#247:喜寿の祝い
この週末は関西に住む父が上京し、家族で喜寿のお祝いをした。
金曜日
土曜に家族でお祝いする予定だが、ひと足早くに父は上京。長らく会えていない三鷹の親戚たちと再会して晩酌することにしていた。
父より7つ上(84)になるおじさんとその一家。楽しい人たちなので、今日は盛り上がるだろう。
午後3時には、無事ホテルにチェックインしたと父から連絡があった。
ただここに至るまでには少し経緯があった。
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元はお祝いのある土曜に新幹線で来るつもりの父だったが、弟(父からは次男)から勧めもあり、前日に三鷹の親戚を訪ねることに。
ところが、月曜になって週末の旅程を改めて父に確認すると「いや、金曜は断ったわ」とのこと。
よくよく聞いてみると、ホテル予約や移動などを考えるのが諸々面倒になったとのこと。そして「その日は、病院のリハビリがあるので」という言い訳にもならぬ理由をつけて、親戚のおじさんにお断りを入れたと言う。
ぼんやりと過ごしていた月曜朝だったが、おかげでパッチリ目が覚めた。
「え、何でそんな理由で折角の機会をふいに?」とボルテージの上がる私に対して、「いやーでもホテル代が1万3千円もするしな」と返す父。
どうやら平日の東京郊外で1万円以上の宿代を取られるのが納得いかないらしい。「隣の駅なら、9千円の宿もあるけど移動するのも面倒や」と。関西在住の父が持つ相場観も分からなくはない。
ただ次はいつ東京に来るのか(前回からは5年以上経ってる)、またその親戚に次会うのはいつになるか(前回東京で会ったのは10年以上も前)と月曜朝からなぜか熱くプレゼンする私。
インバウンドによるホテル代の高騰を説明しても埒があかないので、結局、私の方でホテルを予約することで何とか金曜日から上京することに。
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その晩は、親戚のおじさん達と楽しい宴だったと次の日に嬉しい報告を受けた。
土曜日
午前中は虎ノ門ヒルズに行きたいという父の要望があり案内することにした。昔から、息子の働くオフィスビルを背景に自撮りで写真を撮るという謎の癖があるので今回もそれが目的である。
ビルの周りをぐるっと歩いた後、例の写真を撮り終えたら高層階のレストランでランチビール。
少し歩いただけなのに、既に外はもう夏のような気温だったのでビールがすこぶる美味い。
またオフィスにある高層階のレストランは普段、自分独りでは絶対行かない場所だったりするのである意味貴重な経験。ビールと空間を堪能した。
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午後は弟夫婦とNHKホールでコンサートを楽しむ予定の父とともに、会場まで移動し弟夫婦と合流した。そこで父を弟に託してから一旦帰宅。
夕方、妻と息子も連れて、新宿で改めて父たちと合流した。弟が予約した鮨屋で父の喜寿の祝い。
夜は涼しい風が吹いて昼の暑さを冷ましていた。とても気持ちの良い夜だった。
日曜日
次の日の朝は、うちのマンションに泊まった父と近くのカフェでモーニングを食べる。
妻は毎週日曜の講座に出かけるため、ひと足早くカフェを出た。父と息子、私という男3人になると言葉も少なく、皆、黙々とトーストを食べた。
今回の父の旅の目的のひとつは、息子(父からは孫)がテニスの練習をする様子を観ること。父は若い頃に自分もテニスを熱心にやっていたこともあり、孫の練習を喰い入るように見守った。
お昼ご飯の後は、我が家のソファで昼寝して夕方起きたらテレビをつけて相撲を見る。
ぶつぶつとテレビにヤジを飛ばすのは、普段の父の姿。いつもより片付いている、見慣れない我が家のリビングで日常生活に居る父を垣間見た。
お祝いというハレの日から日常に戻っていく父を少し複雑な気持ちでぼんやり眺めた。
母が亡くなってから5年。遠く関西にひとり暮らしをする父と、兄弟ともに東京で家族を持ち生活をする我々とは普段交わらない。
いい歳になった父のことを思うと色々考えるが、日曜の夕方、相撲にヤジを飛ばしている父の暮らしと我々の生活は今のところ重なることはない。
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昨日あれだけ晴れて暑かったのに、今日は夕方にかけて雨が降り出した。
傘を持たない父にビニール傘を渡して、最寄りのターミナル駅のホテルまで車で送り届けた。明日、新幹線に乗って帰る。
日曜の夜、静かに降り続く雨が、日常と非日常の境目を曖昧にぼやかしてくれた。そのおかげで、今晩はあまり余計なことは考えずに眠れそうだ。
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