エネルギーシステムと建築の関係(攻めのエネルギー対策をしよう)
これまで見てきたように、エネルギー問題に関しては、これまでとは状況が大きく変わってきている。
エネルギー対策がすごく身近なものになってきている。
生活者がより自分ごととして捉える様になってきているし、株式市場なども環境銘柄への期待値が高くなってきている。
けれども、まだまだ建築業界にいる人たちには、まだまだ現実的なものに感じられていないという状況ではないかと思う。
新築重視の業界・システムは相変わらずで、スクラップ&ビルドが繰り返されている現状を見れば一目瞭然だろう。
これをどう変えていけば良いのかを考えてみたい。
ここは以下の2つのことをすべきではないかと思っている。
①本気でエネルギー問題に取り組むこと!
②その上で売れるモデルにすること!
今は、本気でエネルギー問題に取り組んでいるとは思えないし、エネルギー対策をしたからと言って売れる訳ではない。つまりどちらも出来ていない。
まず①の本気でエネルギー問題に取り組むべきという話である。
ここは以前の投稿で示した通りであるが、振り返ってみると現在のエネルギー対策は、住宅性能を高めるために、めちゃくちゃコストをかけることが求められる(新築住宅を高くうることに繋がる)。外被の断熱性能を高めて、再生可能エネルギーの設備をつけて、最新の省エネ機器をつけて、設備のフレキシビリティーを高めて・・・・。そして家中を快適な空間にして、ランニングコストを抑えるというものである。
けれどもこれがベストではない!
コスト感覚にものすごく敏感な(そして常に無駄の削除を考えている)企業の工場を考えてみよう!
そこではどの様なことが行われているのか?
外被を何百ミリもある断熱材で覆って、工場中をぬくぬく快適にしているだろうか?
そんな工場はあまり無いはずである。
外被は最低限の構造であり、中はものすごく快適という訳ではない。けれども人がいるところのそばにはスポットでクーラーやヒーターがあり、その人に取って最適な環境が作り出されて快適に作業をしている。
これはそれぞれの企業が、ベストな工場のあり方を求めて、ベストなコスト対策をしてきた結果としてできた姿である。そして、結果的にはエネルギーに対しても無駄を無くし、かなりの省エネを実現できている。客観的に(既存の建築業界の忖度など考えずに、あくまで自分にとってどうすべきかと)考えた場合の最適解の方向性なのではないだろうか?
これを工場以外の住まいでも実現していかなければならないはずである!
しかし、これって昔の暮らしに戻るということ。。。。。
かつての住宅は隙間風がスースーしていて、冬は、部屋の中でも厚着をして過ごし、みんなでコタツに入って・・・という生活をしていた。外被は必要最低限で、人がいる部分だけ(局所的に)暖めていた。まさに工場と同じ構造である。
これであれば建設時もエネルギーを使わず、ランニングも必要最低限に抑えられると思うが、これに戻れというのは現実的ではない。誰も納得しないだろう。
そこで出てくるのが、テクノロジーである!
今の技術で、この構造を作っていくことができるはずである。
まず、住まいには最低限の断熱性能(もしくは断熱性能は不要かも知れない)。何よりも建築時の環境負荷が少なくなるように、自然素材を使い、リサイクルできる施工方法を用いるといった家づくりをすべきである。
そして、ここからアイデア勝負である。
例えば、センシングで人がいるところを把握して、そこだけに赤外線で熱を送る。温度に合わせて暖かさや涼しさが変わる衣服などなど・・・・
建築業界だけでなく、家電業界やIoTや繊維・衣服業界などとも協力しながら、将来の生活スタイルを考えて、あるべき住まい象を作り上げていく必要があると思う。個人的にはかなりワクワクする。
次に、②の売れるモデルについてである。
こういった家をどう売っていけば良いのか?
まず上記の家であれば、現在の様に快適性が極まった至れり尽くせりの家ではないので、基本的には今よりもイニシャルコストは安くなると考えているが、ここではそこは考えずに、今と同じコストだったとしても売れるようにするにはというのを考えてみる。
ここは他業界の事例をみるのが良いと思う。
実は現在、この環境対応していることを売りにして業績を伸ばしている会社が幾つもあるのである。
細かい説明は調べて貰えばわかるので省くが、例えばパタゴニア、Everlane、Allbirds、・・・などなど。彼らは環境配慮を全面に出して商売しており売上も伸びているのである。
共通するのは、共感してくれる顧客と強いエンゲージメントがあり、コミュニティが形成されており、強いファン層を持っているということである。謂わゆるD2Cブランドといわれる会社にそういった会社が多いのは、まさに顧客ニーズがあるということである。若い層を中心に従来とは違う環境意識を持つ人たちが増えており、環境配慮をしているから買おう、環境配慮をしていてかっこいいという価値観を持っているのである。
逆にいうと、環境配慮をしていない、もしくは見せかけの環境活動をしているというのは、彼らにはマイナスにうつるのである。
今こそ、新たな顧客に向けて、真剣に環境配慮された住宅を提供していくべきだと思っている。
まだ多くの会社が出来ていない今だからこそ、そのチャンスがあり、マスの意見になり、社会や法規制などもそちらに舵を切ってしまったら、もはや旨味は少なくなってしまう。
次の(続きの)記事
最後まで読んでいただきありがとうございます。最後にこれまでの記事へのリンクです。こちらも読んでいただけたら嬉しいです。