【合唱】全日本合唱コンクール第2日 11月24日(日) 同声合唱の部
友人の所属するMu Project。運営方針や声門のハリのある声、挑戦的なサウンド作りからおにフェスのFragments以降ファンに。
今回雪辱の全国進出を果たし、あの響け!ユーフォニアム関東大会の聖地であるロームシアター京都にて金賞常連団体に勝負を挑むという激アツ展開に僕のエモエモセンサーが反応し、聴いてきた。
夜行バスで5:45に三条京阪に降り立ち、朝は寺社仏閣巡り。朝の京都は静かで、朝活はとても楽しかった。山間からの東雲がうっすらとじんわりと紅葉と漆を照らす風景に静かに全国に向けた歌い手たちの熱量を重ねていた。
ちなみに観光ルートは平安神宮→知恩院→金戒光明寺→栄摂院→真如堂(有料拝観から間近に見る金箔の寂と曼荼羅、質素な離れに備えられた現代造庭の枯山水が実に見事)
主題の全日本合唱コンクールに。女声の金賞団体を聴く時間がなかったため男声への雑感。
サウンドのブレンドが結果を分けた印象。古典的なサウンドイメージに囚われず、癖が起こすがホワイトノイズがなく、純粋な整数時倍音で勝負するハーモニーを生み出せる発声かどうか。
そういう意味ではお江戸のサウンドは1枚抜けていた。あの人数であのブレンド(この言葉は誤読を生みかねないのであまり好きじゃないけど)が出来るのは凄い。
お江戸の演奏は圧巻だった。ヨイトマケの詩が個人的に刺さったのもあり、不覚にも猛烈に涙してしまいました。音圧から哀愁までを行き来出来て、群像でありながら一つのパートとしてのサウンドになっていて。やっぱりあの生々しいサウンド好きだな。昔Tokyo Chorus CollectionでNaduriの音圧にぶっ潰されたときと同じ感動をもらった。
そこへMu Project。全国金賞二位の力は文化的な挑戦度合いとそれに対する整合性だと思ってる。
エンタメ(これもうまい言葉が見つからない)としての作品は人気投票とSNSで評価すればよくて、文化的に意欲のある挑戦とそこに対する技巧への価値づけを行うことが合唱コンクールの役割だと解釈している。文化が脱構築して発展するための価値づくり。エンタメだけになってしまわないように担保・評価すること。
その解釈においてMu Projectが評価を得たことはとても腑に落ちるところがある。クールで、技巧的で、それらを魅せる曲で、しかし熱のある歌いっぷりと声のハリで。
そんなわけで見事ジャイアントキリングを決めたムウプロ。
ポップスやエッジの効いた運営、演奏スタイルにファッション性も持ち、今回のように硬派で技巧的なところもパワフルに歌い、一方で楽譜に囚われない再解釈・脱構築的なアート性も持っている。彼らの更なる進化が楽しみ。
社会に出てなお青春するいいエモを感じることが出来ました。
有形文化財が溢れる京都の街で、無形文化財の価値の紡ぎ方を考える。
エンタメは無尽蔵にSNS社会で伝播する。センセーショナルな構造物に人は影響されがちだ。その一方で、深いコンテクストが要求される文化を醸成することを怠ってはいけない。コンテクストは一瞬では塗り替えられない価値を持つ。世界中でコンクリートのビルが量産されても寺社仏閣の価値を奪うことはない。ジャニーズへの人気を評価する一方でゲスの極み乙女の技巧的なサウンドアプローチは評価するべきだ。君の名はの漂白された感覚よりも天気の子のような通貫した作家性が好きだ。
そして合わせて大事だと思っていることが、聴き手が「これが良かった」という個人的な感想を大切にすること。多様な演奏があった。コンクールで評価する価値基準とそれ以外の価値基準と評価するものがある。陥りがちなのが、コンクールで評価されるものが他者と比較して「是」なのだと一つのテーブルしかないように感じることだ。多くの人に伝わることでの評価、深いコンテクストを交えての評価、それぞれテーブルはあるのでコンクールの価値基準で自分が良かったと思った感覚を疑うことはないと思う。
大きな価値の中に沢山の人が関わっている。合唱の文化的な尊さを感じる一日でした。
出演者、運営の方々に感謝を。