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液状化した夜の詩

暗順応した瞳で
ベッドの縁をぼうっと眺めている
火山のように脈を打つ心臓とひとりきりで相対して
頬を流れる涙の重さに手を引かれて
夜の底まで沈んでゆく

掛け布団の羽毛もマンションのコンクリートも
すべてが溶け混ざりあったあとの
深夜というひとつの現象のなかで
多層構造の膜に包まれてしまいたい

眠りのようなふかい膜に包まれたまま
夜がだんだんと白んで朝靄に変わり
昨日は明日のなかへと綺麗に溶ける

そんな夢を眠れない夜に見ていた
こころの軋みで風船のように裂いた無意味だった人生
その残骸を仕方なく手に持って
海底に沈められた魚礁のようにあとに住まうものがあれば良いと願う

死を隠すなら夜のなか
透明に憧れていながらタールのように
あなたはどす黒いと
さざめく浅瀬の濁りが許せなくて自己嫌悪で胸が灼けた

溶けることの叶わないと知った夜
動揺と悲嘆がひとつの織りとなって
整えられた不条理がわたしに手錠をかける
窮屈な鳥かごに入れられた鳥でない生きものは
気化しない涙にくるまってとても青く眠った

(わたしは生きた)

飽和した炭素から吐き出されてわたしは
くらく冷たい暗闇のなかを歩き
ひどく混乱した側溝のなかに潜み
自我をかくす霧のなかでただ怯えていた

それでも偶然と呼べるほどの夜を越すと
潮風を受け止める松の木や
きらきらしい運河の水面
その光源となる太陽光の奥深い色彩を肌に感じられて
わたしの内に秘めた凪に触れることさえ叶った

いまも折に触れて液状化する夜にしずみ
こころの軋みは火山のように激しく脈を打たせる
しかしあの夜よりわずかに明るい薄闇のなかで
柔く淡いこの輪郭は今日も呼吸をしている


I appreciate your brilliant photo,
Alexas_Fotos

https://pixabay.com/ja/users/alexas_fotos-686414/

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