すたろん流マスタリング【DTM】
ボカロPのすたすたろんです!最近オリジナル曲のMIXやマスタリングについて褒めていただけることが増えてきたので、すたろん流のマスタリングを紹介していきます。
注意事項
・マスタリングの基礎やセオリーの説明ではありません。「自分なりにやってるけど、他の人はどうやっているんだろう」という方向けです。
・今回紹介するのはラウドネスノーマライゼーションのある環境で、単体でリリースする曲のマスタリング方法です。RMS(LUFS)は-4~-7dBFSくらいに収まればOKとしています。CDを作る場合などは他にも注意点がありますがまた別の機会に。
・基本高音圧・迫力のある音源を目指してます。マスタートラックでの調整は少ないほどいいイメージですが、目的が明確ならダイナミックな調整もアリと考えているので一般的な解説と比べると設定が強めと思います。これだけが正解とは捉えずあくまで一つの参考にしてください。
マスターチェイン
作曲、MIXの段階でマスタートラックのプラグインを立ち上げてMetricAB以外はオフにしています。ある程度曲が形になり、音作りも決まってきたところでONにして調整していきます。
①Dangerous Audio/BAX EQ※
②Cradle Audio/God Particle
③SSL/Bus+(実機)、Pulsar/Mu、Shadow Hills/Mastering Comp Class A※、SPL/IRON※ など
④BRAINWORX/AMEK EQ250※
⑤iZotope/Ozone11(matchEQ, Imager, Dynamics, Maximizer)
⑥Fab Filter/Pro-L2
⑦ADPTR Audio/Metric AB※
すたろんはアナログモデリング系が好きなのでPulguin AllianceのMix&Master Bundle収録のプラグインを多用していますが、使い慣れているもので代用してください。(※のプラグインが入っています)
リファレンスの下準備
闇雲にマスタリングしても上手くいかないので、先にリファレンス(参考音源)をしっかり決めてMIXの段階から近づけられるように、比較しやすくするための下準備をします。
(1)Metric AB
ワンクリックでリファレンスを試聴したり、各種メーターで比較したりできる優れもののです。作っているジャンルの代表的な曲やお気に入りの曲を3~5くらい用意しています。
(2)MatchEQ
Ozoneの機能の一つで、予めリファレンスの周波数特性をキャプチャーしておき、MIXと比較し近づけるように自動でEQカーブを作ってくれます。そのまま適用してもいいですが、すたろんは参考までとして自分で別途EQを掛けています。
①オーディオトラックを作成し、一番近づけたいリファレンス曲をインポートします。
②Ozone(MatchEQ)を立ち上げます。
③①のトラックをソロにし、Match EQでCaptureします。その後①のトラックは削除なりオフなりしてください。
④Ozone内MatchEQの「前段」にMaximizerを立ち上げ、GR-6dB位にざっくり掛けてMaximizerが掛かった後のMIXに対しMatchEQでCaptureします。
各プラグインの設定
実際のプラグインの設定です。あくまで基本ですので、ジャンル・曲により柔軟に変えていきます。
(1)Dangerous Audio/BAX EQ
最初にリファレンスと比較してざっくりと高域・低域の調整をします。BAX EQは必要十分な機能、ナチュラルな効き方が好みで使っています。似たような設定のEQで代用可です。
・LowShelf:74~84Hzで0~-1dB。Lowがうるさい時に
・HighShelf:3.4k~4.8kHzで~+3dB。だいたいこれくらいでリファレンスと揃います。ボーカルなどが刺さってしまう時はMS設定で分けてブースト。
・LowCut:12HzとHiCut:70kHz。これは不要な帯域のカットです。必須ではないですが、念のため掛けています。
(2)Cradle Audio/God Particle
なんかいい感じにしてくれる系のプラグインです。主にMS処理でSide成分を持ち上げて迫力を出しますが、曲に合わなければ使わないこともあります。
・Inputは適正範囲に収まる程度に調整、Outputは固定
・Amountは40~90%あたりで調整。
・EQとリミッターは使いません。
・God Particle以外だと、Kiive Audio/Tape Face、SIR/StandardCLIPなど、なんかいい感じになる系、サーチュレーション系がここに来ます。(併用もあります。OTTもありかな…ないかも…)
(3)SSL/Bus+(実機)、Pulsar/Mu、SPL/IRONなど
グルーコンプの段です。上記のようないわゆるバスコンプの中から合うのを選びます。使わない場合もあり。全体のステレオ感・音場のふらつきが整うよう調整をしますが、ここは味付け要素が強いです。
・Atk1~6ms、Rel80~120ms、MIX85~95%。GR-1~-3dBくらい。
(4)BRAINWORX/AMEK EQ250
本調整用のEQです。Metric ABでの比較、MatchEQでの補正を参考に、そして己の感性で調整していきます。最大±2dBくらい。こちらも他のEQで代用可能です。
・TMTは実機のチャンネルごとの誤差を再現した機能ですが今回はOFF(モノラル設定)
・THDは歪ですが上げすぎるとのっぺりしてくるので-85dBくらいまで
(5)iZotope/Ozone11
①Match EQ
・(1)(3)である程度近づいてると思いますが、再度キャプチャーして掛けた方がよければ薄めに使います。
②Imager
・必要ならちょっとだけバランスを整えます。主に高域を広げる、中低域を狭める的な使い方です。
③Dynamics
・マルチバンドコンプでマキシマイザー前の圧縮をしていきます。特に低域のふらつきは音圧が上がらない原因になるのでしっかり均していきます。
・Low:Atk20ms、Rel100ms、Mix100%、GR平均-2dBくらい
・LowMid:Atk18ms、Rel95ms、Mix95~100%、GR平均-1dBくらい
・HighMid:Atk16ms、Rel90ms、Mix95~100%、GRGR平均-1dBくらい
・High:Atk14ms、Rel85ms、Mix100%、GR平均-1dBくらい
・それぞれの帯域は自動検出したものを微調整します。
・上記設定をスタートに、それぞれの帯域の前後感を各Atk、Relで微調整します。※前に出す→Atk遅く&Rel速く、奥に下げる→Atk速く&Rel遅く
・音量は聴覚上バイパスと変わらないくらいに調整します。
・上手くいくと聴覚上の音量・前後バランスはかわらず空間がギュッと狭くなった感じになります。空間の広さは同様に全体のAtk&Relの速さや原音MIXで調整します。
④Maximizer
・1段目のマキシマイザー、RMS(LUFS)は気にせず好みの音圧・圧縮感に。
・IRC2or3、Character1.2~1.5、GR-3~-5dB
・Output Ceilingは0、次段で調整しにくければ下げてもOK
・True PeakはOFF(どっちでもOK)
・OzoneのDitherをオフにするのを忘れない!
(6)Fab Filter Pro-L2
・2段目のマキシマイザー。ここでラウドネスを調整。よりクリアなPro-L2を使いますがOzoneでもいいです。
・GR~-3dBくらいの範囲で調整。
・True Peak、DitherはON
・すると大体RMSが-4.5~-6.5dBFS位になります(すたろんのアレンジの場合)
・Pro-L2のその他のパラメーターはデフォのままです。
(7) ADPTR AUDIO Metric AB
リファレンスをよーく聴いて、メーターを見て近づけていきます。
・帯域を絞って試聴する機能を使い、低域~広域それぞれの音量感の違いを比較
・ステレオイメージをメーターやMid&Sideをソロで聴いて比較
・モノラル化して比較
などどうすれば近づけられるかなどを考え、そこから曲に合うように調整していきます。
おわり
以上、すたろんも日々試行錯誤しているので参考になれば幸いです。そして皆さんのテクニックも是非教えていただきたいです。いつか音源付きで解説動画を作りたいね!