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自分の中に毒を持て


1.問題意識

  WEデザインスクール主宰の稲葉裕美氏が、美術大学進学にあたって、読んだ本で、人生のバイブルとなっている本は、芸術家の岡本太郎の『自分の中に毒を持て』だと言っていた。本記事では、岡本太郎の著書である1993年に刊行され、2017年に新装版として、出版された本書を読んで、私が、気になるところを抽出した。

2.調査

(1)岡本太郎記念館

出典:岡本太郎記念館HPより

岡本太郎の経歴
 岡本太郎(1911生~1996年没)は、明治44年(1911年)に漫画家の岡本一平、歌人小説家の岡本かの子の長男として生まれる。18歳の時に、東京美術大学(現在の、東京芸術大学)の西洋画科へ入学。19歳の時に、パリへ留学。26歳の時に、パリ大学の学生として、民法学を学ぶ。29歳、昭和15年、1940年に帰国。31歳の時に、太平洋戦争の真っただ中で徴兵され、中国戦線に出征。59歳の時に、大阪万博のシンボルである太陽の塔を制作。64歳太陽の塔の永久保存が決定。1996年急性呼吸不全にて、死去。平成15年(2003年)、メキシコシティ郊外に眠っていた明日の神話を岡本敏子が確認。
参考:岡本太郎記念館 岡本太郎年表

(2)著者『自分の中に毒を持て<新装版>』(青春出版社,2017)

第一章 意外な発想を持たないとあなたの価値は出ない
   ー 迷ったら、危険な道に賭けるんだ
第二章 個性は出し方薬になるか毒になるか
   ー 他人と同じに生きてると自己嫌悪に陥るだけ
第三章 相手の中から引き出す自分それが愛
   ー ほんとうの相手をつかむ愛しかた愛されかた
第四章 あなたは常識人間を捨てられるか
   ー いつも興奮と喜びに満ちた自分になる

出典:岡本太郎『自分の中に毒を持て』目次

第一章 意外な発想を持たないとあなたの価値は出ない、より

 芸術ばかりではない。他の部門のあらゆる専門家、さまざまの企業内の社員でもみんなそうだと思うのだが、この道一筋、ただ自分の職能だけに精進すれば尊敬もされる、報われもする。 それを根本的に疑ったり、捨ててしまえば生きてはいけない。食ってもいけないということになる。与えられた枠からはみ出して、いわば無目的に自分をひろげていくとすれば、その先は真暗な未知、最も危険な状況に落ち込むことを覚悟しなければならない。 それは極端に言えば死を意味する。 しかし、社会の分業化された狭いシステムの中に自分とじ込め、安全に間違いない生き方をすることがほんとうであるのかどうか、若いぼくの心に突きつけられた強烈な疑問だった。

出典:岡本太郎『自分の中に毒を持て』19頁

あいつはいい気なやつだと思われたりする。だが見えない裏での絶望的な戦いはきびしい。言いようがない。しかし貫くのだ。
 もちろん怖い。だが、そのときに決意するのだ。よし、駄目になってやろう。そうすると、もりもりっと力がわいてくる。
 食えなけりゃ食えなくても、と覚悟すればいいんだ。それが第一歩だ。その方が面白い。
 みんな、やってもしないで、最初から引っ込んでしまう。
 それでいてオレは食うためにこんなことをしているが、ほんとうはもっと別の生き方があったはずだ、と悔いている。いつまでもそういう迷いを心の底に圧し殺してる人がほとんどだ。
 たとえ食えなくても、ほんとうの生き方の方向に進みたい、そう決意したという情熱が自分をつき動かしてくる。
 確かに危険を感じる。そっちへいったら破滅だぞ、やめろ、と一生懸命、自分の情熱に自分で歯止めをかけてしまう。
 しかし、よく考えてみてほしい。あれかこれかという場合に、なぜ迷うのか。こうなったら食えないかもしれない、もう一方の道は誰でもが選ぶ、ちゃんと食えることが保証された安全な道だ。それなら迷うことはないはずだ。もし食うことだけを考えるなら。
 そうじゃないから迷うんだ。危険だ、という道は必ず、自分の行きたい道なのだ。ほんとうはそっちに進みたいんだ。
 だから、そっちに進むべきだ。ぼくはいつでも、あれかこれかという場合、これは自分にとって、マイナスだな。危険だなと思う方を選ぶことにしている。
誰だって人間は弱いし、自分が大事だから、逃げたがる。頭で考えて、いい方を選ぼうなんて思ったら、何とかかんとか理屈をつけて安全な方に行ってしまうものなのだ。

出典:岡本太郎『自分の中に毒を持て』30-32頁

 何かをはじめても、つづかないじゃないか、三日坊主に終わってしまうんじゃないか、なんて余計な心配はしなくていい。気まぐれでも、なんでも構わない。ふと惹かれるものがあったら、計画性を考えないで、パッと、なんでもいいから、自分のやりたいことに手をだしてみるといい。
 それでもし駄目ならーつまりつづかなかったらつづかなかったでいいんだ。いいと思うべきだ。

出典:岡本太郎『自分の中に毒を持て』59頁

 他に対して、プライドを見せるということには、他人に基準を置いて自分を考えていることだ。そんなものは本物のプライドじゃない。たとえ、他人にバカにされようが、けなされようが、笑われようが、自分がほんとうに生きている手ごたえを持つことが、プライドなんだ。

出典:『自分の中に毒を持て』75頁

第二章 個性は出し方薬になるか毒になるか、より

 純粋に強烈に生きようとすれば、社会のはね返しは強く、危機感は、瞬間的に鋭く、目の前にたちあらわれるのだ。
 いつでも「出る釘は打たれる」。(原文ママ)
 だからといって気を遣って、頭を引っ込めてしまっては、人間精神は生きない。逆に打たれなければー。「打ってみろ」と己をつき出す。打たれることによって、自他をひらくのである。ますます拡大して爆発する存在になるのだ。

出典:『自分の中に毒を持て』129頁

3.結論

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