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ドッペル原☆画たろう③
〜原画コメンタリー&雑談ノート〜
③原画「軟骨さん6〜8p目(誕生編)」より
《 はじめに 》
押し入れにしまっていた自分の漫画の原画を引っ張り出してスマホで撮影してUPするという「原画を再撮」をつまみにして私、佐藤達木が漫画や創作に対して思ってる事、やりたい事、自分の中にある言語化しないで流しているような感情、日常生活のことやらなにやらを長すぎない程度に話してみようと。そんなわりとユルいシリーズです。
今回はその第3回目。
原画は「軟骨さん6〜8p目(誕生編)」です。
●今回の主な内容
☆やかましい絵
☆執着のかたまり
☆漫画でしかできないことを
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●やかましい絵
この辺のページは見開きの扉絵(タイトルページ)をはさんでいよいよ内容に入っていくページなので、勢いで次のページまで読んでもらうために「やかましい絵」にしたいなと思って描いていたと思います。導入の部分なのでとにかく飽きさせないようにしたかった。色んな音がけたたましく鳴り、主人公がいきなり追い込まれてる感じをトリッキーにやってみました。具体的にはオノマトペ(ピー、キンコーン、ドキドキ、ゾッ)をそれぞれ音質の違いを表すために描き分けたり、種類の違う効果線を同じページ内に多用してみたり、吹き出しの形状も多種類混在させてみたり。そうすることで主人公がいきなり追い込まれてパニクった感じを出してみたかったわけです。この6、7ページで熱量を上げる事で次の8p目の温度差も効いてきて、導入としても機能するかなとかも考えたり。
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●執着のかたまり
音の表現、音質の違い、空気感の描き分け、コマ割とコマのフレーム自体の描き分けなどは自分が漫画で執着していることの一つです。「こだわり」というかは「執着」と言った方がしっくりきます。「こだわり抜いた作品」などと言うとなんか職人っぽくてかっこいいですが、自分の場合はそんないいもんじゃないです。「執着のかたまり」です。作品の質を上げるためにというよりは、自分がどうしてもそれをやりたいから「無駄であると分かっていてもやってしまう」のです。
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しかしその執着心こそ自分が漫画を描いている理由なのです。
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私が点描を多用して、スクリーントーンも使わず全て手描きで(今後どうなるかはわかりませんが現時点で)漫画を描いているのは、漫画っていじれるところを全部いじれると楽しいから。楽しいというか、何でしょう?自分好みの感じにより近づくといいますか。全部自分でコントロールし尽くして作れる面白さ、快感に気付いたからといいますか。漫画で当たり前のように描いている吹き出しや効果線、コマのフレームその他全て、一度考え直して自分なりに「これはどう?」とやっていくのが面白いわけです。そこが漫画のいいとこ、面白味だと私は思っています。
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●漫画でしかできないことを
そういう意味では自分は読者の方を向かずに自分の方ばっか向いちゃってるのだと思います。でもそこは内容の面白さでどうにか補完しようとはしてるわけです。自分なりにネタでできる限り面白い話に仕立てて、絵では自分の執着にしたがって描く。このバランスでできてるのがこの軟骨さんであり、自分の漫画だと思います。漫画でできることはまだある。特に「絵」を軸にしたものはまだまだ何かできるんじゃないかと。漫画でしかできない表現の先に何か面白いものができるんじゃないかな〜なんて呑気に点を打ってるわけです。
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漫画のコマと映画のフレームはできることが違うように、内容も漫画しかできないことがまだあるはずだと。そんなことを考え、試しながら描いていたりします。具体的な事はまたいずれここで書いていこうと思います。
今回はこの辺で。
by 佐藤達木(2024年7月)
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