強さは、ライトそのものの光量だけでなく、ライトと被写体の「近さ」にも比例するためだ。(逆に言えば、「距離」に反比例する)
③カラーフィルターつきのストロボを被写体の後ろに配置して、背景にはあまり向けない
この記事のヘッダー写真をもう一度見てみよう。
(F3.5 1/200s ISO100)
このとき、緑と赤、それぞれのカラーフィルターつきのライトを2つ使用している。
配置はこんな感じだ。
背景と被写体の間(の天井)に設置した赤ストロボは、被写体またはカメラに向けて発光させる。
これにより、背景の明るさを大きく変えずに写真全体に赤を足すとともに、被写体の輪郭を際立たせる赤のエッジライトとしても機能してくれる。
背景に向かってライトを使ってしまうと、背景が明るくなってしまうこともあり、被写体やカメラに向けるのかオススメだ。
被写体に向けるか、カメラに向けるかは、写真への影響を見ながら、イメージに近い方を選択するとよい。
【燭台切光忠:舞姫神楽さん】
(F3.2 1/200s ISO200)
天井に設置したライトをカメラに向けた場合。ライトの光量や距離などにもよるが、色の影響がより出やすくなる。
ちなみに、この写真はレンズ表面に水滴を乗せることで、後方からのライトの影響を強調している。
【ジャンヌ・オルタ:さやさん】
(F4 1/200s ISO800)
水撮影でも、水をこのように赤く染めることができる。このとき、被写体より手前に水しぶきがあるのがポイント。
被写体に当てるライトはカラーシフトのためのライトなので、被写体周辺の水しぶきは「ただの水」としてしか写らないので注意。
演出したい色のカラーシフト+被写体の後方から、演出したい色のライトの合わせ技で、背景の色が演出しやすくなる。
このとき、背景の露出が明るくなりすぎないよう気をつけよう。
ただし、同様の手法でも紫を作るときは要注意だ。単色で乗せると、色がピンクか青に寄ってしまう場合がある。カラーシフトで青に寄せて後方からのストロボで赤を足すか、カラーシフトで赤に寄せて後方からのストロボで青を足す方法も、必要に応じて使ってみるのがオススメだ。
まずは真っ赤な世界を一緒に作ろう。みんなも一緒に燃え燃えキュン🔥
💡<でも炎上には気をつけようね