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#02 珈琲を片手にリニア経済の原罪を考える / サーキュラー・エコノミーの実践的すすめ

循環経済を理解する前に、まずは現在の資本主義経済を見つめ直してみます。

まずはリラックスしましょう。
そうですね・・・珈琲を片手に考えてみませんか。

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どうですか、和みましたか?美味しい珈琲はこころを和ませてくれます。
私自身、大の珈琲好きでこだわりがあります。珈琲豆はアフリカ産GESHARY豆です。水も浄水器で濾過された美味しい水で、ドロップフィルターにもこだわっています。同じものを、珈琲専門店で飲むと一杯500円はするでしょうね・・・


さて、至高の喜びを与えてくれるこの珈琲を現在の資本主義経済に照らし合わせてみます。

原価管理で表すと、
珈琲代金 = 固定原価(人件費、店舗諸費用など)+ 変動原価(原材料費、光熱費など)+ 利益

損益計算書で表すと、
売上 = 原価 + 販売費および一般管理費 + 営業利益

と表すことができます。図式化するとこんな感じ。

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どうでしょう・・・間違いはないはずです。

さて・・・・では、質問です。

この美味しい珈琲が飲めるまでに、
珈琲栽培のために、美しい南米の原生林を切り開くのに必要な開発コスト
珈琲を収穫・焙煎して、南米から届く輸送コスト
珈琲ドリップしたあとの豆クズを捨て処分するための償却コスト
は・・・いくらですか? どこに計上されていますか? 

開発コストと輸送コストは原材料費、
償却コストは店舗諸経費に含まれているって多くの方は指摘するでしょう。
なるほど、なるほど。それはそれで間違いではありません。


しかし個々コストがいくらなのかは全くわからない状態ですよね。
原価管理や損益計算書では現れない隠れたコスト。
そんな隠れたコストも内包?した上で、低コストで高品質なものを顧客に提供し・・・お店も利益を追求する。これはまさに現代の資本主義経済、利益追求型資本主義な考え方ですね。
さて、隠れた(内包された)コストの非透明化が問題なのでしょうか?ではなく、本当にすべてのコストが内包されているのかという点。

では、次の質問です・・・

伐採開拓することで喪失したであろう環境保全価値、
農業化による土壌の劣化・化学肥料による土壌汚染、
土壌の流出などによる近隣環境への悪影響、
遠距離配送中に排出するカーボンガス、
食品クズを破棄投棄することで起きる環境汚染
などの将来起こり得るリスク防衛または対策処理に必要なコスト、
は・・・いくらですか? どこに計上されていますか? 

そうです、これらは原価管理上も損益計算書上も、どこにも計上されていません。

短期的利益と物質的な豊かさの拡大を追求する成長モデルでは、現時点で発生する(As-Is)コストだけを計上し、将来発生するであろう(To-Be)コストは無視しています。

短期的利益を追求するがゆえに、As-Isコストを抑え、その代償としてTo-Beコストが高くなろうとも、低コストで高品質なものを顧客に提供し・・・お店も利益を追求してきたのです。利益追求型資本主義の原罪がここにあります。

To-Beコストは未来の借金。そんなTo-Beコストを最小化するため、国や政府が法的な強制力を整備(ハードロー)してきました。例えば伐採・開拓には厳しい規制を設け、汚染や破棄の禁止を厳しく定めてきました。 けれども、その抜け道や代替案を探すことが企業や組織にとっては短期的には利益を生むことにつながります。

土壌が劣化し栽培に適さなくなると次の土地を開発、
破棄投棄する場所がなくなれば次の土地へ・・・
Aの原材料が使えなければBの原材料へと・・・

地球規模で、次々と開発し消耗してきたのが実情ではないでしょうか。
従来型の資本主義経済を、一方向性の経済、リニア経済と表します。シンプルにモデル化すると次のようになります。

Take(採って)→ Make(作って)→ Waste(捨てる)


我々人類は、産業革命以来、このリニア経済で成長してきました。
石油が枯渇すると予想されれば、代替としてのシェールオイルが開発されるなど、Takeが枯渇しそうならその代替品開発に夢中になってきたのです。
人口増加や物質的豊かさはゴミ(Waste)の増加に比例し、最終処分場が逼迫すると海外にゴミを輸出するなどの施策もおこなってきました。

さらにTakeやMakeの工程でも、消費する以上の過剰な生産、非効率な生産があっても、ビジネスとして成り立っていれば問題視されてきませんでした。わかりやすい例でいえば、牛肉を食するのに、どれだけの小麦粉で必要で、さらにその小麦粉を生産するのにどれだけの水が必要だったか・・・それだけのTakeとMakeをかけた牛肉を消費期限や賞味期限の関係で破棄する場合も珍しくないのが現状です。。
Wasteの工程でも、買ったほうが安いという言葉に代表されるよう、Wasteすることに躊躇しないこともあったのではないでしょうか。


リニア経済のモデルは、
Takeが無尽蔵で、Wasteが無制限であることが大前提なモデル。
As-Isコストだけに着目し、To-Beコストを無視したモデル。

世界的な人口増加・経済成長に伴い、資源・エネルギー・食料需要の増大はさらにもとめられています。一方で、Takeである石油石炭、土地・鉱物、水、空気は、無尽蔵ではなく地球一個分しかありません。Wasteする場所にも地球のどこかに限定されます。
乱開発・遺棄による弊害、例えば空気や水・土地・海洋の汚染問題や環境問題も発生しているのはご存知の通り。


産業革命(18世紀半ばから19世紀にかけて起こった一連の産業の変革と石炭利用によるエネルギー革命、それにともなう社会構造の変革)で産声をあげたともいえるリニア経済は250年以上続いています。リニア経済の原罪を理解し、新たな経済モデルへと移行を急がなければなりません。
21世紀前半にも起こるとされるAIやIoTなどによる産業・社会構造の変革「第四次産業革命」でやっとリニア経済から循環経済へ脱することができそうです。


っと、話が長くなりましたね・・・もう一杯、珈琲でもいかがですか?
アイス珈琲もありますが・・・w

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数藤 雅紀 suto.masanori@members.co.jp
循環経済戦略プランナー University of Cambridge Judge Business School, Circular Economy & Sustainability Strategies修了認定者

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数藤雅紀(循環経済スペシャリスト、デジタルシニアプロデューサー、金融商品の元設計士)
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